【飛翔コラム】田中泰延のエンタメ分党 既成概念にチャレンジするためのブックガイド

【飛翔コラム】田中泰延のエンタメ分党

既成概念にチャレンジするためのブックガイド

みなさんこんにちは。田中泰延といいます。ひろのぶと読んでください。47歳です。田中泰延のエンタメ新党という映画のコラムとか、会社を辞めちゃったので失業日記、ひろのぶ雑記などを書いたりしています。
あと、最近はこんな記事も書かせていただきました。若い人、読んでね。

「会社のために頑張るな。自分のことをやれ」田中泰延特別寄稿|WorkSwitch

さて、そんな青年失業家の僕ですが、本日もライターのカツセマサヒコさんと、さえりさんと3人で京都学園大学にやってまいりました。そして取材するさえりさんを取材することに命をかけています。ええ、別にそんなことは誰にも命じられていません。でも誰かに言われたことをやるだけの人間にはなるなよ、みんな。

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今まで僕は、さえりさんに迷惑がられてきました。仕事をするさえりさんを一方的に撮影していたからです。しかし2017年、ついにさえりさんが反撃に出ました。

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自分のスマホをみて嬉しそうに笑うさえりさん。なんですか?

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なに?

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えっ。

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撮ってる僕を逆に撮られました。なんというひどい姿でしょうか。僕はこんな47歳男性がカメラを持って迫ってきたらいやです。

さてみなさん。飛行機はなぜ飛ぶか知っていますか。

僕は、こう考えていました。飛行機は、滑走路のはしっこに向かって全力疾走しますよね?すると、滑走路がどんどん終わりに近づいてくる。滑走路がなくなったらおしまいです。だから、焦った飛行機は飛び上がるしか仕方がないので飛ぶのではないかと。

しかし、どうも僕が考えた原理は違うようです。

なぜ飛行機が飛ぶかは、京都学園大学の中条潮(ちゅうじょう・うしお)教授がさえりさんに教えてくださいました。中条先生は、工学系の航空力学の先生ではなく、公共政策・社会問題の経済学の先生です。ですから、「飛行機は翼の揚力で飛ぶ」という物理的なお答えではありません。

さえりさんと中条先生は、えーと、今どこに…

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ちょっと!!デートかよ?!
待ち合わせかよ!

毎回、京都学園大学の先生とさえりさんが談笑するたびに嫉妬の炎を燃やしてしまう私は、きっとこんな姿なのでしょう。

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もうええわ。誰も見たくないわこの写真。

そんな中条教授とさえりさんのお話は記事を読んでいただきたいと思いますが、

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僕には例によって中条先生から課題図書を読むミッションが課せられました。

でもこれが普通じゃなかったんです。

田中ひろのぶ

先生、先生、中条先生。
先生の研究分野である、公共政策や規制改革の基礎となる経済学の考え方について
・高校生に今のうちに読んでおいてもらいたい書籍
・読んでおくと役立つ書籍
を挙げてくださいというお願いでしたが、ぜんぜんそうじゃない感じの本をお教えいただきましたね。

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私が高校生だったら、経済学の本を読んでいる同級生なんて友達になりたくない(笑)。そんなのは大学で専門的に勉強するときになってから読めばよいです。まずはこれをどうぞ。

ローマ人の物語
塩野七生  新潮社 出典:新潮社ウェブサイト
ローマ人の物語

いきなりの大名著ですね。文庫本にして全43巻!!

ひろのぶさん

中条先生、読むの来年ぐらいまでかかります!

chujoo

たしかに、田中さん、大変だね。であれば、文庫版の第8巻「ユリウス・カエサル(上)」だけでも。

ローマ人の物語 8ユリウス・カエサル ルビコン以前〔上〕
塩野七生 新潮社 出典:新潮社ウェブサイト
ローマ人の物語 8ユリウス・カエサル ルビコン以前〔上〕
ひろのぶさん

