【特別コラム】田中泰延のエンタメ分党 文系もサイエンスするためのブックガイド

【特別コラム】田中泰延のエンタメ分党

文系もサイエンスするためのブックガイド

みなさんこんにちは。田中泰延といいます。ひろのぶと読んでください。サラリーマンをしています。あと、田中泰延のエンタメ新党という映画のコラムを書いたり、NHKのホームページで

まさかのこの並びでテレビ番組の評論を載せてもらったりとか、よくわからないサラリーマンです。

さて、大学進学を目指すみなさん、そしていま大学生のみなさんは理系でしょうか、文系でしょうか?僕はバリバリに文系です。ええ、私立文系です。どのくらい文系かというと、高校の教科、いまでいう「数学3」の微分積分でもう脱落した人間です。国語、英語、社会という卑怯な科目だけで大学生になりましたし、いまでも数字が苦手です。エクセルがうまく使えず、関数の入力がわからなくて電卓で計算してエクセルに打ち込んだりしています。

それでも23年間サラリーマンとして働くには困りませんし、毎月給料が振り込まれています。月給の額だけは数字として認識できますし、月給が振り込まれてから3日間ぐらいはサラリーマンに生まれてよかったと心から思います。

ですが、世の中にはどうしても理系のお仕事が必要で、研究も必要です。理系の人がいないと飛行機も飛ばないしスマホも動かない。近頃では食品の分野でも理系の力が不可欠になっているようですし、そしてなにより理系男子がいないと、合コンのときの僕ら文系男子の引き立て役がいなくなるので本当に困るのです。

さて、今回は、そんな世の中にとって重要な理系の先生にお話を伺うために京都学園大学におじゃまします。本日向かうのは京都亀岡キャンパス。JR嵯峨野線が京都を出てから亀岡に着くまでは、眼下に壮大な保津峡が…何回も何回も…おい桂川あんたどんだけクネクネしとんねん。

亀岡

河川と話すという、文系ならではの能力を発揮したあたりで列車は亀岡に到着。

学校法人京都学園

亀岡は霧が深い街と聞いていたのですが…

どこがやねん。どこが霧やねん。

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今回もご一緒したのは、ライターのさえりさんと、漫画家のかっぴーさんと、私ひろのぶの3人です。

さえりさんが好きな僕は前回さえりさんの写真集をここに作成したんですが、「お前の記事でそこだけよかった」「そこだけ見た。記事は読んでない」などの賛辞が数多く寄せられました。今回はさえりさん写真集は最後のほうに載せたいと思います。記事を読むしかないのです。

ですが特別に1枚だけ先にアップしておきましょう。この先も記事が飽きられそうになったら即座にさえりさんの写真を入れます。

さえりさん

熱心にスマホを触るさえりさん。ポケモンGOに夢中なのでしょうか。科学的に考えると、違います。なぜわかるか。取材した日にはポケモンGOはまだこの世になかったからです。

そんな科学的な姿勢を保ちつつ学内を見学すると、あちこちに京都学園大学のイメージキャラクター「太秦 その」ちゃんがいます。

もしかすると学生より数が多いのではないでしょうか。

そうこうしているうちに、さえりさんはバイオ環境館へと向かい、今回お話をきかせていただく理系プロフェッサー、矢野教授のもとへ行ってしまいました。
ちっ。

先生、白衣です。いやあ理系理系とは聞いていたが、ここまで理系とは。そんなバイオサイエンスの専門家としてのお話はインタビュー記事を読んでいただくとして、僕には課題図書が与えられました。前回の源氏物語コラムもそうでしたが、僕はやたらに本を読まされるのです。

というわけで、今日は矢野先生から薦められた本を読ませていただき、特別コラムを書かせていただきます。なぜ特別かというと、一生に一度のお願いで特別に締切を延ばしてもらったからです。人生の中で、「一生に一度のお願い」は何度でも使うことができるのです。なぜかというと人間は一度しか一生を生きないからです。このあたりの理屈も僕が理系の「逆・裏・対偶」についてよくわかっていない証拠ですね。

さて、矢野先生からの課題図書一冊目です。

バイオサイエンスの新戦略
京都大学農学部:編 (丸善) 出典:Amazon
バイオサイエンスの新戦略

えーと「第2章 食と微生物の新しいかかわり」、ふんふん、柔らかくて読みやすそうですね!読んでみましょう。

『細胞壁がマンナンで構成されている酵母Saccharomyces cerevisiaeとLb.plamtariumが凝集し、HT-29細胞との結合をメチルーα—マンノシドが阻害する』
ほうほう…。

