動物 ~動物が好きだから学びたい~

野生動物の暮らしを観察して生態・行動の謎を解く

~カワウソの住む村~

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大西 信弘 教授

東南アジアには、4種のカワウソが分布しています。以前は、広い範囲に生息していたようですが、他の野生動植物と同様、生息地が減り、個体数も減少しています。昨年、ワシントン条約(CITES)で、コツメカワウソとビロードカワウソの商業取引が禁止されたのもそのためです。ビロードカワウソは、ミャンマーにも分布しています。調査している地域では、マングローブ帯から、島の周りにサンゴのあるような環境まで分布しています。

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ビロードカワウソ

急に近づいたりすると、警戒されますが、他の野生動物と同じように、距離をとっていれば、餌をとったり、マーキングしたり、その行動を観察することができます。最近は、体の特徴に注目して、誰と群れを作るのかなど個々の個体別の行動について調査を進めています。簡単には姿を見ることができないカワウソですが、村人によれば、以前は、カワウソの群れが村に遊びに来て、人にちょっかいを出したりしていたそうです。ビロードカワウソの生態がもっと明らかになっていけば、身近な自然環境の野生動物たちを絶滅に追いやることなく、人が暮らしていくヒントが見つかるかもしれません。

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バイオ環境デザイン学科の保全生態学研究室ホームページ

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~昆虫のここがおもしろい!~

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大秦 正揚 講師

水辺を主体に生きる生き物たちと対照的に、昆虫は主に陸上で栄華を極め、地球上の生物種の半分をも占めるといわれる約 100 万種という膨大な種の多様性を示している。すなわち、昆虫は陸上の様々な環境に実にユニークな適応をしていることになる。したがって、それぞれの種特有の多様な生き方を観察し明らかにすること自体、大変に面白いことである。一方、それら多様な生き方に働いている共通のメカニズムを明らかにするのもまた実に面白いことであるといえるだろう。たとえば、植物を餌として食べるチョウなどの植食性昆虫について見てみよう。

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シジミチョウの産卵

これらのほとんどの種は、個別の限られた特定の植物だけを食べており、近縁な種であっても同じ植物を利用しないことが普通だ。この植食性昆虫の“餌の食い分け”や“住み分け”をもたらしているのは実は他の種に間違って求愛することなのだということが分かってきた!昆虫は求愛や繁殖を効率よく行うために化学物質であるフェロモンなど様々なシグナルを利用しているにもかかわらずにだ!!昆虫で明らかになってきた“求愛の間違い”の重要性はいまや他の生物の分布様式や形態に関する知見にも影響を与え始めているぞ!!!

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~水田に暮らす動物たち~

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大西 信弘 教授

身近な生物について、もう少し考えてみましょう。水田は、私達にとって最も身近な自然環境なのではないでしょうか。畦にカエルがいたり、水田にオタマジャクシが泳いでいたりというのは、誰もが知っている身近な自然といえるでしょう。東南アジアや南アジアの水田地帯では、今でも水田で漁労活動が盛んに行われています。水田や水路で獲った魚が、市場で売られているのです。農家の人たちが稲を作るために維持している水田で、売るほどの魚が獲れるというのは、ちょっと驚きかもしれませんが、東南アジアや南アジアでは、ごく普通のことなのです。これらの魚たちは水田に迷い込んできたわけではなく、水田のような季節的に水がたまる環境を産卵場所や未成熟な個体の生息場所として利用していることがわかります。さらに、これら魚やカエルを餌とする鳥たちも水田にやってきます。コウノトリ類・トキ類・サギ類・ツル類の重要な生息場所となっています。アジアには、日本の約 2.3 倍もの面積の水田があります。水田をうまく利用すれば、水田で食糧生産しながら、野生動物の生息場所も保全することができるのではないでしょうか。

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村で売られている魚

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水田で餌を採るブロンズトキ

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有機化学の視点で昆虫の機能の解明へ!

~虫の発する「におい」を使って天然の医薬品・農薬を開発~

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清水 伸泰 教授

虫がフェロモンと呼ばれる「におい」を出してお互いにコミュニケーションをとっていることはよく知られています。それでは、そのにおいの正体は何でしょう?答えは有機化合物です。眼には見えないのでなかなか信じられないかもしれませんが、確かに虫は自分自身が作った物質を体外に分泌して、生存や繁殖に役立てています。そのような微量で揮発性の有機化合物は専用の分析機器(ガスクロマトグラフ質量分析計:GC-MS)を使用すれば可視化することができます。

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アワダチソウグンバイの性フェロモンの化学構造
(オスの交尾行動を活発化)

実は研究対象にしている生き物は厳密には昆虫だけではないので、ここではあえて虫と呼んでいます。天然物化学的に興味深いにおいを発するダニ、グンバイムシ(カメムシの仲間)、トビムシ、ワラジムシ(ダンゴムシの仲間)などに注目しています。虫が体外に出すにおいは、フェロモンだけではありません。捕食者などに襲われそうになると、防御物質という相手の嫌がるにおいを出すことがあります。この微量で効果絶大な防御物質を利用して殺虫剤や忌避剤、抗菌剤などを開発したいと考えています。さらにそのにおいの我々人間に対する薬理的効果についても探求し始めています。

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バイオサイエンス学科の生物有機化学研究室ホームページ

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