お茶の味は何で変わるか? 800年の歴史を持つ“お茶”の奥深さを藤井孝夫先生に聞いてきた

お茶の味は何で変わるか? 800年の歴史を持つ“お茶”の奥深さを藤井孝夫先生に聞いてきた

行ってみた11 藤井孝夫先生

こんにちは! さえりです。

今回も京都学園大学の京都亀岡キャンパスに来ているのですが……、

たくさんのお茶とお水が…

なぜかたくさんのお茶とお水を用意してもらっています。

今回は、バイオ環境学部食農学科の藤井先生が「お茶」について教えてくれるとのこと……って、

お茶……?

(この大学の先生は、本当に独特な研究をされている方が多い……)

藤井先生

この中で、どのお茶とお水が好きですか? 飲んでみて決めていいですよ。

さえり

(お茶に詳しい先生、急に現れた!)えっ、えーっと……。お水は「いろはす」が好きで、お茶は「伊右衛門」ですかね。

藤井先生

なるほど。

さえり

(……? 何か試された?)

藤井先生

お茶の味って、何で決まっていると思いますか?

さえり

えっと……葉の種類?

藤井先生

そうですね。もちろんそれもそうなんですが、あとは製造過程や「お水」の硬度も関係しているんです。

藤井先生

お話していきますね。

さえり

はい。でも先生、お茶への愛を語り始めるその前に先生の自己紹介を。

藤井孝夫先生
藤井孝夫先生

京都府生まれ。木津川市在住。専門は、「土壌肥科学」「作物栄養学」「宇治茶生産学」。
最近はじめた趣味は、フルート演奏。以前から、親しんでいた尺八の演奏。和と洋で違いはあるが、何か通じるところがあり、案外すんなり気づいたら、フルートを手にしていた。
「日本茶インストラクター」の資格を持つ。

お茶の味は水で変わる…?

藤井先生

硬度って聞いたことがありますか? 「軟水(なんすい)」とか「硬水(こうすい)」とか。

さえり

はい、もちろんです。日本のお水は軟水(なんすい)だけど、外国に行くと水が「硬水(こうすい)」のところが多く、それゆえ日本人が飲むとお腹を下しやすい……とか聞きますよね。

藤井先生

そのとおりです。水の中にあるマグネシウムとカルシウムの量を表した数字を「硬度」というのですが、WHO(世界保健機関)は120mg/l 以上を「硬水」、以下を「軟水」としているんですね。

さえり

実際そんなに違うものですか?

藤井先生

さきほどさえりさんは「いろはす」が好きと言いましたが、水なんてほとんど同じように感じるのに「好み」がありますよね。たとえばこの6つの水をみてください。

6種類のお水
さえり

(読者のみなさん、ちょっと写真が遠いのは我慢してくださいね)

藤井先生

左から、『コントレックス』、『エビアン』、『ボルヴィック』、『いろはす』、『奥大山の天然水』、『熊野古道水』と並んでいますがこれらの硬度はこんな風です。

コントレックス 1468mg/l
エビアン 304 mg/l
ボルヴィック 60 mg/l
いろはす 40.3 mg/l
奥大山の天然水 20 mg/l
熊野古道水 10 mg/l

さえり

だいぶ違いますね。わたし正直コントレックスとかは苦手なんです。飲んだ時に、ちょっと違和感があって。できるだけ軟水を買おうと普段から心がけていますね……。

藤井先生

そうかもしれないですね。硬度が高いとちょっと刺激が強いように感じるかもしれませんね。

さえり

でも、なぜお水の話を……?

藤井先生

先ほど、お茶は「お水の硬度」によって味が変わるといったんですが、本当にお水によって変わるのか……。ちょっと実験をしてみようと思うんです。

同じお茶っ葉でも味が変わる?

藤井先生

実験と言っても簡単なので安心してくださいね。

藤井先生

まず、それぞれのお水を80度にまで熱します。

藤井先生

約80度になったら、同じお茶の葉を用意して、お茶を淹れます。同じ条件で出していきたいので、5分後にほぼ同時にお茶の葉を取り出しましょう。

〜5分後〜

藤井先生

さあ、5分経ちました。

藤井先生

ちょっと見てみてください。どうですか?

さえり

あっ。

さえり

同じ時間置いていたのに、色が違いますね!? 右から二番目のエビアンで淹れたお茶はだいぶにごっていますし、いろはすの色は濃い……。熊野古道水で淹れたものはだいぶ色が薄いですね。

藤井先生

そうなんです。色もお水次第で変わるんですね。

藤井先生

飲み比べてみましょう。まずはコントレックスで淹れたお茶を。

 

藤井先生

味が薄い。

さえり

ですね。全然お茶の味がしないです。

藤井先生

それじゃあ次は、どれでもいいですが……南アルプスの天然水を飲みましょうか。

さえり

はい。

 

 

さえり

苦っ!!!

