あの人がマニアックな研究に目覚めた理由Vol.8「宇宙物理少年が経営戦略の教授になったワケ」

あの人がマニアックな研究に目覚めた理由 
Vol.8「宇宙物理少年が経営戦略の教授になったワケ」

「大学の先生って、『なんでそんなマニアックな道を極めちゃったの?』って感じの人、たまにいません? 僕、そういう人たちのことが気になるんですけど」。ふとした疑問を京都学園大学に投げかけたライターのカツセマサヒコさん。

「じゃあ、実際に聞いてみたら?」ということで、京都学園大学の先生に「どうしてその研究に目覚めたの?」と尋ねる企画を始めることになりました。第八回は、経営戦略論を研究されている、大島博行先生です!

ファミリーマートとサークルKが合併した理由、
言えますか?

カツセマサヒコ

先生は「経営戦略論」の教授なんですよね? どんなことを教えているんですか?

大島博行先生

学問体系を難しく話しても理解しづらいので、ニュースに出てくるキーワードから、経営戦略的な背景を教えています。

カツセマサヒコ

た、たとえば……?

大島博行先生

ちょっと前にファミリーマートとサークルKサンクスが合併したじゃないですか。どうして合併したのか、説明できます?

カツセマサヒコ

わかんないです……。

大島博行先生

当時、セブンイレブンが18,000店舗、ローソンとファミリーマートが12,000店舗、サークルKサンクスが6,000店舗くらいだったんです。2位のローソンと3位のファミマがほぼ同じくらいで、セブンイレブンが圧倒的首位。

カツセマサヒコ

なるほど。

大島博行先生

コンビニって、「店舗数」が勝負なんです。たとえばポテチで新しい味を出すとしたら、セブンイレブンで採用してくれたら一挙に18,000店に並ぶ。採用してくれなかったら0。この差は大きいでしょう?

カツセマサヒコ

そりゃあそうですね。

大島博行先生

しかも、コンビニは棚の数がスーパーよりも少ないから、コンソメ味が採用されたらチーズ味が棚に並ばないかもしれない。メーカーは常に必死だから、セブンイレブンが18,000でローソンが12,000だったら、セブンイレブンの方がメーカーとしてはありがたいわけです。

カツセマサヒコ

それだけで売上1.5倍ですもんね。だから店舗数勝負なのか。

大島博行先生

そう。だからメーカーはセブンイレブンの言うことは聞くけど、ローソンの言うことは聞かない、といった状況になるんです。

カツセマサヒコ

おもしろい話になってきた。

大島博行先生

だからコンビニは「店舗数」が勝負。でも、今からファミマがセブンイレブンに追いつくために6,000店舗作るのはなかなか大変ですよね。

カツセマサヒコ

たしかに。

大島博行先生

そこで、6,000店舗あったサークルKサンクスと合併すれば、手っ取り早く18,000店舗になるわけです。これで同等の勝負ができるようになるんですね。

カツセマサヒコ

なるほどー! めちゃくちゃスッキリしました!!!

大島博行先生

でしょう? 授業ではこういう話をしています。コンビニでアルバイトをしている学生も多いから、興味を持ってくれるし分かってくれる。知っている世界の舞台裏というのは、決まって面白いものなんです。

カツセマサヒコ

ほんとワクワクしました。これは面白いです。

カツセマサヒコ

ちなみに、もしサークルKサンクスがファミマとうまく組んで、全てがファミマになったら、実質同着1位になるんですか?

大島博行先生

店舗数ではね。でも、1日の売上高は、セブンイレブンが一店舗平均65万円。対するローソンとファミマは、55万円くらいなんです。

カツセマサヒコ

え、10万円も違う。

大島博行先生

その差は商品開発力だと言われていますけど、実際はよく分からないんですね。この前ゼミで「比べてみよう」と言って、今日はおでん、明日は卵サンド……みたいに食べ比べましたが、モノによって結果は違うし(笑)

カツセマサヒコ

ずっと食べ続けると、味が分かってくるのかもしれないですね(笑)。でも、そうやって時事ネタに触れながら学べるのは楽しそうです。

大島博行先生

そう、それを一通り勉強したら、新聞やニュースに出てくる言葉は大体分かるようにカリキュラムを組んでいます。体系的な学問にはなっていないけど、これからの長い人生で新聞やニュースを見たときに、これはこういう意味なのかって分かってくれたらそこから勉強になるじゃないですか。

カツセマサヒコ

たしかに。めちゃくちゃ受けたい授業ですわ、これは。

カツセマサヒコ

ちなみにゼミではどんなことをしているんですか?

大島博行先生

「京學堂」という学生主体の店舗を運営しています。アルバイトだと時給換算が多いから、暇なのが嬉しいじゃないですか。でも、ここはきみたちが経営者なんだから、暇なのは困るんだぞ、と。アルバイトも同じ社会経験だと思いますけど、ここは視点がまったく違うんです。

カツセマサヒコ

いい経験。

大島博行先生

あと店舗運営で一番いいのは、社会人と本気で話せる機会ができることですね。仕入れ先への連絡も学生がやっているので。

カツセマサヒコ

実際に交渉しているんですか?

