里山環境研究室

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農山村地域の里山再生を目指す里山環境研究室では、里山の生物調査や薪炭の採取、さらには里山の環境をリセットする焼畑にまでチャレンジ。そう、これはまさに里山のデザイン。昆虫や植物が好む環境を再生し、人の生業と調和した生態系を再構築します。

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豊かな里山の生態系を学ぶ

雑木の伐採や落ち葉かきなどが定期的に行われてきた里山には、明るい環境を好む多様な生き物が生息してきました。しかし、農山村の過疎化などに伴い里山は放棄され、人と生き物の共存関係も崩れつつあります。この研究室では、里山をフィールドに動植物の生態や伝統的な生物資源の利用法を学び、多様な生き物と共存可能な現代の暮らしのあり方を探ります。

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教員紹介

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鈴木 玲治

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燃やすことで土壌を豊かに。縄文時代から続く伝統農法のすごさ。

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除草剤も化学肥料も使わないということで、近年注目を集めている農法があります。それが、焼畑農法。自然に密生している草木を伐採して焼き、その場所で農業を行うという方法で、ルーツは縄文時代にあるといわれています。日本では1950年代以降に衰退していきましたが、2000年代以降、全国各地で焼畑復活に向けた動きが見られるようになってきました。
畑に火を入れると草木の灰が養分になり、土のなかにあった窒素も植物が吸収しやすい形になるため、肥料を加えなくても土壌が豊かになります。土の中にある雑草の種も火入れの熱で発芽力を失うので、除草剤を撒いたり草むしりをしたりといったことも必要ありません。
里山環境研究室では、滋賀県長浜市余呉地域の里山で焼畑農業を実践しています。栽培しているのは、同地の在来の赤カブである「ヤマカブラ」。焼畑で育てた赤カブは普通の畑で育てたものに比べて歯ごたえがよく、色も鮮やかであると昔からいわれています。なぜ、焼畑のカブの方が品質がよいのか。それを科学的に解明することも里山環境研究室の研究テーマのひとつです。

循環型でカーボン・ニュートラルな焼き畑農法。

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かつて、アマゾンの熱帯雨林を燃やして農地造成を行う様子がセンセーショナルに報じられたことがありました。その影響で「焼畑=環境破壊」という誤解が一気に広まり、現在でもそう思っている人が少なくありません。
しかし、焼畑は「森に戻す」ということ前提とした農法。1~数年間作物を栽培したら土地を休ませて、再び植物が生い茂ってくるのを待ちます。資源利用から回復までのサイクルがあるため、森林を切り拓いてそのまま農業を続けていく農地造成とは、根本的に異なっているのです。
あるいは、木を燃やすことによる地球温暖化への影響を心配する声もあります。燃焼によって大気中の二酸化炭素が増えるという論理ですが、これもまた誤解です。焼畑で使う燃料は、植物が内部に蓄えていたバイオマス。植物が光合成によって大気中から取り込み、炭素化合物として体内に固定していた二酸化炭素が、燃やされることによって再び大気のなかに戻るというだけなので、化石燃料を燃やすときと違って二酸化炭素の量自体は増えていないのです。

卒業後の進路

研究室での学びを活かし、林業・農業系の企業や協同組合に就職した学生をはじめ、生物調査の実績を評価され公務員になった学生など、学生は様々な業種に就職しています。また、中学・高校の教員免許を取得し、理科教員になった学生もいます。

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研究内容

「焼畑の技術と知恵を活かした里山再生」

PICK UPで詳しく述べたように、滋賀県余呉町の焼畑に受け継がれた技術や知恵に学び,土壌学・森林環境学・作物学等の観点から、焼畑を活かした日本の中山間地域の里山再生を目指した研究を行っています。また、現在の日本では焼畑復活の動きが各地でみられ、焼畑による農業再生、森林再生、地域活性化の可能性が各地で盛んにPRされています。このような動きが一過性のブームではなく、日本の中山間地域の再生へ向けた大きな潮流となるよう、焼畑に関わる研究者・焼畑実践者らの交流と情報交換を目的とした「焼畑フォーラム」を2017年より隔年で開催しています。

「焼畑休閑地の植生回復に関する研究」

ミャンマーやラオスで焼畑が営まれる地域での聞き取り調査・植生調査と衛星画像解析を組み合わせ、過去10~20年程度の焼畑移動耕作の履歴と休閑地の植生回復の関係を解析し、休閑期の早期の植生回復を促す焼畑民の様々な伝統的技術について研究しています。

卒業研究の一例

卒業研究のテーマは、学生自身に見つけてもらうことを重視しています。好きなこと、興味のあることをとことん追求しながら、研究を通して「人間力」を磨いてください。

  • 現代の日本における焼畑の存続条件の検討 -焼畑運営形態の類型化から探る-
  • 人工針葉樹林の針広混交林化には何が必要か -広葉樹の侵入・成長過程と間伐の影響から考える-
  • 土壌中の窒素溶脱を抑制した施肥設計の検討 -有機物施用が窒素動態に及ぼす影響に着目して-
  • 湖北・余呉町のススキ草地の遷移進行はなぜ緩やかなのか -夏期の焼畑と冬季の積雪が遷移に与える影響に着目して-
  • 若者による亀岡里道トレイルの活用 -景観嗜好調査に基づくみどころマップを活かしたトレイルの普及-
  • ブドウ棚の陰を利用したミョウガ・ミツバの栽培 -日本型アグロフォレストリーの可能性の検討-
  • 焼畑における害虫防除効果の検証 -3種の害虫の被害状況からの解析-
  • 焼畑休閑地の植生回復過程の解析 -埋土種子の発芽に及ぼす火入れの影響や伐開前の植生の差異に着目して-
  • 大槻並の森林環境における地上徘徊性甲中類の環境選好性
  • 焼畑によるカブ栽培の優位性 -余呉在来カブにおける常畑との比較-
  • 大槻並の里山林における堅果の二次散布に野ネズミが果たす役割
  • 滋賀県余呉町における焼畑土壌の火入れ前後の土壌特性値の変化とその要因
  • トラップカメラを用いたバイオ環境園におけるニホンジカの時間帯別の環境利用分析
  • ウッドロケットストーブ利用の有用性の樹種間比較と放置林活用の可能性

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