特保商品って本当に効くの?“バイオ環境学部”の矢野善久先生に身近な事を聞いてきた

特保商品って本当に効くの?
“バイオ環境学部”の矢野善久先生に身近な事を聞いてきた

突然お花畑から失礼します、ライターのさえりです。

今回は京都学園大学の京都亀岡キャンパスに来ています。わたしの隣で微笑んでいるのが、バイオ環境学部バイオサイエンス学科生物機能開発コース食品機能学研究室の矢野善久先生。

「バイオ環境学部バイオサイエンス学科生物機能開発コース食品機能学研究室」……?

……未知。

今回お話しを聞かせてくれたのは、京都学園大学の矢野善久先生。

矢野善久先生

1961年 大阪市生まれ。大阪市立大学理学部生物学科を卒業後、90年に同大学大学院理学研究科を修了。理学博士。大阪市立大学大学院医学研究科講師を経て、現在、京都学園大学バイオ環境学部教授。前職において食品によるがん予防研究に従事し、食品成分の機能性に魅せられ、現在の研究に至っている。

さえり

先生、今日はよろしくお願いします!

さえり

ですが……「バイオ環境学部バイオサイエンス学科生物機能開発コース食品機能学研究室」って聞いただけで「あぁもうわたしにはわかんない無理ぽよ下げぽよ」って思っちゃって何をきいたらいいのか……。

矢野善久先生

そもそも何をしている学科なのかさえ分かりにくいですよね(笑)。まぁまずは実験でもやって、化学に親しんでみませんか?

今回簡易的に用意してくださったのは「人工いくら」を作ろう! というもの。
色がカラフルなのは子供たちにも楽しんでもらうため。

アルギン酸ナトリウム水溶液を、塩化カルシウム水溶液の中に落とすと……

さえり

わーよくわかんないけど、固まった〜! 綺麗—! たのしいー!

矢野善久先生

よくわかんなくって、いいんですよ。まずは興味を持って欲しいんです。より多くの人に科学分野に入ってきて欲しい。最近は研究者になろうという学生も減ってきているので……。

さえり

えっ、そうなんですか?

矢野善久先生

そうなんです。このお話はまた後でしますね。

いろいろとお話をきいてみた

さえり

先ほどは実験ありがとうございました。わたしがあまりに「バイオ」にも「サイエンス」にもピンと来ていなくてすみません……。ここではどんなことを研究しているんですか?

矢野善久先生

「食品の生体調節機能」を研究しています。

さえり

(わからん)。

矢野善久先生

そもそも食品って3つの働きがあるんです。

矢野善久先生

ひとつは体をつくったり栄養を得たりする餌としての働き。「最低限生命を維持しよう」というもの。ふたつめは、味覚とか嗜好性の働き。「美味しく食べたいよね」というものです。そして最後が、生体調節機能。「食べて健康になろうよ」というものなんです。

さえり

なるほど! 先生がやっているのは「食べて健康になろうよ部門」ってことでいいですか?

矢野善久先生

そうです。食品にどんな成分があるか、そして食品のどの成分が体にどのように効くか、を分子レベルで日々研究しています。

矢野善久先生

その結果を基に、体に効くいい成分だけを濃縮したり体に悪い成分をのぞいたりして、より健康になれる食品を品種改良で作るんです。

さえり

(なんか難しくてカッコイイ)。

矢野善久先生

たとえば大豆って体にいいですけど、大豆ってじつは結構油が入っていて、思ったよりカロリーとっちゃうんです。そういうのを研究で明らかにして、開発して、食卓に届けると。

さえり

ふむ……。じゃあ先生は日々、食品の品種改良を主にしているんですか?

矢野善久先生

う〜ん……。それももちろんですが、食物のなかで体にいい未知の成分ってまだたくさんあるんですよね。そういう成分を探す研究ももちろんしていますね。

矢野善久先生

いま国は、食品の第三機能「生体調節機能」に力を入れて、体にいい食品をどんどん作りたいと動いているんです。

矢野善久先生

「特定保健用食品」、「特保(とくほ)」ってきいたことありますか? 

さえり

あっ、あります!

さえり

こういうマークのやつですよね!

矢野善久先生

そうです(笑)。わかりやすくいうと国は「特保」などで、みんなの健康を高めようと思ってるんですよね。

さえり

おぉ、なるほど! でも「特保」ってマークは良く見るんですけど……、あんまりわかっていないんです。教えてもらえますか?

