あの人がマニアックな研究に目覚めた理由 Vol.1「DNAとバイオテクノロジー」

あの人がマニアックな研究に目覚めた理由 Vol.1「DNAとバイオテクノロジー」

「大学の先生って、『なんでそんなマニアックな道を極めちゃったの?』って感じの人、たまにいません? 僕、そういう人たちのことが気になるんですけど」。ふとした疑問を京都学園大学に投げかけたライターのカツセマサヒコさん。

「じゃあ、実際に聞いてみたら?」ということで、京都学園大学の先生に「どうしてその研究に目覚めたの?」と尋ねる企画を始めることになりました。記念すべき第一回は、バイオ環境学部で植物バイオテクノロジーについての研究をしている、Rafael Prieto(ラファエル・プリエト)先生です!

DNAがなかったら、私たちは存在しない

カツセマサヒコ

先生は、どうしてDNAやバイオサイエンスの研究分野に進もうと思ったんですか? DNAって、普通に日常生活を送っている限り、関わらない分野ですよね?

ラファエル プリエト先生

いいえ。DNAがなかったら、そもそも私たちは産まれていないですからね。とても深いつながりがありますよ?

カツセマサヒコ

あ、はい、それはもちろん、そうなんですけど……。

ラファエル プリエト先生

たとえば、親子の顔が似ているのは、同じ遺伝子の組み合わせを持っているからでしょう?

カツセマサヒコ

あの……はい……。

ラファエル プリエト先生

約150年前にメンデルが遺伝の法則を見つけますが、当時は遺伝子やDNAという言葉はなかったにしろ、歴史はそこから始まるわけです。そして約60年前、ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を見つけました。遺伝子はDNAの断片であり、たとえば赤ちゃんが生まれるためには約3万個の遺伝子が必要です。それらはすべてお父さん、お母さんの遺伝子情報からできているわけです。

カツセマサヒコ

なる……ほど……?

ラファエル プリエト先生

つまり我々にとって遺伝子は欠かせない存在であるわけですね。ちなみにDNAはA(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)という塩基性物質を含む4種類のヌクレオチドが組み合わさってできていて、平均として約1,500~2,000ヌクレオチドの組み合わせ次第で遺伝子の情報が変化していくわけです。

カツセマサヒコ

……。

ラファエル プリエト先生

我々のDNAは約32億のヌクレオチドからできていますし、そのDNAはタンパク質との複合体として46本の染色体になります。これは動物によって異なっていて、人間だったら46本23対でできています。ちなみに先ほど「ヒトは約三万個の遺伝子を持っている」と言いましたが、これは稲も大体同じくらいありますね。そして、遺伝子組み換え技術が発達し、たとえば植物に特定の遺伝子を導入することで、さまざまな環境ストレスに適応できる植物を作ることができるようになりました。これが、我々がやっている研究ですね。

カツセマサヒコ

……。

ラファエル プリエト先生

……わかりますか?

カツセマサヒコ

あ、えっと……わかったことにしようと思います。

ラファエル プリエト先生

よかったです。

異常な好奇心を持ったプリエト先生の幼少期

カツセマサヒコ

先生が遺伝子組み換えとかの研究をしていることはよ~くわかったんですが、どうしてその研究に目覚めたんですか?

ラファエル プリエト先生

うーん、そうですね。小学校3、4年のころには、医者になるか、バイオサイエンスの研究者になるか考えてました。

カツセマサヒコ

その年齢でもうバイオが選択肢に入る!?

ラファエル プリエト先生

理科が好きだったんですね。高校も当然理系で、大学院では生物学の博士課程を取って、分子生物学とかも習いました。

カツセマサヒコ

「理科が好き」から始まって、そこまでいけます……?

ラファエル プリエト先生

好奇心は、強かった。子どものころから映画とかを見ていて、「なんで砂漠にトマトがないんだろう? 稲がないんだろう?」って素朴な疑問を持っていたんですよね。

カツセマサヒコ

そこに気付けるからすごい……。

ラファエル プリエト先生

そこから映画やビデオを見たり、本を読んだり、勉強したりするなかで、生物は特殊な環境に適応するために特定の変異を持っていたものだけが進化の過程で選抜されていったことを知っていったんですよ。

カツセマサヒコ

ありえん……。先生って、どういうご家庭で育ったんですか……?

