「命を、いただいています。」バイオ環境学部 バイオサイエンス学科 畑中沙緒理さん・猪口知夏さん

京都学園大学の学生さんに聞いてみた
「命を、いただいています。」
バイオ環境学部
バイオサイエンス学科
畑中沙緒理さん・猪口知夏さん

意味なく崇められてすみません。田中泰延です。48歳です。

さて、この連載「京都学園大学の学生さんに聞いてみた」は、「夢と出会う場所」「夢がかなう場所」、京都学園大学で学ぶ学生のみなさんにじっくりお話を聞いてみたい。そんな企画です。どうぞよろしくお願いいたします。

さてみなさん。今回は…

   

いったいどんな恐ろしい話なのでしょうか。

女性お二人の登場です。
畑中沙緒理さん。

猪口知夏さん。

 
畑中さん

さえりさん、ファンです!

さえりさん01

ありがとうございます。

猪口さん

カツセマサヒコさん、いつも記事読んでます!

かつせさん

どうもです。

たなかさん01

ちょっと待ってくれ。

たなかさん01

話聞くの、おれ。

畑中さん

これ、毎回お約束ですよね。

猪口さん

この小芝居、いるんですか?

かつせさん

つきあってあげて。

さえりさん01

したいようにさせてあげて。

たなかさん01

さえりさん、カツセさん、君たちは京都まで来た新幹線の領収書を僕に渡して、それぞれ自分の取材に行きたまえ。

たなかさん01

よし。

気が済んだところで

たなかさん02

さてさて。おふたりは。

畑中さん

京都学園大学 バイオ環境学部 バイオサイエンス学科4回生、畑中沙緒理です。

猪口さん

同じくバイオ環境学部 バイオサイエンス学科3回生、猪口知夏です。

たなかさん02

ここで君たちに大事なことを教えておこう。

畑中さん

あ、出た。

たなかさん02

大学生の学年を「回生」というのは関西でしか通用しない。

猪口さん

そうなんですねー。って驚かないとだめなんですよね。

畑中さん

すごーい。って驚かないとだめなんですよね。

たなかさん02

知っていたのか。では本日はこれにて。

畑中さん

ありがとうございました。

猪口さん

本題に入る前にいろいろ段取りがあるんですね。

京都学園大学で何を学んでいますか

たなかさん02

で、お二人はどんなことをこの大学で。

畑中さん

私たちは「養蚕」、つまり蚕を育てているんです。私の名前は、「いつも畑の中にいる畑中」と覚えてください。

たなかさん02

蚕?!絹の原料をつくるカイコ、よね?さっきから嬉しそうに箱を持ってますな。

猪口さん

かわいい子たちを連れてきました。

たなかさん02

おっ?

たなかさん02

おおお〜〜〜!!虫!!!

さえりさん02

ぎゃーーーーー!!小学校の教室以来みた!!

 
かつせさん

僕なんか手に乗せても全然平気ですよ。かわいいじゃないですか。圧倒的モスラ感ありますね。

たなかさん02

ていうか君らまだいたのか。早く行きたまえ。

たなかさん02

さえりさん慣れてきたね。

たなかさん02

そして…繭やん!初めて見た!

養蚕とは

畑中さん

実際に蚕を育てている研究室へどうぞ。

猪口さん

これは「蔟」(まぶし)といって、蚕が繭を作るための棚みたいなものです。

たなかさん02

「まぶし」?「まぶしが眩しい」・・・なんちて。

畑中さん

・・・。

猪口さん

こんなふうに回転する枠にとりつけます。

たなかさん02

たくさんいますね。養蚕って「蚕がようさんいますね」・・・なんちて。

猪口さん

・・・。

畑中さん

これができた繭です。こんなふうに、もとから黄色い糸を吐く蚕もいるんです。そして、繭はどんなにぐるぐる巻きでも、一本の繋がった糸でできてるんです。

猪口さん

たとえば西陣織だったら、一つの繭の一本の糸を7本撚ったものが生糸(きいと)です。これが21デニールという太さで、例えばストッキングの糸ぐらいの細さですね。

畑中さん

さらに生糸5〜6本を撚って、一本の「絹糸」がやっとできて、それで「織物」をつくります。ハンカチ、スカーフ、下着、大きいものになるとドレス、着物、帯…

たなかさん02

蚕の糸、細っ!!!着物なんて、いったいどんだけ吐いた糸が必要なんだろう?!

