「道を知ることは過去を知り未来をデザインすることなんです」バイオ環境デザイン学科・原先生に話を聞いてきた

「道を知ることは過去を知り未来をデザインすることなんです」バイオ環境デザイン学科・原先生に話を聞いてきた

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こんにちは! さえりです。

今回も京都学園大学に来ています。毎月更新されているので「あ、あの大学の記事ね」と思ってくださっている方もいるかもしれません。本シリーズは京都学園大学の様々な先生にお話を伺うシリーズです。

偉い人:鈴木さん

「今回も取材をお願いします」

さえり

「ありがとうございます!」

さえり

「次はどこの学部の先生ですか?(人文がいいな)」

偉い人:鈴木さん

「バイオ環境学部でお願いします!」

……バイオバイオバイオバイオバイオ!!

バイオ環境学部の取材ばっかやないかーーい!!!!!!!!

というのがわたしの心の声なのですが、こういったことは公に書くのはやめようと思います(書いている)。

それほどまでに京都学園大学は本当にバイオ環境学部に力を入れているのだなぁと毎回思っているのですが、今回の先生は「バイオ環境デザイン学科」で文理融合した研究に取り組まれているとのこと。

今回は「遺伝」かな「発酵」かな……。お話を伺ってきました。

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原 雄一先生

大阪府出身。博士(地球環境学)。大阪大学大学院卒業後、企業に勤務しながら京都大学大学院に社会人入学し地球環境工学を学ぶ。会社を早期退職し、バイオ環境学部の立ち上げとともに本学教授として就任。街道、峠や街中を歩き、普段、当たり前に目にしている事物や生き物、環境の状態などが、その空間に眠っている地形や地質あるいは歴史と深い関わりがあるとわかったとき、人々は衝撃を受ける、と同時に俄然と興味がわいてくる、これを学生に伝えるために日々フィールドワークに励んでいる。

さえり

簡単に言うとどういうことなのでしょうか……?

原先生

都市や地域の環境を、お医者さんが私たちの体を診断するのと同じように診断することによって、都市や地域の問題点を見つけ出していくこと。そしてその問題を解決するために環境をデザインすることが主な研究ですね。

原先生

一言でいうと私は「道」を研究しています。

さえり

道。

原先生

道です。

さえり

道。

さえり

……今日はよろしくお願いいたします。

道を知ると「街」の姿がわかってくる

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さえり

「道」を研究されているということですが……、学科としてはどんなことをしているんでしょうか?

原先生

この学部の目標のひとつとして「環境をデザインする」というのがあるんですが……、

原先生

たとえば、廃れてしまった街に人を呼び込んで、再び「活性化」しようと思った時に、どういう方法があるかを考える……などの取り組みをしていますね。学生たちと現場に行って、一緒にフィールドワークをすることが多いです。

さえり

なるほど……。

さえり

先日友人から、飛騨市が始めた廃線を利用した「レールマウンテンバイク」について教えてもらったばっかりなんですが、そういう風に廃れたものの活用方法を考えたりするのも「環境をデザインする」のうちなんでしょうか?

原先生

そうです! よく知っていましたね。

さえり

(褒められた)。

原先生

あのように景色のいい廃線を「観光」として再活用しよう、と考えるのもひとつですね。その他に、もう使われていないトンネルをワイナリーとして使っているようなところもあります。

原先生

「活性化するにはどうしたらいいか」を考えるにはまず「活性化」している状態を思い描いて、それらを街に投影していく必要があるんです。これがデザインするということですね。

さえり

なるほど……。Webデザインとか服飾デザインとかはわかりやすいですが「環境デザイン」は街や地域をデザインする、んですね。

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原先生

バブルを経て、人口は減り、高齢化が進んでいますが、当然ながら日本国が狭くなっているわけじゃなくて活気が縮小しているだけです。今まであった場所は残っているわけですよね。

原先生

そういう「廃れていく場所」は、放置しているとどんどん増えていく。鉄道の廃線は今では400箇所以上ありますし、これから10年くらいで200箇所くらい増えると思うんです。JR北海道なんか、今では半分くらいが廃線予備軍です。

原先生

その場所をどうするかを思い描いていけるというのが、この学問の一番の理想ではありますね。

さえり

なるほど。とはいえ……。

さえり

実際に活性化がうまく行っている場所もあると思いますが、そういう「廃れてしまった場所」を再び活性化させよう! というのはなかなか難しいのではないかと思う時もあります。地元を見ていると「無理なんじゃないか」とさえ思ってしまうこともあって。

原先生

そうですね。簡単ではないです。

原先生

でも、何もないところから未来だけを思い描いてもなかなかいい案はでません。過去から現在までをトレースして、そこから未来を思い描くんです。そのためにも、まずはその場所にあるものを実際に知ることが大事だと思うんです。

さえり

たしかに。知りもしないから「無理かも」と思うのかもしれない……。

原先生

廃れた里道や峠も何万もあるのですが、そういった峠は実際に歩いてみると「峠の茶屋」の痕跡があったりするんですね。あぁここは往来する人が休憩してお茶を飲む人がいたんだなぁとか、まずはそういう過去の「活性化」していた生活に思いを馳せるのが大事なんです。