藤井先生

本当ですね。ものすごく苦い。

さえり

その他、いろはすとボルヴィックで淹れたものは程よい苦味だけれど、天然水と熊野古道で淹れたやつはちょう苦いですね……。

さえり

すごい、こんなに違うと思わなかったです。

藤井先生

お茶の葉だけじゃなく、お水がお茶の味にだいぶ影響を及ぼすことがわかってもらえましたか?

さえり

はい。ということは、たとえば「このお茶美味しかったから買って帰ろう」とか思ったとして、そのお茶を違う水で淹れたら全然味が違う! ということになるんですか?

藤井先生

そうなんですよ。たとえば京都で買ったお茶を、フランスで淹れるとだいぶ味が違うかもしれませんね。特に硬水でお茶を淹れようとすると、お茶の味がでなくて薄いものになってしまうんです。

さえり

ふーむ。お茶の農家の方は大変ですね。自分たちが思う最高のお茶を作ったつもりでも、場所が違うと全く違う味になってしまっているかもしれないし……。お茶って奥が深いんですね……。

藤井先生

そう言って欲しくてこの実験をしたようなものです(笑)。わかってもらえて嬉しいです。

“飛び抜けた”最高のお茶を作りたい

さえり

先生はなぜお茶を研究しているんですか?

藤井先生

本来僕の専門は土壌や肥料で、どう管理すれば農作物がよりよくなるか、ということを研究しているんです。具体的な研究対象は、お茶や京野菜ですね。

藤井先生

僕の実家が、お茶を作る農家で。昔は「お茶なんて」と思っていたんですが、大人になるにつれて、やっぱり「お茶」っていいなぁと思うようになって。
そこから研究していくうちに、お茶の味には、製造行程や肥料のやり方、そして水など様々な要素が関係し合っているということがわかって、面白いなぁと思ったんです。

藤井先生

お茶ってものすごく繊細で、か弱いものなんですよね。ちょっと製造行程に不備があるだけで味や色味がすごく変わってしまうし、玉露など高級なお茶になってくると作るのがものすごく大変なんです。科学的な視点で、土壌を改良したり、肥料のやりかたを工夫するなどしてもっと作りやすく変えたりできないかなぁと思っていますね。

さえり

玉露! ちょっと話の腰を折って恐縮ですが玉露ってめちゃくちゃ高いですよね。

藤井先生

(笑)。はい、それだけ手間がかかってますから。続きは玉露と抹茶を飲みながらお話しましょうか。

さえり

(やった)

さえり

玉露も抹茶もものすごく美味しい……。ちなみにこの玉露は、おいくらですか……?

藤井先生

1キロ3万くらいですかね。

さえり

さ、さんまん……。

藤井先生

しかも、農家から買って1キロ3万なので、製品になると1桁は増えるでしょうね。

さえり

さんじゅうまん……?

藤井先生

それくらい手間がかかっていて貴重なものですからね。

さえり

お茶ってすごい……。それにしても玉露は、コクがあって……なんだろう、とても独特な味わいで。めちゃくちゃ美味しいです。

藤井先生

美味しいなら良かったです。ちょっと面白い話なんですけど、海外の人が玉露を飲むと「貝の味がする」っていうんですよ。お茶に含まれているアミノ酸が、魚介類に含まれているものと同じだからなんです。

さえり

貝の味! お茶に親しんでいないとそんな風に感じるんですね。

さえり

でも、本当に海外の人からも「お茶」って注目されていますよね。よくテレビなんかでも「お茶」を楽しみに日本にやってきた外国の方とか拝見します。

藤井先生

そうですね。一度フランスに講演に行った際も多くの人が聴きにきてくれました。フランスではセレブたちが「抹茶」を好んでいましたね。やはりだいぶ高級品ではあるので、楽しめるのも少数の人たちなのですが、抹茶茶碗を持っていたりときちんと形を揃えている人も多かったですね。

藤井先生

その他でも、どこの国でも「抹茶味」は本当によく見かけるようになりましたよね。本当にこれらは、抹茶の可能性を拡げた大発明だと思います、あれは発明でした。普通の抹茶もその美味しさには定評があるのですがであればあまりウケなかったと思うんですが、ちょっとミルクを足してちょっとお砂糖を入れて。そうするとすごく美味しくなる、というのを発見した人がいたからあれだけ流行っているんですよね。

さえり

たしかに。本格的な抹茶は渋みもあるけど、わたしたちが一般的に想像する「抹茶」は、もうあの甘いやつが基本になっていますもんね。

藤井先生

いまではその加工用に合わせた抹茶が作られているはずです。やっぱりお茶も、加工後どのように使うかでつくり方も異なってきますからね。

藤井先生

あんな風に少し変えるだけで、急に多くの人に愛されるようになるなんて面白いですよね、この先も、もっともっと違う形に改良されて広がっていくかもしれませんね。

さえり

ですね……。ってなんだかとってもほのぼのした気持ちになってきちゃいました。お茶をいただきながら取材しているせいかも。

藤井先生

あ、いいことを言いますね。じつはお茶だけに含まれているアミノ酸「テアニン」というものがあるんです。テアニンが、お茶のうまみを出しているんですが、そのテアニンが最近「緊張を緩和する効果がある」とわかってきたんです。

藤井先生

マウスとか使って実験をすると、テアニンを飲ませると喧嘩しないんですって。

さえり

そうなんですか? だからなんだかほのぼのしてきてしまったのか……。

藤井先生

そうですね。僕はお茶を飲むと人は「和む」んじゃないかなぁと思っているんです。

藤井先生

あとテアニンは「学習機能があがる」んじゃないかと、いわれるようにもなってきました。

さえり

勉強ができるようになるってことですか?