ユリウス・カエサル、英語読みでジュリアス・シーザー、ローマの共和制に幕を引き、不世出のリーダーシップで帝政を築いた男。その幼少期から青年期までを描く巻ですね。まさに何かが始まる前触れ、僕はワクワクドキドキしながら読みました。とりわけ第4章で語られる、
「やたらと女たちにモテたことだけは確かなカエサルだが、女たちの誰一人からも恨まれなかった」
「モテることも男の理想だが、モテた女から恨みを買わないという一事にいたっては、それこそすべての男が心中秘かにいだいている、願望ではないか」
ここですね。これ、ローマ帝国が発展した理由ではないかと思うんです。

 

chujoo

私がカエサルを好きなのは、オープン化を国是としたローマの中でも代表選手であること、そして、彼は常に一度の行動で複数の目的を達成しようとしたという、私の持論である「二兎を追うものだけが二兎を得られる」と同じ考え方の人であったこと。
経済学の基本は選択の多様性。これを確保することが大事。閉鎖性は個人にとっても社会にとってもマイナス。オープンな社会体制こそが人々の幸せを拡大し、前向きな世界をつくっていきます。
その点を2000年前から気づいていたローマ帝国。敵をも同化してしまうオープンな考え方がローマを強大にしていきます。
閉鎖主義のトランプさんは、ローマ帝国について勉強しなかったんだろな。

ひろのぶさん

先生、先生、中条先生。挙げていただいた本のタイトルを見たら、「これ、なんで関係あんねん?」と思いましたが、経済学につながっていくんですね。

chujoo

経済学は、さまざまな政策を社会全体の視点から評価するのが目的です。そのためには、社会を見る目を幅広く養うことが必要です。経済学の考え方や景を広く学ぶための本を、かつ、無理なく楽しく読める本を並べてみました。

今回のコラムがなぜ【飛翔コラム】かというと、飛行機がなぜ飛ぶか?という疑問に、経済学の視点から考えることこそ、「思考の飛翔」なんだなぁ、と思ったからです。それは「俯瞰」であり、「飛び込む」こと、でもあるんですね。

あと、視線を合わせてくれないさえりさんからも、僕はもう、飛び立つ必要があると思うんです。飛び立っても気がつかないと思うんですけど。

chujoo

経済学は自由な市場と競争を前提にものを考えます。それが人々の幸せの基本をなすから。自由を確保し、新規参入を認め、常に社会を新しくしていくことが必要。そのためには、既成の体制へのチャレンジ、壁の破壊が必要。
既成概念にチャレンジする改革者には、さきほどのカエサルをはじめ、歴史の中にいくつものすばらしい例があります。そういった人を主人公にした歴史小説から読むのが入りやすい。
その点で、北方謙三の歴史小説は力をあたえてくれます。たとえば集英社文庫の「水滸伝」、全19巻。

ひろのぶさん

中条先生、読むの再来年ぐらいまでかかります!

chujoo

では、北方小説、あえて1冊だけ挙げましょう。

武王の門〈上〉〈下〉
北方謙三 文藝春秋 出典:Amazon
武王の門〈上〉武王の門〈下〉
ひろのぶさん

…一冊だけって、上下巻やないですか中条先生。14世紀、後醍醐天皇の建武の新政が崩壊した後、南北朝に分かれた日本で、韓半島と北九州を一つにした独立王国を築こうとした懐良親王と菊池武光の物語。
懷良親王が着手するのは、まさに経営であり、経済学ですね。ダイバーシティを大切にして、地元民との協力関係を築く、武士を金銭で雇う、交易を行う、そして交易を守るための軍を組織化する、機を見て韓半島に進出する、既成概念にチャレンジする改革者とは、こういうことなんですね。それを退屈な歴史の教科書と全然違って、まるで見てきたように書く小説家、北方謙三さん自身も既成概念にチャレンジする改革者ですね。

無双の花
葉室麟 文藝春秋 出典:Amazon
無双の花
chujoo

既成概念を覆すチャレンジャーは人と同じことをしません。大きな流れに巻き込まれないで、体制にとりこまれないで、自由と独立を維持する人生を送ろうとします。
「大きさ」ではなく「存在感」を示す人生を歩みたい人にとっての道しるべは、立花宗茂。多くの人が立花宗茂を描いていますが、あえて一つあげればこの葉室麟「無双の花」です。豊臣方として旗幟を変えない、ぶれない。しかも、真田幸村のように死なずに家光の時代まで、しぶとく生き続ける。悲壮感がなく明るい。トヨタやフォードでなく、ホンダでありたい人におすすめです。