大島博行先生

ええ。本当にシビアなときは教員もいっしょに行きますけど、そういう経験って学生にはなかなかできないでしょ。

カツセマサヒコ

ないですね。それが就活よりも前にできていたら、たしかにいい経験になりそうです。

「宇宙物理を勉強していた学生」が
「経営学の教授」になるまで

カツセマサヒコ

先生は、ずっと経営学を勉強していたんですか?

大島博行先生

いや、最初は宇宙物理の勉強をしてましたね。

カツセマサヒコ

宇宙? まったく違うじゃないですか。

大島博行先生

うん。小さいころから天体が好きだったから。あと、物理とか数学がずっと得意だったから、じゃあ宇宙物理しかないな、と。

カツセマサヒコ

「物理」も「宇宙」もひたすら難しいイメージがあるんですけど、もう天才の世界なんじゃないですか?

大島博行先生

そうそう。大学入ったら賢いやつが多すぎて、断念したんです(笑)

カツセマサヒコ

すごいあっさり言いますね?笑

大島博行先生

ロケットに積む測定器とか作っていたので、そこは楽しかったですけどね。で、就職先は、システムエンジニアになってソフトウェアを作っていました。

カツセマサヒコ

また全然違う。

大島博行先生

当時は就職難で、物理や数学の卒業生はコンピューター関連くらいしか就職先がなかったんです。入社後は大手企業のシステムを担当していました。10年くらいいろんなお客さんのところに行って、システム構築をしていました。

カツセマサヒコ

その次が、経営ですか?

大島博行先生

いや、三井銀行でITコンサルタント

カツセマサヒコ

え? まだ違うんですか?

大島博行先生

そう。面白そうだなと思って。銀行なら給料高いし。

カツセマサヒコ

自由(笑)

大島博行先生

主な仕事は企業のIT化なんですけど、当時はまだコンピューターがそんなに使われていないので、コンピューターを導入してどう合理化するかとか、どう経営を改善するか、といった設計をしていたんです。

カツセマサヒコ

お、いつの間にか経営っぽい話に。

大島博行先生

そう。段々近づいていくでしょ。いろんな分析をして、場合によっては「この事業をやめてこっちの事業にシフトする方がいいですよ」みたいなアドバイスをしていました。

カツセマサヒコ

ITコンサルってそこまでするんですか!

大島博行先生

そうそう。それでなんとなく経営も面白いなと思って。そのコンサルティングの会社に20年くらいいました。

カツセマサヒコ

それからどういうきっかけで、アカデミックな方向に?

大島博行先生

20年くらい前に、大学で情報科目の授業がいっぱい設立されたんです。当然、講師を担当できる人材がいないので、SEやITコンサルタントをしていた人間がたくさん大学の先生になった。それで、僕らの5年~10年上の先輩がみんな大学教員になったんですが、話を聞くと、まあ魅力的な職場だと思いました。

カツセマサヒコ

なんやかや言って、教師って憧れるところありますもんね。

大島博行先生

「どうやったら先生になれるんですか」と聞いたら「まずは大学院に行け」と言われて、大阪市立大の社会人大学院に入って、2年で修士をとった。そのタイミングで京都学園大学の公募があり、まだ難しいかな?とは思ったのですが、縁あって採用されました。

カツセマサヒコ

「縁あって」って仰りますけど、大学教授って、そんな簡単になれるものなんでしたっけ……?

大島博行先生

普通は50校~100校受けても受からないらしいんですけど、一発で受かっちゃいましたねえ……(笑)

カツセマサヒコ

単なる天才だった。

大島博行先生

それで2008年から、教授を始めて、今に至ります。

カツセマサヒコ

そこからなんですね。

大島博行先生

IT業界ではよく言われているのですが、「SEからコンサルタントをやって、結果大学教授」って、すごろくでいう一番の出世コースなんですよね。ただ、それを自分で描いたものであればかっこよかったんですけど、僕の場合、外圧でたまたまなってしまった感もあるので……。未だにうちの奥さんは理解してくれなくて、たまに「すごいんだぞ、俺!」って言ってるくらいです(笑)

カツセマサヒコ

それは笑う。

大島博行先生

自分の人生が成り行きだから、学生に言えることもあまりないんです。昔は何をしたかったかというと、大学に行くときは「研究者になってノーベル賞目指すんだ」って本気で思っていましたし。

カツセマサヒコ

物理で?

大島博行先生

そう。それが、今は全然違う道に行っているし。
でも外圧に流されても、多少はコントロールすることが必要だと思います。二択あったら、どっちも似ているけど、より良い選択肢を選ぶとか。そういうのが人生だから。大事な選択の場面を上手く選んでいけば、なんとかなるのかなと。

カツセマサヒコ

なるほどー。

大島博行先生

大学進学も企業就職もそうです。第一志望に入れる人なんて本当に限られていますけど、そこに落ちたからといって落ち込むのではなくて、それも運命だし、そこで頑張ろうみたいな。やっていけば、道が拓けるからね。

カツセマサヒコ

いい話です……。

高校と大学、そして社会人の違い。

カツセマサヒコ

先生が学生さんたちに伝えたいことってありますか?