原先生

そこにあるものや、そこで生活していた人のことは、教科書で学ぼうと思ってもわかりません。実際に行って、見て、そこで何か「気づく」ことが実際に「行動」するためには大事で。道を歩くことには、そういう意味があるんだと私は思っています。

原先生

場所を点で考えるのではなく、線や面で考えるようにする。これも過去から今までを知るためには大事なことですね。

さえり

そっか……。

さえり

昔、世界を自転車で旅をしている方にインタビューしたことがあるんですが、その方も「道は“生活そのもの”である」と言っていましたね。

さえり

人が暮らしている場所があって、そこから離れたところに水場がある。そうすると、その間を歩く人ができて、そこが「道」になる。

さえり

今では「道」が先にあるから気づかないけれど、道をたどることは暮らしを知ることなんだって言っていたのが印象的でした。

原先生

まさに、そういうことです。道には暮らしの痕跡がたくさん残っています。それに道を歩かなければわからないこともたくさんあるんです。

原先生

実はこの100年くらいのことってわかっていないことが多いんです。歴史や暮らしのブラックボックスになってしまっているというか。日本が近代化を推し進めた時、私たちは常に前を向いていた。そうして、当たり前すぎることを記録しなかったんですよ。

さえり

当たり前すぎることを記録しなかった?

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原先生

そうです。たとえば目の前で今バイクが通ったとして、それを「写真に記録として残そう」とは思わないでしょう。当たり前だから。それと同じで「当たり前」だった「生活の記録」がスポンと抜け落ちてしまっているのがこの100年なんです。

原先生

記録に残っていないものは、人の記憶にしか残らない。今のおじいちゃんのおとうちゃんとか、そのくらいの世代のことは聞いてみないとわからないことがたくさんあるんですね。

原先生

だから道を歩いて、「ここの生活はどうだったのかな」と疑問に思えば、それをそのあたりにいる人に聞いてみる。そういうフィールドワークが、これからの「デザイン」のためにも大事なんです。

さえり

そっかぁ。フィールドワーク、かぁ。

原先生

そうですね。さえりさんはNHKの番組の『ブラタモリ』って見たことありますか?

さえり

えっ?(急だな)

原先生

古地図を手に、実際の土地を歩いて、古くから残る歴史の痕跡を探すんです。そこをタモリさんなりの視点で、街の変化を空想したり推測したり、その街が以前どんなものだったかを考えたり……そういう番組ですね。

原先生

私たちがやっていることは、まさにブラタモリなんです。

さえり

なにそれ、一気に楽しそうな気がしてきました……。

原先生

でしょう(笑)。楽しいですよ。実際に道を歩いて場所が記憶している過去をみる。これが学生にやってほしいことですね。

原先生

そのほか、道を歩いていると都市がどうなっていくかがわかることもあります。

さえり

未来を予測するみたいなことですか?

原先生

そう。たとえば、黄色い花が咲いていたり白いサギという鳥がいたりする川は汚れてきている、とか。

さえり

!? そうなんですか?

原先生

そう。綺麗な川の底というのは微生物が泥を分解して、サラサラの砂になっていることが多いんですが、その微生物が減って泥が増えてくると、泥を好む魚が増えるんですね。

原先生

すると、その魚をとりにサギがくる、と。こういう風に、実際に見ていることで環境の変化と、この先の環境を知ることもできるんですよ。

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さえり

それが最初におっしゃっていた「環境の診断」というようなものですね。

原先生

そうです。健康診断するように「環境診断」をする。地域をどの角度から捉えるかで何を見るかは変わりますよね。問題は山積みですから。人口減もあるし、経済の低迷もあるし、環境もあるし。地域はこれからもずっと残っていくので、どうしていくかを考えなければいけない。

原先生

そこに柔軟な視点で入り込めるような学生がいたらいいなと思っていますね。

道に惹かれる人が急増している?

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原先生

道って、大昔からその場所にあるので、出来事を記憶しているはずなんです。今ここにある道は、歴史を歩んできた道なんです。

さえり

たしかに。人文学部で妖怪を研究している佐々木先生も「場所は記憶している」と言っていましたけど、それと同じですよね。

原先生

そうです。たとえば昔の偉人「坂本龍馬」は土佐から脱藩し、その道は「龍馬脱藩の道」と言われますが、実際にその道もあるんですよ。

さえり

あっ、そうか。なんか「歴史上の出来事」だと思っていたけれど、同じ日本ですもんね……。歩こうと思えば歩けるかもしれない、んですね。

原先生

西郷隆盛の敗走の道や、吉田松陰の萩往還とか、奥の細道とか。芭蕉がどこを見て「古池や〜」と詠んだのか……。そういう歴史の道を通って、追体験したいという人は増えてきているんですよ。

原先生

こういう昔ながらの道をもう一度開削しようというのは道普請(みちぶしん)といわれるのですが、そういう活動も地元亀岡の「かめおか里道トレイル」でしていますね。

さえり

たしかに「同じ道がまだある」と思うと……すごいですね……。

原先生

でしょう。歴史や彼らが行った行為は知っていても、空間がどこだったかまではわからない。それを地図上でみて、「クラウド道コモンズ」という仮想空間に入れてスマホで持ち歩けるようにしているのも私の活動の一つです。

さえり

なるほど。古地図じゃなくてスマホを片手にブラタモリできるってわけですね。今生きているこの日本で、そんな遊び方ができるなんてしらなかったです。

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さえり

それにしても……研究されている方にいうのは失礼かもしれませんが、こんなに「道」について熱く語る方って初めて見ました(笑)。先生の道への愛がすごいですね。

原先生

いえいえ、道に魅せられた人なんてたくさんいますよ。ちょっと話は逸れますが、植村直己さんという冒険家の方をご存知ですか?