ひろのぶさん

先生、先生、中条先生。先生はひょっとして僕のお父さんじゃないですか?僕、父の言葉を思い出して、こんなの書いたんですよ

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chujoo

田中さんのお父さんは、いいお父さんですね。そうなんです。人生を意義あるものとして過ごしたいなら、自分を、個性を捨てないこと。自由と独立を維持する人生を送る、そんなひとたちの生きざまをこそ、高校生には知ってほしい。

永遠の0
百田尚樹 講談社 出典:Amazon
永遠の0
ひろのぶさん

大ベストセラーすぎる大ベストセラーですよね。もちろんミーハーな僕も読みました。孤高の天才ゼロ戦パイロットの物語。

chujoo

経済学の前提は平和な世界です。市場での競争は大いに奨励しますが、力による市場の制覇や独占を悪とします。したがって、市場秩序と平和を維持することが前提なんです。国防とは何か、どのように維持するのか、まで考えなければ効率的な社会は成り立ちません。経済学はそこまで考えるんです。

ひろのぶさん

「戦争反対!」を心情で叫ぶのではなく、経済学の観点で見ることがいちばん明快なんですね。

chujoo

そのために国防の重要性を考え、過去の政策の認識と反省を常に怠らないことが必要なんです。でも終戦後70年もたってしまった今日、そういったことを気難しげに話しても若い人にはうざいと言われちゃうので、わかりやすいところから入っていくに限ります。「永遠の0」の主人公もまた、反体制独立自由の人なんですね。

紫電改のマキ
野上武志 秋田書店 出典:Amazon
紫電改のマキ
ひろのぶさん

いやあ、今回は小説が多くて、読むのは楽しいけど時間かかって大変だったんですけど、最後は漫画!しかも女子高生とレシプロ戦闘機!わけのわからない組み合わせですが、これが最高に萌える。この発想そのものが既成概念からの飛翔ですね。紫電改やゼロ戦で東京上空で空戦したあとに、スタバでケーキを食べる女子高生、なんやねん。めっちゃ面白い。

chujoo

途方もない発想の自由さに脱帽ですね。さらに、ちばてつやの名作「紫電改のタカ」(講談社)にさかのぼって読んだら、「永遠の0」も読みやすくなります。

…なるほど、これらの本を読み、京都学園大学・中条先生のお話を伺って思ったことは、改革者、破壊者であろうとすることは、じつは勝手に生きることではなく、独立独歩の人、個性の人であろうとすることは、じつは自分だけの利益ではなく、全体の、組織の利益につながって世界を変えていくということです。

もうね、前回の「道」に関する研究をされている原雄一教授のお話 に続いて、会社を辞めて、一人で怖がらずに飛んでみる人生を選んだ僕にも、たくさんの学びがありました。

ていうか、大学って面白い!!
ていうか、大学の先生って面白い!!
ていうか、中条先生が面白い!!

京都学園大学に伺うたびに、なんかもう、勉強って楽しいなぁって感じて、めちゃくちゃ嬉しいんです僕。それが少しでも伝わるといいなぁ。



さて、京都学園大学で取材を続けるもう一人のライター、カツセマサヒコさんですが…

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相変わらずセピア色の写真とか意味がわからないんですけど。

ひろのぶさん

おれ、意外と君のことが好きなんや。

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いいから僕の書いた記事を読んでください。

ひろのぶさん

はい。

「学校の先生」になりたいんだけど、やっぱりしんどいの? 教職課程の先生に聞いてみた
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最後に、中条先生にお話を伺う間にスキを見せたさえりさんのストールを盗みました。戦利品を握りしめながら今回はお別れしたいと思います。

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いい匂いがします。

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返せ。

では、次回も京都学園大学からお届けします。みなさんまたお会いしましょう。

田中泰延
田中泰延

1969年大阪生まれ
株式会社 電通でコピーライターとして24年間勤務ののち、2016年に退職。ライターとして活動を始める。
世界のクリエイティブニュース「街角のクリエイティブ」で連載する映画評論「田中泰延のエンタメ新党」は100万ページビューを突破。
Twitter:@hironobutnk


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