大島博行先生

高校までの授業で学ぶことは、「すでに確立された学問」なんです。全ての問題に正解があって、正しいものを学べばいい。でも、大学というのは「今動いている学問」を習うところだということですね。正解は明日変わるかもしれない。

カツセマサヒコ

なるほど。

大島博行先生

そして、社会に出ると、そもそも問題が何なのかすら、分からなくなります。

カツセマサヒコ

本当だ。その通りだと思います。

大島博行先生

だから、大人になったら自分で問題を見つけないといけない。そのためのトレーニングをするのが高校、大学だと思ってもらいたいですね。経営なんて、極端に言えば算数ができればいいんですよ。あとは社会常識があればいい。2次関数も微分積分もいらないから、勉強してきたことは一旦リセットされたように感じるかもしれない。

カツセマサヒコ

たしかに。

大島博行先生

そこで、何をしたらいいか分からないという子や、単位を取るだけなら楽勝だといって遊ぶ子もでてきますが、大学は高校とは違う学びがあるからこそ、それを楽しんでほしいです。勉強する喜びは、大学にある。せっかくなら、夢をもって楽しく、視野が広がる感覚を味わってもらいたいです。

カツセマサヒコ

「勉強する喜び」って意外と忘れがちですもんね。

大島博行先生

あとは、目先の利益に捉われずに、未来を見てほしい。たとえば戦後直後、繊維業界が日本では全盛期だった。今はそんなイメージがないでしょう? その次は造船でした。造船も、今は殆どないでしょう? その次は、銀行かな。銀行も、今は再編とかリストラで大変でしょう?

カツセマサヒコ

そうですね。

大島博行先生

当時、大学でトップで卒業した人たちは、トップ企業に入るわけですよ。ところが、30年くらい経ったら、その産業は衰退しているわけです。また、20年前のソフトバンクなんて、まだほんとうに小さい企業です。でも、当時そこに入っていたら、今はもう幹部かもしれない。

カツセマサヒコ

分からないものですね。

大島博行先生

そのときのトップを掴むとそこから落ちるばかりだし、そのときまだ小さな企業が、大きく成長する可能性もある。もちろん、潰れるかもしれないけどね。

カツセマサヒコ

どちらにせよリスクがある時代であることには変わらないですね。

大島博行先生

そう。昔は「サラリーマンはリスクがない」と言われていましたけど、今は自分の責任ではないのに、会社が潰れますからね。だからこそ、日々のニュースにアンテナを張って、仕組みや舞台裏を知っておくことが大事なのだと思います。

カツセマサヒコ

そのために先生の講義がある、ということですね! 面白かったです。どうもありがとうございました!

おわりに

先生の話を伺っていると、「大勢の人が行く進路」はあっても、「正しい進路」はないのだなあと思わされます。

凝り固まってひとつの目標に固執するのも大切ですが、時に時代の流れを柔軟に見極めて、それに対応していく勇気も必要。そして、その柔軟さを持つ意味でも、先生の講義のように現状の社会の舞台裏を知る努力は必要なのかもしれません。

「大学で何を学ぶべきかわからない」「社会に出てから何をしていいかわからない」と悩んでいる皆さん、経営学的視点から社会を見てみると、何かヒントがあるかもしれないですよ!?

経済経営学部 経営学科の学びに興味を持った方はこちら
経済経営学部 経営学科

関連記事
先生に聞いてみた【29】 大島 博行 教授 | 京都学園大学
京學堂に関するニュース

今回お話を聞かせてもらった先生

大島博行先生

大島博行先生

香川県出身。大阪大学理学部物理学科卒業。大阪市立大学大学院創造都市研究科都市ビジネス専攻 博士前期課程修了。専門分野は、経営戦略、IT戦略。研究分野は、「ITを活用した企業改革」。担当科目は、経営戦略論、パソコン応用など。

カツセマサヒコ
カツセマサヒコ

フリーライター。1986年東京生まれ。編集プロダクション・プレスラボでのライター経験を経て、2017年4月に独立。
広告記事、取材記事、エッセイ、物語等の企画・取材・執筆を行う。
Twitterでの恋愛・妄想ツイートが10~20代前半の女性の間で話題を呼び、フォロワーは現在9万人を超える。
趣味はTwitterとスマホの充電。

あわせて読みたい カツセマサヒコさんの記事

トップページ > 京都学園大学に行ってみた > あの人がマニアックな研究に目覚めた理由Vol.8「宇宙物理少年が経営戦略の教授になったワケ」

入試に関するお問い合わせ

入学センター

Mail nyushi@kuas.ac.jp

Tel 075-406-9270

ページトップへ