畑中さん

着物一反は、1キロぐらいありますよね。繭一個で0.25グラムほど生糸ができるから、だいたい4,000個の繭でできています。

たなかさん02

4,000個でやっと着物!!人類、裸で生きていけないですもんね。ウールに、ダウンに、シルクに…羊だの、鳥だの、虫だの、生き物の力を借りないと外も歩けない。絹と人間の歴史は5,000年以上というけれど、5,000年のシルクロードの歴史は、人類の歩みなんですね。

畑中さん

さらに遡ると、これが卵の殻です。卵から孵って糸を吐く幼虫になるまでに1ヶ月、1万倍の大きさに成長します。養蚕自体は桑の若葉がないとできないので、うちの大学では年2回、春と秋に1ヶ月のスパンなんですが、その1ヶ月はつきっきりです。

猪口さん

一頭、二頭と数えます。彼らは家畜なんです。

たなかさん02

家畜?!昆虫なのに家畜なんだ。

畑中さん

自然界では生きられないんです。野山に離したらすぐ死んじゃいますし、人間から逃げないんです。自然界にはクワコっていって蚕の原種と言われる茶色いのもいるんですけど、そいつらは逃げるらしいです。
野生の昆虫を飼いならした「飼い子」が「カイコ」の語源と言われています。

たなかさん02

逃げないんだ。自由を求めて校舎の窓ガラス壊して回ったりしないんだ。

猪口さん

盗んだバイクで走り出したりもしないです。

畑中さん

それどころか、ほっといたら飢え死にするんです。目の前に桑の葉っぱをおいても食べに行かないんです。くっつけてやらないと。

たなかさん02

「クワをくわない」なんちて。

畑中さん

・・・。

たなかさん02

そこまで人間は品種改良していったわけだ。蚕が生きるには人間の介護が必要なんですね。「カイコをかいご」なんちて。

猪口さん

・・・。

養蚕の道にはいったわけ

畑中さん

この大学の近くに絹織物のお店があったんです。織元さんにとどまらず、養蚕から始めて復興させる取り組みをやっていて。「京都学園大学の学生で手伝う人いないか」って言われたから、手をあげたんです。最初は1週間のつもりが2週間、いつのまにか今に至る。

たなかさん02

至りすぎやろ。1週間のつもりが4年。

畑中さん

「畑の中にいる畑中」ですから、農業をやりたくてバイオ環境学部に入学したんですけど、バイオサイエンス学科は畑というよりどっちかというと室内で研究することも多くて。そんな中で、養蚕に出会ったんです。うちの大学、かなり自由なんで、先生に言ったら畑貸してくださったり、養蚕も本格的にやりたいといったら正式にゼミにしなさいと。それが私が代表を務める「DNNA(ドンナ)ゼミ」です。

たなかさん02

ドンナゼミってどんなゼミ?!

畑中さん

期待通りの質問ありがとうございます。ゼミの名前は、蚕のDNAを研究しようと思い、DNAからもじってDNNAゼミにしました。みんなから「ドンナゼミってどんなゼミ?!」って言われるのが楽しみで。ですが結局、養蚕に走ってしまって。

猪口さん

わたしは、繊維の草木染めに興味があったんですけど、畑中先輩が蚕を飼いだして、「絶対入れ」って言われるよなぁ〜って身構えてたらやっぱり引き込まれまして。京都学園大学には理科の教員免許取ろうと思って入ったんですけど、養蚕を始めたら養蚕や蚕についてすごく興味を持っちゃってもうメインの研究にしようと思って。

たなかさん02

人生、虫に変えられちゃったわけやね。

猪口さん

とにかく、蚕が可愛くて。ぷにぷにで、手のひらに乗せたらひんやりしてて。手がかかって、でも一生懸命糸を吐いて。

畑中さん

朝も昼も夜も桑を食べ続けているんです。一斉に桑の葉を食べる音が、雨が降りしきる音なんですよ。ゼミのインスタグラムにあがってます。

(画像をクリックすると別タブで再生できます。音量にご注意ください)

たなかさん02

雨じゃんこの音?!

猪口さん

そんな蚕が「眠」といって、脱皮する準備の時はこんな感じのポーズでなんにもしない時があるんです。胴体をちょっと上げたままでじっとしている、これがまた可愛いんです。

畑中さん

わたし、「マネキンチャレンジ」とか勝手に呼んでるんですけど。もうね、インスタグラムが蚕ばっかりで。こないだ飲み会にいったら「あれ、気持ち悪いねん!」て言われました。

たなかさん02

どんだけ蚕が可愛いんや君たち。カイコやなくてカワイイコ やないか。

・・・。

バイオとは、いのちである

畑中さん

このまえ試食会したんですよ。

たなかさん02

は?試食?!

猪口さん

ゼミのインスタにも載ってます。ピザに茹でた蚕のさなぎをのせまして。こう、こんがりと。

たなかさん02

それ、インスタ映えしないでしょう?!