原先生

彼は1984年に国民栄誉賞を受賞した冒険家で、アラスカのマッキンリー(現在、デナリ)の登頂に成功し、その下山中から一切の連絡が取れていませんが、彼は「南極横断計画の前に3000キロという道のりを自分の足で歩きたい」と、日本縦断をしたんです。

さえり

3000キロを歩く……!? 絶対嫌だな……。

原先生

(笑)。52日かかったんですけど、リュックも持たず首にタオル、腰にセーターだけ巻いて、3万5千円だけを持ってでかけたんです。

さえり

リュックも持たずに!?  普通のお出かけでもカバンくらい持ちますよ!?

原先生

ね。歩く、という行為は冒険家にとってそのくらい身軽だったんでしょうね。

原先生

それに面白いのが、ポケットには、なんと、英単語帳を入れて歩いたというんです。

さえり

え? どうして英単語帳を?

原先生

歩いてるとき暇やから。

さえり

(笑)!!

原先生

冒険をする人というのは発想が全然ちがう。なんにもなしでとにかく自分の足で歩くわけです。それに感化された何人もの人が日本縦断をしているんです。3000キロ。追体験したいって人がいるんですよね。私はそのためのルートを日本列島縦断歴史街道としてこの3月の地理学会で発表する予定です。

さえり

先生も3000キロ歩いてみるんですか? リュックなしで。

原先生

いや私は無理です。ましてや手ぶらなんて絶対無理。

原先生

タブレット端末がないと。あと充電器も。

さえり

(笑)。

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わたしたちの1%がかわると社会が変わる

さえり

最後になりますが、そういった「研究」をしているうちに先生は本当に街が活性化していくと思いますか?

原先生

うーん。街って、どういう価値観で変わると思いますか?

さえり

どうでしょう……。急に人がぶわっと増えるわけじゃないですしね。

原先生

そうです。これが意外と「文系的発想」なんですけど、結局街は人の感情で動くんです。

原先生

「いらない」という価値観の人がいれば廃れるし「いる」という人がいれば街は蘇る。人のその時々の価値観が、空間の活性化をコントロールしているんですね。

原先生

つまり誰かが、「価値がある」と気づけば、いろいろなものが蘇る、と。

さえり

なるほど。ずっと先生がおっしゃっているように「気づく」ことが、街を蘇らせたり道を蘇らせたりするわけですね。

原先生

そう。世の中を動かすのは1パーセントの人なんです。最初はたった1パーセントでもいい。だったら歩いて「価値を見つける」1パーセントに私たちがなればいいと思うんですよ。

さえり

なんだかかっこいい。

原先生

学生たちには、フィールドワークを通じて空間の新しい価値を発見してほしいですね。

さえり

本当に先生は学生自身で「気づいてもらう」ことを大事にされているんですね。

原先生

そうですね。なんでも “意欲”の中で学ばないと忘れてしまうんです。頭がよくテスト前にザーッと詰め込んで物事を覚えてやりこなす子ほど、大学卒業するころには先生の顔すら怪しい感じで卒業してしまう。

さえり

(うっ、身に覚えが)。

原先生

そんなのもったいないじゃないですか。現場に出て学ぶとか、そういう経験は大学生のうちにぜひして欲しいんです。「気づく」。そして「行動する」。そしていかに「自分が何も知らなかったか」を知って欲しいんです。

さえり

そこから新しい一歩が始まるわけですもんね。

さえり

今から学べる学生たちがうらやましくなりました……。今日はありがとうございました!

さいごに

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「道」は普段から当たり前のように私たちの足元にありますが、そこには歴史が詰まっているもの。そこにちょっと思いを馳せるだけでも何か新しい「気づき」がある。その「気づき」こそが、未来において新しい価値を作っていくものなのかもしれません。

最初は「河川」を研究していた先生が「道」に辿りつくようになり……、と研究においても柔軟な姿勢な先生は、学生さんたちの「好き」を大事にしているそう。

虫が好きな子、木が好きな子なんかが入学してくることが多いそうですが、先生のもとで「好きな事」を突き詰めて研究できたら楽しいだろうなぁ。そして好きなことを突き詰めることで社会を動かす1パーセントの人になれたら。それほど素敵なことってないですよね。

大学5年間を終えた直後から先生の名前すら忘れてしまった私のような学生に高校生のみなさんがならないことを祈って……。

それでは、またね〜!

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さえり
さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

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