植物の遺伝子組換えってなに?人の手を加えていいものなの?高瀬尚文教授にお話を聞いてきた

植物の遺伝子組換えってなに?人の手を加えていいものなの?高瀬尚文教授にお話を聞いてきた

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こんにちは! 芝生に座って和気あいあいと登場してみました、ライターのさえりです。

今回も京都学園大学京都亀岡キャンパスに来ています(過去記事はこちら)。

皆さんは、大豆を使った商品パッケージの裏によく書いてある「大豆(遺伝子組換えでない)」の表示を見たことがありますか?

なんとなく「遺伝子組換えでない」と書かれていると安心してしまうようなあの表記。でも、そもそも「どんな遺伝子組換え」なのか、果たして「遺伝子組換えでない」のは安心できることなのかも知らないまま過ごしてきたド文系女子のわたし。

今回は、植物を中心に“遺伝子組換え技術”を研究している先生にいろいろとお話を伺ってきました。

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高瀬尚文先生

1962年 千葉県船橋市生まれ。北海道大学農学部農芸化学科を卒業。同大学大学院農学研究科修士課程終了後、遺伝子(DNA)の研究の道に進むため、同大学大学院理学研究科博士課程に進学。91年「植物遺伝子の転写制御に関する研究」で博士(理学)(北海道大学)を取得。京都大学・研修員、岡崎国立共同研究機構・基礎生物学研究所・講師、日本学術振興会・特別研究員、名古屋大学・助手、奈良先端科学技術大学院大学・助手、(公財)地球環境産業技術研究機構・主任研究員を経て、現在、京都学園大学バイオ環境学部教授。前職で、植物が秘める力を再認識し、植物の力を産業に活かす楽しさ(やりがい)と出会い、現在の研究に至っている。

さえり

(な、なんかすごそう)。

さえり

今日はよろしくお願いいたします!

植物を研究することで社会や地球の役に立ちたい

さえり

バイオ環境学部の先生にお話を聞くのは3回目なんですが、みなさん本当にわたしみたいな文系女子には思いつきもしない研究をしていて面白いです。

さえり

先生はどんなことをしているんですか?

高瀬先生

大きくいえば、植物の力で「社会に貢献しよう」、「地球に貢献しよう」という取り組みをしていますね。

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さえり

(きゅ……急に大きい話だ……)

さえり

植物の力で、ですか……?

高瀬先生

そうです。植物の力ってすごいんですよ。

さえり

植物……。すごく偏見まみれな失礼なことを言いますが、植物っていうとあまり「すごい」イメージがないんです。草ポケモンが弱そうっていうイメージと一緒なんですけどね。

高瀬先生

(ポケモン?)

高瀬先生

今、わたしたちは「空気」があるおかげで生きられていますが、その空気を作っているのは「植物」です。

さえり

たしかに。あらためて考えると植物すごい。

高瀬先生

それに植物は、動物と違って太陽のエネルギーを使って生きることができるんです。そうして動物も人間も、植物を食べて命をつないでいく。

高瀬先生

生き物が生きていくには植物がないといけないんです。食料でも環境でも、根底にあるのは植物なんです。

さえり

たしかに……。そう言われるとすべての根幹は植物にありって気がしてきました。

高瀬先生

もちろん、当然「微生物」が大事とも言えるんですが……、僕は植物を研究することで人類にとって良い道が見つけられるんじゃないか、と思っています。

さえり

それで、「社会のため、地球のため」ですか……。

さえり

具体的にどんな方法があるんでしょうか?

高瀬先生

僕は「遺伝子組換え技術」を中心に扱っているんですが……、そもそもさえりさんは遺伝子ってなんだかわかりますか?

さえり

(よくわかってないけど)DNA的なことですか?

高瀬先生

そうです! DNAってなんだと思います?

さえり

(詳しくは知らん)。

高瀬先生

手始めに、ちょっと玉ねぎのDNAを取り出してみましょうか。

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高瀬先生

たまねぎをおろして、洗剤を入れて、よくかき混ぜます。塩を入れて、少し時間をおいて、エタノールを入れる、と。

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高瀬先生

すると、なにか白いモヤがでてきますよね。この白いのがDNAです。

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さえり

おぉ、これですね! こんな簡単にDNAって取り出せるんですね。

高瀬先生

そうです。DNAっていうのは遺伝子の情報が書かれているものですが、そもそもDNAっていうのは「化学物質」なんです。

高瀬先生

精神っていうのは手に持てないですよね。でもDNAは物質なので、今見たみたいに取り出せるし、触ることができるんです。ここに生き物の設計図が書かれているんですよ。

さえり

この白いモヤに書かれているのか……。そう思うと不思議……。

遺伝子(DNA)を書き換えて組換え作物を作る

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高瀬先生

DNAには、あるモノがそのあるモノであるための情報が書かれています。英語だったら26文字のアルファベットがあって、日本語なら50音がありますよね。DNAはACGTというたった4文字の組み合わせで出来ています。