畑中さん

なかなか美味しいんですよ。これから人類100億人時代になったら昆虫は重要なタンパク源と考えられてるんです。

猪口さん

そもそも、繭を糸にする時は茹でてほどくんで、中のさなぎは死んじゃいます。全ての蚕は蛾になることなくさなぎの時点で命が終わるわけですね。

たなかさん02

「カイコを解雇」なんちて。

畑中さん

・・・。

猪口さん

もし成虫の蛾になっても筋肉が退化していて、飛ぶことができないんです。だから蛾になれたとしてもすぐに死んじゃうんです。

畑中さん

なので、絹を紡ぐことは、命をいただくこと。

たなかさん02

「恨みつらみはございやせんが、渡世の義理で、お命頂戴いたします」ってやつですね。

猪口さん

…?蚕を料理していると、残酷とか可哀想といわれるんですけど、わたしたちはむしろ命をぜんぶいただこうとしているわけで、

畑中さん

農業も漁業も畜産もぜんぶ、わたしたちは「命をいただいている」、それを忘れたことはないですね。バイオ環境学部は多様な生物と「ともにいきる」ってことを学ぶ学部。バイオって「いのち」ってことなんです。

将来の夢

畑中さん

将来は養蚕農家になるの?ってよく言われるんですけど、私は養蚕を仕事にする気はなくって。卒論も蚕と関係ないですし、卒業後の進路はまだ決まってません。入学したことも流れに身を任せてって感じなんですけど、

たなかさん02

でも蚕には出会ったんだ

畑中さん

はい。蚕に出会ったことで、「命をいただく」ってことの本質がわかって、世界の見え方も、行動の仕方も変わったから、また流れに身を任せていれば、なにかの仕事に打ち込めると思ってます。

猪口さん

わたしも…将来のことは考えてないんですけど、

たなかさん02

考えてないグループか君たち。

猪口さん

蚕には医療や美容の世界で可能性があるんです。繭に含まれるセリシンを研究できる大学院があるのでそこに進もうかなとも考えています。

たなかさん02

セリシン?

猪口さん

繭からの糸の断面図をみると2種類のタンパク質があるんです。セリシンのほうにはいろんな機能がありそうだということで、服の繊維にセリシンを加えると加齢臭を抑えるとか、セリシンを溶かした水でご飯がツヤツヤに炊けるとか、セリシンに肌の保水効果があるとか。理科の先生になりたくて大学に入ったのに、いまは頭の中が蚕ばっかりですね。私は蚕を通じて、「化学と生物のあいだ」を考えて生きていきたいです。

たなかさん02

「シルクは、イリョーだけじゃありません。」なんちて。

猪口さん

は?

たなかさん02

い、いや、「繭は衣料だけでなく、医療にも役に立つ」ってことを言いたくて。

猪口さん

・・・。

たなかさん02

わし、いちおうプロのコピーライターなんやぞ!!

猪口さん

・・・それにしても、人生、大きく変わっちゃいました。蚕で。

畑中さん

そ、そんな大きな影響を与えてしまったか・・・。蚕で。

猪口さん

ええ、先輩のせいで。

さいごに

「繭のセリシンを研究したいんです」って先生に言いに行ったら、「じゃあ実践プロジェクトとして単位に組み込んであげるからとことんやりなさい」って、そんな大学あります?京都学園大学は「やりたい放題」ができます、と猪口さん。

面倒見がよすぎるというか、世話焼いてくださるのが自然体で、そういう先生ばっかりで、あっという間に4年生に・・・京都学園大学に入って、予想以上に楽しかった。という畑中さん。

お二人からは、自分の学問は自分で切り拓く、という大学本来の姿が、そしてそれ自体が楽しいことだという事実が伝わってきました。近い将来、飛べない蚕ちゃん達には悪いけど、自由に飛べる翼で空に羽ばたいていくんだろうなあ、そんな未来を感じました。

いやあ、学生さんに僕が社会人としていろいろ質問されて、なんかえらそうに答える連載にしようと思ってたんですけど、僕が教えてもらうことばっかりでした。

畑中沙緒理さん、猪口知夏さん、いろいろ教えてくださって、ありがとう。

次回も学生さんのお話を伺います。次も女子がいいです。女子。

【おまけ 今月の取材後記】

夏生さえりさん、カツセマサヒコさん、2人のライターは売れっ子です。休憩時間も僕の事など一顧だにせずなにかの原稿を書いています。

そんな時は勝手に写真を撮るチャンスです。

さえりさん01

許可はしてないですけどね。

ひろのぶさん

承諾は掲載をもって代えさせていただきます。

 
かつせさん

邪魔ですけどね。

ひろのぶさん

ええ、狙い通りです。

さえりさん01

いつ撮ったんですか。

ひろのぶさん

君がコーヒーを飲んでる時や。

では、来月もこの3人で京都学園大学からお送りいたします。

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バイオ環境学部

バイオサイエンス学科

田中泰延
田中泰延

1969年大阪生まれ
株式会社 電通でコピーライターとして24年間勤務ののち、2016年に退職。ライターとして活動を始める。
世界のクリエイティブニュース「街角のクリエイティブ」で連載する映画評論「田中泰延のエンタメ新党」は150万ページビューを突破。
Twitter:@hironobutnk


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