先生、先生、矢野先生。

矢野先生

先生は因数分解も怪しい文系の僕をどのようにとらえてますか。

矢野先生

先生、先生、矢野先生。
僕にわかるわけないだろう。

そこであらためて文系の僕でも、化学、そして「科学する心って面白い」と思えるような本を教えていただきました。

では文系もサイエンスするためのブックガイドを始めましょう。

二重らせん
ジェームズ・D.ワトソン 江上不二夫、中村佳子:訳 (講談社) 出典:Amazon
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ワトソンさんは、1962年にクリックさんたちとDNA、いわゆる遺伝物質の構造を発見してノーベル賞を受賞した、あまりにも有名な人ですね。この本は、その当時なんと25歳(!)だったワトソンさんが、その着想から発見までの出来事を綴ったものです。「遺伝子はA-T G-Cという4つの塩基だけでできたシンプルで美しいらせん構造に違いない」という直感、仮説のすごさ、かなり激しい化学者同士の競争、それらが意外とコミカルなタッチで描かれています。小説のように面白い本です。

体にいい食べ物はなぜコロコロと変わるのか
畑中三応子 (ベストセラーズ) 出典:Amazon
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おっと、一気に身近な話題の本です。矢野先生、最初からこの本をオススメしてくださいよ。インタビュー記事では矢野先生も専門であるこの分野のお話をされていますね。アルカリ性食品?ダイエット食品?糖質制限?マクロビオティック?サプリメント?グルサコミンにポリフェノール、そして「トクホ」こと特定保健用食品、そういうなんとなく身体に効きそうなものはいいのか悪いのかなんなのか。おのののか。「だまされてることもないわけじゃないんですよ」とこの本。ちょっと玉虫色で結論がない本のようでもありますが、よく耳にする体にいい食べ物の話、気になる話題は網羅されています。

「生きている」を見つめる医療 ゲノムでよみとく生命誌講座
中村桂子 山岸敦  (講談社) 出典:Amazon
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サイエンスと医療。医学は、いま大きくかわりつつある分野ですね。遺伝子の組み合わせパターンであるゲノムを解析することによって、「オーダーメイド医療」「ライフステージ医療」がこれからは可能になってくる、というお話です。この本のいいところはですね、ゲノムを調べることを通じて、単に医療面だけではなく、生物としての自分の「つながり」を意識できるようになれることですね。その知識を得ることによって、人間一人一人がかけがえない生物なんだ、と思えて、ものすごく根本的に健康を考える時代が来そうだなあ、と思います。

生物と無生物のあいだ
福岡伸一 (講談社) 出典:Amazon
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これこれ!これですよ。まさに文系人間と理系の架け橋になる本は。サイエンスの心を教えてくれる本は。まさに名著ですね。詩的な文章のなかに、人類の知の歴史が川のように流れていく。これ、じつはエッセイ集ですね。しかし、感動しながら洞察する精神、探求しながら詠嘆する心は、人間にとって両立できるものだということを教えてくれる本です。中島みゆきの『空と君とのあいだに』と小説『冷静と情熱のあいだ』、そしてこの『生物と無生物のあいだ』は「日本3大あいだ賞」に僕が認定します。

…いやぁ、たくさん本を読んだらおなかがすきました。もうお昼です。大学といえば、学食。ここ京都亀岡キャンパス名物・からあげライスを食べる、これは京都学園大学を訪れた者の義務といえるでしょう。

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すると、とつぜん学生さんが。なんとさえりさんのファンだそうです。取材用の仕込みかと思うような美人さんです。

喜ぶ学生さんと口にからあげの入ったさえりさん

話す学生さんとみそ汁を飲むさえりさん

スマホを見せる学生さんと覗き込むさえりさん。ポケモンGOの話でしょうか。違います。取材した日にはポケモンGOはまだありませんでした

京都学園大学での楽しい大学生活が伝わる明るいお嬢さんでした。個人的な趣味で写真もたくさん撮らせていただきました。ありがとうございました。ていうか、かわいいやろ。おそるべし京都学園大学。

さて、からあげライスも美味しかったところで、ブックガイドの続きです。僕この、「文系でもサイエンスのおもしろさが味わえる本」というジャンルにはまってしまいまして、矢野先生におすすめいただいた本以外にも、いろいろ読んでみました。

自分の体で実験したい 命がけの科学者列伝
レスリー・デンディ、メル・ボーリング 梶山あゆみ:訳 紀伊國屋書店) 出典:Amazon

いや、もうこれ強烈に面白い本ですよ。「人間はどれくらい高温に耐えられるか?自分で限界を試したジョージ・フォーダイス」「どれだけ隔離されたら体調はおかしくなるか?洞窟に4ヶ月こもったステファニア・フォリーニ」などなど、科学者たちの勇気と狂気。ごぞんじ「自分で放射線を浴びまくったキュリー夫人」の話ももちろん出てきます。こういうサイエンティストたちの捨て身の検証で現代文明は成り立っているのです。若い人たちに読んでほしい本です。