ラファエル プリエト先生

スペインで生まれ育ちましたが、別に普通の家庭ですよ。友だちと話したり、講義を聞いたり、当たり前のように暮らしていました。でも庭に生えている草木を見て、「どうして砂漠では生きられないのに、ここでは生きられるんだ?」と疑問に思ったんです。その中で、私は生物や化学に興味を持っていきました。

カツセマサヒコ

(やっぱりどっかおかしい)

ラファエル プリエト先生

クリスマスプレゼントが顕微鏡で大喜びしたし、それで自分の髪の毛を見たり、血を見てみたりするのが楽しかったです。そこは、ちょっと変わっているかも(笑)

カツセマサヒコ

うん、それは、ちょっとじゃないですね?

バイオサイエンスを研究することで、見える未来

カツセマサヒコ

先生がバイオサイエンスに天才的な好奇心を持ち合わせていたことはわかったんですが、それを研究することで、将来的にどんなメリットがあるのでしょうか?

ラファエル プリエト先生

我々の研究は、ストレス耐性などが異常になっている「変異株」を分離して、その原因遺伝子の単離と解析を行っています。一方、植物の遺伝子組み換えを行い、組み替えた結果、植物のストレス耐性などがどのように変化するのかを調べています。

カツセマサヒコ

すでにわからなくなりそうです。

ラファエル プリエト先生

たとえば、砂漠に生えている草木は、水分が少なく、直射日光が強い環境ストレスにも耐えられる遺伝子を持っていますよね?

カツセマサヒコ

たしかに。

ラファエル プリエト先生

では、それをほかの植物にも適用させることができたら……?

カツセマサヒコ

砂漠にも草木がじゃんじゃん生える!!

ラファエル プリエト先生

そうですね。これがバイオサイエンスの将来的なメリットです。

カツセマサヒコ

超すげー! バイオ、半端じゃないですね!?

ラファエル プリエト先生

望ましい形質などを支配する遺伝子の単離と解析が簡単にできるものではありませんが、たとえば重金属防御や放射性物質の吸収などに関与する遺伝子をコントロールできれば、環境汚染が進んだ地域にも草木を育てられるかもしれないですし、そうすれば空気の浄化や環境回復を促進することができるかもしれないですね。

カツセマサヒコ

遺伝子の研究でそこまで大きな規模の話になるとは思わなかった……! じゃあもしかすると、映画『オデッセイ』みたく、ゆくゆくは火星とか宇宙にだって育つ植物を作ることもできるんですかね!?

ラファエル プリエト先生

あははは! そうですね。現在の科学ではちょっと難しいかもしれないですが、でも進化論で考えても、特定の変異を持っていたものが生物を進化させていったのは事実なわけです。遺伝子組み換え技術ができて、新しい遺伝子を追加することでストレスに強い植物ができる。それが進んでいけば、いずれは可能なのかもしれません。

カツセマサヒコ

なんか、すごい夢を見させてもらった気がします。ありがとうございました……!

05

遺伝子組み換え技術ひとつでどこまでも夢が広がっていく感覚に感動していた様子のカツセさん。最後の最後までプリエト先生のバイオ愛に圧倒されっぱなしでしたが、でも、夢中になれること、好奇心が強かったこと、日常生活の中から疑問に気付けたことなど、いくつかの要因があって、プリエト先生がこの分野に興味を持てていることがわかったようでした。

誰でもプリエト先生のように小さなころから夢を持てるわけではないですし、むしろ明確な夢なんて見つからないまま、高校生・大学生になる人も多いと思います。それでも日常生活から「どんなものが好きで、どんなものが嫌いか」を冷静に見てみることは、将来を考えるうえでのヒントになることがありそうですよね。皆さんもぜひ、考えてみてください!

今回お話を聞かせてもらった先生

ラファエル プリエト先生

Rafael Prieto(ラファエル・プリエト)先生

1965年 スペイン生まれ。スペイン・国立コルドバ大学理学部・バイオサイエンス学科を卒業。同大学大学院生化学・分子生物学研究科を終了して、博士(理学)を取得。94年からは、米国パデュー大学 Center for Plant and Environmental Stress Physiology、米国パデュー大学 Department of Botany and Plant Pathology、奈良先端科学技術大学院大学・植物遺伝子機能学研究室、京都大学大学院農学研究科・植物栄養学研究室の研究員を経て、現在、京都学園大学・バイオ環境学部バイオサイエンス学科准教授。06年から、バイオ環境学部・バイオサイエンス学科・植物バイオテクノロジー研究室では、植物栄養代謝、植物ホルモンの作用機構、植物の環境ストレスへの適応などに重要な役割を担っている遺伝子の単離と機能解析に取り組んでいる。

カツセマサヒコ
カツセマサヒコ

下北沢のweb系編集プロダクション・プレスラボのライター。
書くこと、話すこと、企画することを中心に活動中。
最近『SNSポリスのSNS入門』(ダイヤモンド社)のコラムパートを執筆。
趣味はTwitterとスマホの充電。

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