藤井先生

そうです。そういったことをもっと紐解いて、そして科学的な知見を加えて、もっと飛び抜けたお茶ができないかなと思っているんです。たとえば、テアニンがもっと出ているとか、香りが強いとか。自分の思う最高のお茶を作ってみたいんです。

さえり

素敵ですね。お茶作りは、すでに始めているんでしょうか?

藤井先生

まだ茶園作りからなのでまだまだかかりそうですが、スタートはさせていますね。

さえり

学生さんも、ここでお茶を作っているんですか?

藤井先生

作りたいと言った学生が数名いるので、活動はしていますね。さしずめ学生には、大学発のペットボトルのお茶を作らないか、と話しているんです。大学でたくさん飲まれているペットボトルのお茶を、僕たちが作るものに変えられないかなぁと。

さえり

商品開発ですね! 面白そう。

藤井先生

学生たちが好むような味で作らないといけないので、去年、どのお茶が好きかアンケートをとったんです。最初にさえりさんにも「どのお茶が好きか」聞いたのはその一環だったんですけど、

さえり

(あ、そうなのか……なにかを試されているのかと思った)

藤井先生

学生たちが一番好きなのは「綾鷹」、次が「生茶」でしたね。ああいう味が好きなんでしょう。

さえり

なるほど。学生たちが好む味に仕上げつつ、テアニンを増やしつつ、という具合に自分たちで「どんなお茶を作るか」を突き詰めていくってことですね。いつごろに完成しそうでしょうか?

藤井先生

今どんなペットボトルにするか企画案を考えてもらっているので、この秋学期前半にテイスティングをしていい味をつくっていって、秋学期で絞り込んで、どのくらいお金がかかるかなって計算して。冬ごろには、こうやったらええんちゃいまっか〜って大学に提出する予定なんです。

さえり

いいですね〜! どんな商品になるんでしょうか?

藤井先生

なにか特徴は必要ですよね。さっきテアニンが「学習効果」があるってお伝えしたじゃないですか。

藤井先生

だから僕は「学びの茶」とかいう名前にして「これ飲んだら10単位取れるんちゃうか〜」みたいな売り出し方はどうかなと思っているんですよね(笑)

さえり

(笑)。飲みたい(笑)。

さえり

じゃあ、来年くらいには飲めるかもしれない……? ですね?

藤井先生

はい、そんな風に進めていきたいと思っています。

さえり

来年取材に来る時を楽しみにしています! 今日はありがとうございました。

さいごに

藤井先生

あ、そういえば、お茶で和みすぎて大事な話を忘れていました。

藤井先生

お茶は、かなり「ビジネスチャンス」でもあるんです。

さえり

……ビジネスチャンス?

藤井先生

はい。お茶は「六次産業」と言われていて。第一産業である「生産」だけにとどまらず、それを原料として加工をしたり製品にしたり販売をしたりして第二次・第三次産業にまで踏み込むことを「六次産業化」というんですが、2010年ごろから、国が「六次産業化法」を作ったんです。
要するに、農家はこれから製造だけでなく、加工や販売・サービスなどまで行って、農林水産物の付加価値を高めて、頑張っていきましょう〜ということで。
今、国がその後押しをしているんですね。

藤井先生

でも2010年に法律ができるそのもっと前から、お茶は「六次産業」をやっていたんです。最先端だったんですよ。

藤井先生

加工する手段も、製品にする手段も長けている。さらに嗜好品なので、変わった特徴を作り出してオリジナリティの高いお茶を作ってみることだってできる。その上、海外の人からもこれだけ注目が集まっている……。

藤井先生

僕は、お茶を個人でやれば、かなりビジネスチャンスがあると思いますね。

さえり

最後にものすごく面白い話じゃないですか! これから、この大学で勉強した学生さんがちょっと変わった面白いお茶を作って、それが海外にまで進出してお茶ドリームを達成させるのも夢じゃないかもしれないですね。

さえり

お茶のお話、とっても面白かったです。ありがとうございました。

お茶を研究対象としている学校は他にもあるものの、お茶を専門にしている学校はなんと京都学園大学だけなんだとか。実際に入学してくる学生さんの中には「中学の頃からお茶を勉強したいと思っていた」というお茶エリートもいるそうです。

もちろん勉強するのはお茶だけではないのですが、ここで先生のお茶愛に触れながら勉強した学生さんたちが、いつか「めっちゃ頭が良くなるお茶」とか「すげ〜和むお茶」とかを作ってくれるようになったら面白いですよね。

未来の学生さん、がんばってください。いつか原稿が進むお茶が開発されますように。それではまたね〜!

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さえり
さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

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