さえり

(なんかそれ、昔習ったなぁ)

高瀬先生

まるで古文書みたいなんです。文字が書いてあることはわかるけれど、それが何を意味するのかを読み解くのが難しい。

高瀬先生

でも読み解いて書き換えて植物の細胞に戻すことができれば、細胞が変わり、組織が変わり、最後には植物そのものが変わっていく……これが遺伝子組換え技術なんです。

高瀬先生

病気に強い植物になったり成長の早い植物になったり。ある部分を少し書き換えるだけで、新しい設計図にしたがって植物が変化してくれるんです。

さえり

新しい能力が備わる、みたいでなんだかかっこいいですね。

高瀬先生

そうやって人が手を加えて作った作物を、遺伝子組換え作物・組換え作物と呼びます。

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さえり

ふーむ。

さえり

でも、なぜ遺伝子組換えが必要なんですか? なんのために、というか……。

高瀬先生

社会のため、地球のため、ですね。

高瀬先生

社会も地球も今までにないスピードで変化し続けていると感じませんか?

さえり

うーん、たしかにここ数年で技術が一気に進歩した、とか言いますよね。

高瀬先生

僕は、その変化に、植物の改良が追いついていないと感じています。

高瀬先生

DNA研究を通じて植物の潜在能力を引き出すことで、植物を変えていく。そうすることで、より“今の地球”に合わせた植物ができると思うんです。

さえり

なるほど……。具体的にDNAを変えるとどんな変化があるんでしょうか?

高瀬先生

わかりやすいところで言うと「効率」が変わりますよね。同じ種でも、少し早く収穫できるようにするとか。そうすると農家の人の労力が減ったり収入が倍になったりする、と。

さえり

ふーむ。たしかに、人口もどんどん増えていますし、変化に追いつくために成長のスピードを早くする、というのはなんとなく理解できます。

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さえり

でも、こんなことを聞いていいのかわからないんですが

さえり

植物に人の手を加えるのっていいことなんでしょうか?

高瀬先生

いい質問ですね。

人の手を加えるのは本当にいいこと?

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さえり

なんとなく「自然」はそのままのほうがいいって思っちゃうんです。それを食べるんだとすると、体にも悪そうな気がしてしまうというか。

高瀬先生

そうでしょうか? でもさえりさんが普段スーパーで見ている野菜、たとえばトマトとお米(イネ)なんかも、自然にできたものではなく「品種改良」つまり人の手が加わってできたものなんですよ。

さえり

ハッ。そうか……。「遺伝子組換え」だけじゃなくても人の手が加わっているものはあるんですもんね……。

高瀬先生

そうです。それに「組換え作物」は薬と同じレベルで安全性をチェックされているんですよ。

高瀬先生

とは言っても、リスクというのももちろん「無し」とは言えません。でも、そのリスクは「飛行機に乗るとき」と同じようなものなので。

さえり

絶対になにも起こらないとは言えないけど安全ですよ、ということですね。

高瀬先生

そうですね。みなさんかなり「安全性」には気を配っていますし、相当厳しくチェックされているので、体にとって害であるとは僕は思いません。

高瀬先生

それに、遺伝子組換え技術は今も進化し続けています。例えば、「ゲノム編集技術」と呼ばれる新技術では、遺伝子組換え操作の精度が格段に上がるため、現在の技術が抱える不安要因の1つが解消されることが期待できます。

さえり

よりリスクが低い組換え作物を作ることができつつあるんですね。

高瀬先生

そうなんです。

さえり

どんどん安全性も高まっているんですね。根拠もなく「体に悪いような気がする」と思い込んでいたのかもしれません。

高瀬先生

そうですね。でもさえりさんのように、「遺伝子を書き換えるなんて」という声が多いのもまた事実です。

高瀬先生

人間や自然にとってよりいい植物を作って、植物の力を借りて地球をよくしよう、というのは、僕は悪い取り組みではないと思っています。

さえり

そっか。“植物の力を借りる”という感覚、かぁ。

高瀬先生

それに「遺伝子組換え」だけじゃなくても、環境というのは人間も一緒に作っていくものだと思うんです。

高瀬先生

環境とか自然について考えたとき、さえりさんはさっき「人の手が加わるのは良くないのでは?」と言いましたよね。

高瀬先生

でも、実際は自然には「人間とのかかわり」が大事なんです。

さえり

人間とのかかわりが大事?

