学科トピックス

2014年08月19日

社会調査—人々のこころを調査する—

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社会意識を調査する

社会調査とは、その名の通り、社会について調査することです。新聞社やテレビ局が定期的に行っている世論調査や、政府が行なっている意識調査はよく知られているでしょう。現在の首相の支持率は何%だとか、人々はいま自分がどの程度幸福だと感じているか(で、日本人は意外と幸福度が低い)といったニュースを目にしたことがあると思います。

社会や集団にほぼ共通してみられる意識を「社会意識」といいます。人々がどう考え、どう感じているかを調べるのに、社会調査はよく使われます。調査票(アンケート)を配って集計することもありますが、小説や映画、テレビドラマ、広告、音楽、ゲーム、SNSなどを分析することもあります。また、現地に行って、自分の目や耳を使ってデータを集めることもあります。

社会調査を役立てる

社会調査は実にさまざまな団体が行なっています。大学や研究所のような学術機関のほか、冒頭にあげたように政府やマスメディアも行ないますが、それだけではありません。都道府県や市町村などの地方公共団体は、住民が抱えている問題や意見を知る必要があります。一般企業は、たとえば、企業や商品が人々にどのように思われているかとか、今後どんな商品のニーズが高まると予想されるかとか、ある商品の人気をアップさせるにはどんな仕掛けをすればよいかといったことに関心をもつでしょう。そのようなときに、社会調査は行われます。また、他の団体から請け負って、調査を専門に行なう企業もあります。

「社会調査士」資格とは

このように多くの団体が社会調査を行なっているのですが、どんな団体が行なうにせよ、ある程度基本的な知識がないと、意味のある調査を実施することができません。社会調査の歴史をひもとくと、それは少なからず失敗の歴史でした。調査票を配布した対象者が偏っていたとか、対象者を誘導するような質問をしてしまったとか、数え上げればきりがありません。社会調査は道具ですが、どんな道具にも限界があり、どこにどんな限界があるかをふまえて使うことは避けられません。

しかし、そのような基本的な知識をふまない社会調査は21世紀になっても氾濫していました。そうした状況を改善しようと、2005年に「社会調査士」資格(下記コラム参照)が生まれました。この資格は、大学レベルで学べる社会調査の知識をもっていることを示すものです。この資格をもっていれば、基本的な調査方法や分析方法を知っていて、ある調査にどんな方法が妥当かとか、間違った方法が使われていれば、その間違いを指摘することができると考えられています。

現代社会研究のすすめ

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以上は、社会調査は社会の役に立つからお勧めしますという主旨なのですが、しかしそれ以前に、社会調査は私たちの知的好奇心を満たすものでもあります。現代社会では新しいことがどんどん起きて、それをどう解釈してよいかがわからなくなることもしばしばあります。つまり、私たちは自然に人々が何を考えているかに興味をもってしまう、そんな社会に生きています。というわけで、本格的に社会調査を勉強しなくとも、そんな現代的好奇心を満たしてくれる研究に触れてみてはどうか、ということも合わせてお勧めしたいと思います。

「社会調査士」資格

人文学部心理学科では、一般社団法人社会調査協会が認定する「社会調査士」資格を取得することができます。資格取得には、同協会が定める「標準カリキュラム」に対応する授業科目の単位を取得することが必要です。詳細は以下をご覧ください。

一般社団法人社会調査協会ホームページ

「標準カリキュラム」と人文学部心理学科対応科目(2015年度~)

標準カリキュラム 対応科目
A. 社会調査の基本的事項に関する科目 社会調査法I
B. 調査設計と実施方法に関する科目 社会調査法II
C. 基本的な資料とデータの分析に関する科目 統計分析の基礎 または 心理統計学I
D. 社会調査に必要な統計学に関する科目 統計分析の基礎 または 心理統計学II
E. 量的データ解析の方法に関する科目 心理測定法
F. 質的な分析の方法に関する科目 なし(不要)
G. 社会調査士の実習を中心とする科目 社会調査実習I および 同II

「社会調査士」資格を生かせる職業の例

  • 「マーケティングリサーチ」会社
  • 世論調査会社
  • 一般企業の調査・マーケティング部門
  • 官公庁・地方自治団体の調査・設計部門
  • 新聞社・インターネット企業など媒体社の調査部門
  • 広告会社のマーケティング部門 など

 

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岡本 裕介 教授

専門はコミュニケーション論、社会調査。担当科目は「コミュニケーション社会学」「社会調査法」など。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程単位取得退学。専門社会調査士。近著『里山のこころ――新しいつながりを生きる』(共著)。

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