われ思う、故に、われ間違う―錯誤と創造性
ジャン=ピエール・ランタン 丸岡高弘:訳(産業図書) 出典:Amazon

「科学する心」はまず「仮説をたてる」ことから始まります。「宇宙は大きな亀が支えているのだ」というのもいまだに正しいか間違っているか証明できない仮説のひとつなわけです。仮説とは、いい意味でも悪い意味でも「思い込み」なんです。その仮説に対してどんな手間をかけても「証明」する。 実験や観察をして何度でも同じ結果が出ることを見せてはじめて「科学」になる。この本を読むと、最終的に「科学」まで達することのできたニュートンも、アインシュタインも、パスツールも、人生で何度も「思い込み」にとらわれて何年も何十年も棒に振っていることがわかります。しかし、その方法だけが人類を前に進ませる、偉大などんくささなのです。

きわどい科学―ウソとマコトの境域を探る
マイケル・W.フリードランダー 田中嘉津夫、久保田裕:訳(白揚社) 出典:Amazon
なぜ人はニセ科学を信じるのか
マイクル・シャーマー 岡田靖史:訳 (早川書房) 出典:Amazon

この2冊は、けっこうスリリングでした。『きわどい科学』は、いわゆる「疑似科学」について書かれています。確信犯的に科学のフリをして人をだますものもあれば、科学に対する方法、つまり再現性のある実験、実証が不完全で、ハッキリしてないのに「この難問を解決した!」と発表してしまうものもあります。 STAP細胞騒動とか記憶に新しいですね。『なぜ人はニセ科学を信じるのか』は、血液型性格診断とか、UFOとか、超能力とかですね、ツッコミどころ満載の話をどうして信じてしまうのか、という今後生きていく上で騙されないためにとても大切な思考の道筋について書かれています。大学生のみんな、これから大学生になるみんな、変な宗教、変なマルチ商法、騙されないためには、とにかく自分の頭で考えるように。

めざせイグ・ノーベル賞 傾向と対策
久我羅内 (CCCメディアハウス) 出典:Amazon

最後に、とかくマジメで大変な「科学する心」を、人を脱力させるほうへ使うとどうなるか、という楽しい本を紹介します。賞の名前からして「イグノーブル」つまり「下品な」という単語をノーベル賞という言葉に引っ掛けたダジャレですから、もうくだらない研究ばかりです。 しかしそのくだらない仮説を、「科学の手法」、何度も言いますが実験と実証してみせたことに面白さと感動があるのです。注目なのは日本人の受賞が多いこと。たとえば北里大学の馬渕教授「バナナの皮が実際どれくらい滑りやすいのか具体的な数値を計測」で物理学賞受賞とか、世界に冠たる大喜利民族・日本人、マジメさと不真面目さが混然となったところに真の笑いが生まれる、ここ大事ですね。

いろんな本を読んで思ったのは、科学する態度は、知りたいという本能にもとづく、人間の挑戦だということ。そして科学する心というのは、仮説を立てるということであり、理想を持つということ。さらに、科学を確かなものにする姿勢というのは、検証であり、何度も何度も疑いの目を持つこと、だということです。

わからないことは「ああわからない」と詩のようなものを書きつけて気を済ませ、とくに理想もなくダラダラ過ごし、言われたことをすぐ信じてしまう、そんな根っから文系の人も、理系の人たちの努力を知って、サイエンスな生き方に一歩でも近づきたいものだなぁ、と僕は詩のようなものを書きつけて気を済ませました。

いかがでしたか?いやあ、勉強って楽しいなぁ、って今回もまた思いました。

さてみなさん、勉強も楽しいですが、やること終わらせて打ち上げするのも楽しいですよね。というわけで、取材が終わったわれわれは、京都の夜に繰り出したのでした。ここまで記事を飛ばさずに読んだ人だけが見ることが許される、さえりさん写真集をおまけにつけます。ここだけ見る不届き者は、死後しばきにあうのです。

祇園花見小路を歩くさえりさん

アルコールに含まれるエチルアルコールが脳の機能を抑制する事によって引き起こす症状を発現するさえりさん

アルコールに含まれるエチルアルコール代謝の中間生成物であるアセトアルデヒドの作用によって人格に変容をきたしたさえりさん

スマホをさわるさえりさん。ポケモンGOをしているのでしょうか。違います。取材した日にはポケモンGOはまだありませんでした

さえりさん ああさえりさん さえりさん

最後の最後に、

このサイトで京都学園大学を舞台にした連作漫画『何かのプロローグ』『何かのエピローグ』を描いてくれたかっぴーさん、打ち上げの最中もずっと寝ていたのですが、カメラを向けた時だけまるで昭和の文豪のような顔をしたので載せておきます。

かっぴーさんは、7月29日に

SNSポリスのSNS入門 ダイヤモンド社 出典:Amazon
おしゃ家ソムリエ おしゃ子! 大和書房 出典:Amazon

という2冊の本が出版されますので、どうぞよろしく…とだけ言い残してまた寝ました。

と、いうわけで、みなさんまた京都学園大学のキャンパスでお会いしましょう!そしてわれわれ取材班に打ち上げをさせてください。

田中泰延
田中泰延

1969年大阪生まれ コピーライター/CMプランナー ひろのぶ党党首。
世界のクリエイティブニュース「街角のクリエイティブ」「田中泰延のエンタメ新党」を連載中。
Twitter:@hironobutnk


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