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高瀬先生

たとえば「焼畑農業」とか聞きますよね。森とか林っていうのは、人がかかわらず放っておくとどんどん老化してしまうんです。だから、火をつけて全部燃やしてあげる。そうすると、土に埋まった種だけが発芽して、林や森が再生されるんです。

高瀬先生

人間が手を加えないと老化し、バランスが崩れ、朽ちていく自然(環境)もある。その中には、消えゆく植物もあるんです。

さえり

人が手を加えないことで消えてしまう植物、かぁ。

高瀬先生

「マツタケ」とかもそうなんですよ。いまマツタケってほとんど食べられないんですが、昔は違ったんです。

さえり

昔はたくさん生えてたんですか?

高瀬先生

そうです。マツタケが減ったのは、人と山とのかかわりが減っちゃったからなんです。昔は資源を山の木に求めていましたよね。薪をとったり、柴狩りをしたり。そういう人の手が入ったところにマツタケは生えてたんです。

高瀬先生

それが燃料革命で、石油が資源になって木を切らなくなった。それで山と人とのかかわりが減ってしまって、今は生えなくなってしまったんだそうです。

さえり

ふーむ。なるほど。

高瀬先生

だから、マツタケの遺伝子(DNA)を解読して、もう一回マツタケを再生したいっていう動きもあるんです。

高瀬先生

マツタケのDNA(設計図)を書き換えられたら、昔ほど山に手を入れなくてもマツタケを生産できるかもしれない。すると地域も潤うし、消えていきそうだったマツタケも絶滅から救えますし……。

高瀬先生

僕もいずれ、そんな取り組みができたらとは思っています。

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さえり

じゃあ先生が人工マツタケを作れるようになれば、たくさんマツタケが食べられるようになるってことですか!?

高瀬先生

あ、いや、まぁ、でも、ハードルが高い話ですよ……。いろんなところで取り組まれていますが簡単にはできません。でも、そうですね。がんばってみたいと思っています……。

さえり

あれ、先生、急に声が小さくなってません?

高瀬先生

そんなことないですよ。頑張ります。

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さえり

人間が加えないほうがいいんじゃないかなとかおもってたんですけど、人間の手が加わることで環境が豊かになることもあるんですね。

高瀬先生

そうです。「効率」だけではなく、「自然の再生」や「環境問題」を解消する鍵になることだってあるんです。

さえり

植物の遺伝子組換えが「環境問題」を解決するってことですか?

高瀬先生

そうです。

植物の力が「地球」を救うようになる?

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高瀬先生

たとえば、タバコを石油の代わりにしようという研究を進めているんです。

さえり

えっ、タバコが石油の代わりに?

高瀬先生

はい。いま、石油で服や物などいろんなものをつくっていますよね。でも石油はどんどんなくなり続けています。。この研究が進むと、タバコから作った原料で車が走ったり、プラスチック製品や服ができたりするかもしれないんです。つまり、DNAに少し手を加えるだけで、タバコに石油にとって替わる力が備わる可能性があると。

さえり

タバコすごい!! 健康に害があるものから地球を救うかもしれないものに!!

高瀬先生

そうです。他の植物にも応用して、植物の力を借りれば、地球温暖化がストップするかもしれないし、石油がなくなっても困らない社会ができるかもしれない。

高瀬先生

いままで偉い人が唱えてきた未来のシナリオは、植物の力を使う設計になっていないんです。植物のパワーを引き出せば、いろんなことが解決できるようになるかもしれないんです。

さえり

そっかぁ。なんとなく、遺伝子組換え=人間の都合のいいように改良、ということばかりを考えてしまっていました。

さえり

でも、「人間」の都合のいいように、という意味ではなくて、人間も同じ地球上に生きる動物だと考えれば、お互いに影響を及ぼしあってよりよく生きようとするのは悪い事じゃないのかもしれませんね。

高瀬先生

そうですね。僕はそう思っています。

さえり

植物の力を信じて、引き出し、力を借りる。先生の植物への愛が伝わってきました。

さえり

今日はありがとうございました。

さいごに

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「遺伝子組換え」という言葉を聞くだけで、なんとなく底知れない恐ろしさを感じていたこともありましたが、「わからないからこそ」感じる恐怖というのがあるのかもしれません。

人間が手を加えてなんでも都合良く処理しようとしている……。意識せずともそんな風な考え方が自分の根底に眠っていたことに気づきました。

けれど先生のお話を聞きながら感じたのは「あくまで、地球のため」を考えているということ。人間がこの地球上で生きている現実は変えられません。それならば“共存”して、よりよい地球を作ろうとするのはわたしたち人間の使命なのかもしれません。

ちょっと大きな話になってしまいましたが、まだ遺伝子組換えの歴史はたったの35年。これから色々なことができるようになっていくはずです。未来の学生さんたちからそのホープとなる人たちが出てきてくれると嬉しいです。

それにしてもマツタケがもりもり食べられるようになったら嬉しいなぁ。先生、何卒よろしくお願いします!

それではみなさま、またね〜!

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さえり
さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

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