バイオサイエンス学科│NLSPC

ことばを持たない虫たちは、一体どうやってコミュニケーションを取っているのだろうか。その答えのひとつが「フェロモン」だ。虫のフェロモンには「警報」「集合」「性」といった種類があり、虫たちは状況に応じてそれぞれを使い分け、周辺の同種の個体に情報を知らせている。例えば、葉の裏側などに寄生する害虫・グンバイムシが分泌した警報フェロモンを紙などに染み込ませ、個体が集合している場所に置くと一斉にそこから逃げ出す…
といった行動が見られる。
そうしたフェロモンが虫の体内でどのようにつくられているかを調査するのが清水伸泰准教授の研究だ。今はフェロモンの生成過程で関与するタンパク質の解明をめざしている。目印となる原子でラベルした分子を虫に食べさせて、分泌されるフェロモン分子のどこに目印が付いたかを解析。目印の位置や食べさせる分子を変えることで決定的な要因となるタンパク質を明らかにする。該当するタンパク質に作用する薬をつくることができれば、虫の行動をコントロールできるかもしれない。特に清水准教授が対象にしているコナダニを含むダニ類は貯蔵食品や農作物に発生したり、ウイルス感染やアトピー性皮膚炎の原因とも言われ、その繁殖を抑制できれば大きな社会貢献につながるだろう。
研究室では、学生たちもフェロモンに関する研究にチャレンジ。コナダニやトビムシ、またグンバイムシなどを対象に、例えばフェロモンなどの匂いを化学的に合成したり、あるいはそれを用いて虫の行動を観察したりしている。それらの研究結果はこれまでに積み上がった60~70種のダニのデータとともにアーカイブ化され、応用の機会を待っている。なかには特定の虫に対する効果が認められ、化学品メーカーが防虫剤の開発に取り組むなど、商品化につながるような結果も。「『フェロモン』という言葉はみんな知っているでしょうが、実際はまだまだ開発途上の分野」と語る清水准教授。詳しく分析が進めば、さらなる応用が期待される、非常に夢のある研究テーマだ。

  • コナダニのフェロモンの
    化学構造。
  • 体長2mmくらいの
    アカイボトビムシ。
  • 梨やりんごなどの果樹の葉
    に寄生するナシグンバイ。

バイオサイエンス学科の研究のフィールドは実験室だけではない。それが最もよくわかるのが、若村定男教授の研究だ。沖縄県の農業研究センターと共同で、長年、沖縄本島や宮古島に生息する昆虫の生態を調査を続ける。農作物への被害を防ぐため、コガネムシなどの性フェロモンを利用して繁殖を抑制し、その研究成果をまとめた学術論文は、生物系の科学雑誌にも多数掲載されている。
例えば、宮古島で取り組んでいたのはサトウキビの害虫として知られる「ケブカアカチャコガネ」の研究だ。幼虫がサトウキビの根をかじって枯らすが、地中で生活する幼虫を捕まえたり追い払ったりするのは難しいため、親である成虫の繁殖をいかに抑えられるかが鍵になる。メスのフェロモンでオスをおびき寄せて捕獲する従来の「オス除去法」では十分な効果が見込めないことがすでにわかっていたので若村教授らは、人工的に大量合成した性フェロモンを空気中に充満させ、オスが本物のメスにたどり着けないようにする「交信かく乱法」を採用した。企業との共同研究で開発した特殊なチューブを畑一帯に仕掛け、次の世代の幼虫の数をほぼゼロにまで減らすという成果を上げた。
現在は、別の昆虫を対象とした研究を本島や宮古島で進めている。主な目的は害虫防除だが、それに限らず昆虫の生態に関する新たな発見が生まれることもある。金属光沢で美しい甲虫・リュウキュウツヤハナムグリ(表紙・上図)の調査では、
オスの行動の様子から、ランがメスの性フェロモンに似た物質を出している可能性があることが分かった。この調査では研究室の学生たちも大きく貢献し、2016年に発行された学術論文には共著者として名前が掲載された。
若村教授は「1~2回生のうちに化学の実験や授業で基礎をしっかり固めて、3~4回生では卒業研究や大学院進学に向けて、時にはキャンパスを飛び出して学んでほしい」と話す。昆虫や植物の生態に興味を持っている高校生のみなさんは、ぜひバイオサイエンス学科に注目してほしい。

  • ネギの先端で性フェロモンを
    分泌するメス蛾。
  • ランの花の奥を舐める
    リュウキュウツヤハナムグリ。
  • 京都亀岡キャンパスに仕掛けた
    トラップに入ったクロコガネ。
卒業生からのメッセージ

私は大学でインスリン抵抗性改善をテーマに研究活動に取り組みました。インスリンは脾臓から分泌されるホルモンで、糖を骨格筋に吸収させる大切な役割を担っています。しかし、身体がインスリンに抵抗性を持つと、糖の取り込みが上手くできなくなり、血糖値が下がらなくなります。それは糖尿病患者にとって、大きな問題です。細胞を扱う研究は、神経を使う細かい作業の連続でしたが、自分で考え試行錯誤を繰り返す作業はやりがいのあるものでした。
現在は、大阪大学の大学院で、タンパク質が間違って折りたたまれて凝集した「アミロイド繊維」をテーマに研究することを考えています。難しい研究ですが、それが逆に魅力でもあります。大学時代のように根気強く取り組んで、納得できる成果を導き出したいと願っています。実験・研究の面白さを学習できた4年間に本当に感謝しています。

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