矢野善久先生

もちろんです。

「特保」のことを教えてもらった

さえり

わたしの先輩(男)はコレステロール値が高くて、ダイエットしなきゃと言いながらいっつもラーメン大盛り食べていて、「先輩、ダイエットは?」って聞くと、誇らしげにお茶を見せながら「特保飲んでるから!」みたいなことを爽やかに言ってくるんですけど、

さえり

特保ってぶっちゃけ効くんですか?

矢野善久先生

あ、効きますよ。

さえり

えー! 効くんですね!!!

さえり

正直、気休め程度だろうと思ってました!

矢野善久先生

ちゃんと効くんです。医薬品と同じレベルで厳しいをテストして、だしていますし、国が保証してくれているので。

矢野善久先生

むしろ本当に効くので、必要ない人が飲むのは良くないんです。学生が特保商品をむやみに飲んでいるのをみると「きみたちには必要ないよ」と伝えているくらいです。

さえり

そんなに効くんですね……。知らなかった。じゃあ先輩にも伝えておきます。

矢野善久先生

でもあくまで、予防、ですからね!

さえり

はい(笑)。でもそんな風に普段から予防できるんだとすれば、あまり病気にならなくてよさそうですね。もっとたくさん商品が出来ればいいのに。

矢野善久先生

でも特保って、そもそも作るのに1億くらいかかるんです。

さえり

たかっ!

矢野善久先生

そうなんです。それでなかなか研究が進まなかったりもするんですよね。

矢野善久先生

それに実は下手な医薬品つくるより開発がむずかしいんです。効きすぎるものをつくってしまうと、それは医薬品になってしまって副作用とかもでてしまう。だから副作用がでないように、かつ“ちょっと効く”。これを作るのが難しいんです。

さえり

医薬品よりちょっとの効果なのに、医薬品よりずっと難しいのかぁ。特保が流行りまくればみんなスーパー健康になるのにって思ったんですがそうもいかないんですね。

矢野善久先生

はい。あとその他に問題もあって。特保マークがつけられるものは限られているんです。コレステロール値に効くとかはよく見ると思うんですが、「がんに効きます」とかは見た事ないですよね。

さえり

たしかに!

矢野善久先生

今は「がんに効く」や「免疫系に効く」みたいなものには特保はつけられないことになっています。書いてある商品には、必ずどこかに一文「あくまで個人の感想です」って書いてあるでしょう。あれは感想文をいってるだけなんです。絶対特保マークはついてないんです。

さえり

あれは個人の感想文だったのか……。

矢野善久先生

そうです。アレルギーに効く商品とか売れるし役に立つとおもっているので、かなりやってみたいんですが……、なかなか国が「うん」っていってくれないんです。本当にいつでも一定に効くかの実証がなかなかうまくいかなくて。でもそのくらい、特保に関しては国も厳しいんですよ。

さえり

厳しいけど、でもそれくらいしっかりしてるんですね。

さえり

そうだ、美容に効くみたいなやつは無いんですか? お肌にいいコラーゲンが入ってるやつとか!

矢野善久先生

コラーゲンはね、食べても効かないんですよ。

さえり

がーん。じゃあ、たまにコラーゲン鍋!とかでドカッと入れてるあのコラーゲンは……。

矢野善久先生

……。

矢野善久先生

ヒザの痛みには効くかもしれません。

さえり

ヒ…ザ……。

矢野善久先生

残念ながら、豚のコラーゲンを食べても人間のコラーゲンは増えません。

さえり

あぁ……。

矢野善久先生

こういった間違った知識が世の中にたくさん出回ってしまっているので……。イメージだけでこんなんが効きますって言うのは、ちょっと危ないなって思っているんです。国としても、そういうのを取り締まりたいということで、今は「特保」以外にも「機能性表示食品」というものも出てきてるんです。

さえり

あ、それも最近よく見かけます。でもあんまり意味はわかっていなくて……。

矢野善久先生

特保よりも基準がかなり低く参入しやすい、体にいい成分が多く入っている食品ですね。こっちは企業が判断して出しているので国は保証してくれませんが、でもかなり自由度が高いので、わたしはそっちの分野にも参入したいなぁと。

さえり

なるほど。特保じゃできないような健康支援が機能性食品ならできるってことですね。

矢野善久先生

そうです。それにそういう風に食品が作れたら、体にいいだけじゃなくて、地域貢献とかにもつながると思っていて。

さえり

地域貢献?

矢野善久先生

そうです。品種改良や栽培方法を工夫して機能成分が常に一定量含む農産物が作れるようになれば「機能性表示食品」として販売できます。すると、よく売れて農家の方とかの収入が上がる可能性がありますよね。特産になるかもしれないし、地域貢献できるんじゃないかって。もちろん簡単ではないんですけどね。

さえり

なるほど! 先生の研究がわたしたちの「健康のための食」を作っているんだと思うと……先生がやってる研究ってわたしたちの身近なことに本当に直結してるんですね。

矢野善久先生

その通りなんです。科学も含めてですが、じつはものすごく身近なんです。「バイオ環境学部バイオサイエンス学科生物機能開発コース食品機能学研究室」という名前なのでちょっと難しく感じちゃいますよね。

さえり

「バイオ環境学部バイオサイエンス学科生物機能開発コース食品機能学研究室」改め「みんなの健康を支援するために日々分子レベルと格闘している黒子たち、その名も……健康支援し隊!」とかにしたらどうでしょうか?

矢野善久先生

……。

さえり

なんでもないです

「ワイルドな研究者が増えて欲しい」

さえり

ちなみに、ここで勉強された方はどういうところに進むんですか?

矢野善久先生

それが最初の話につながってくるんですが……、ほんとは研究職についてほしいんですが、景気がいいのでみんな就職先がみつかってしまって、大学院までいってくれないんですよね。

さえり

えぇっ! こんなに研究は面白そうなのに!

矢野善久先生

そう。もちろん簡単な道ではないんですが、研究者になりたいという子がいれば今も全力で支援しているんですけどね、でも最近多くの学生が「二年後景気がいいかわからないから今就職しとく」とかいうんです。

さえり

げ、現実的だ……。

矢野善久先生

わたしもそう思います。もうちょっとワイルドになれよと思ってます。

さえり

おぉ。研究職はワイルドですか?

矢野善久先生

もちろんです。人生賭ける仕事ですから。

さえり

かっこいい。

矢野善久先生

知的興味を追っかけて、それが人のためになる。そんな面白いことってないですよ。国の方針も背中を押していますし、研究者になりたい学生がたくさん集まるといいなと思っています。

さいごに

「バイオ」「サイエンス」と聞いただけで「わたしにはわからない」と思っていましたが、実際は自分たちの生活に直結しているものでした。むしろわたしたちを影で支える存在!

今回は身近なものをということで「特保」について教えていただきましたが、先生はその他にも糖尿病やがんの予防や、花粉症などアレルギーを抑制する機能性食品の開発などさまざまな機能性食品の研究開発の取り組みをしているのだとか。

それにしても特保を作っている人たちがこんなに大変な思いをしているとは知らなかった(それどころか効果のことさえ知らなかった)。知らない世界がたくさんあるものですね。

研究者になる学生が減っているとのことでしたが、最近多くの研究者に取材で出会うたびにみんな自分の分野を活き活きと話してくださるのが印象的で……、わたしもだんだんと研究してみたくなってきました。とはいえ、簡単な道ではないのもたしか。わたしは今世では、来世で何を研究すべきかを研究しておきたいと思います。

まだまだ時間のある受験生は今世のうちに頑張ってくださいね! それではまたね〜!

関連記事

【特別コラム】田中泰延のエンタメ分党 文系もサイエンスするためのブックガイド

「命を、いただいています。」バイオ環境学部 バイオサイエンス学科 畑中沙緒理さん・猪口知夏さん

バイオサイエンス学科に興味を持った方におすすめ

バイオサイエンス学科

食品機能学研究室

さえり
さえり

書籍・Webでの編集経験を経て、現在フリーライターとして活動中。
人の心の動きを描きだすことと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。
好きなものは、雨とやわらかい言葉とあたたかな紅茶。
Twitter:@N908Sa (さえりさん) と @saeligood (さえりぐ)

あわせて読みたい さえりさんの記事

トップページ > 京都学園大学に行ってみた > 特保商品って本当に効くの?“バイオ環境学部”の矢野善久先生に身近な事を聞いてきた

入試に関するお問い合わせ

入学センター

Mail nyushi@kuas.ac.jp

Tel 075-406-9270

ページトップへ