京町家「新柳居」連続セミナー・お茶を楽しみ科学する[第1回 ]宇治茶の魅力〜味と香りのイノベーション〜 を開催しました。

2018年04月27日トピックス

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京都学園大学京町家「新柳居」では連続セミナー「お茶を楽しみ科学する」が開講しました。全6回にわたる連続セミナーの初回が行われたのは、京都で宇治茶シーズンの到来(萌芽宣言)が告げられて約2週間経った2018年4月21日(土)。一般の参加者をはじめ学生、製茶業界の方々も集まって会場は盛況となり、和やかな雰囲気で始まりました。

第1回の講師は、本学バイオ環境学部の教授で、日本茶インストラクターの藤井孝夫先生です。“宇治茶の魅力 〜味と香りのイノベーション”と題する講演で、今日のおいしいお茶ができるまでに味や香りを変化させ、ブラッシュアップしてきた宇治茶800年の歴史をお話しいただきました。

初回ということで本題に入る前、冒頭で藤井先生からお茶の基礎知識である植物としての“チャ”、茶の種類、発祥地や伝搬、生産統計・推移について説明がありました。さまざまなお茶の種類が紹介されるなか、参加者の皆さんはお皿に入った茶葉を実際に手にとり、茶葉の手ざわりや醗酵茶の独特の臭いを確かめていました。

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この日のテーマ“日本茶のイノベーション”について藤井先生は、生産者が技術を積み上げてきたことでうま味のある抹茶が生まれてきたと説明。
まず、鎌倉時代初期に伝来した抹茶(当時の抹茶は現在の粉茶に近い)が薬として飲まれていたのではないという考察を聞きながら、配られた粉茶を味わった参加者の皆さん。その渋く苦い味わいに顔をしかめる様子も見られました。宇治抹茶が発明されたのは室町時代の中頃とされていますが、じつはもう100年ほど遡る説もあるそうです。

ここで給仕を務める本学の学生からお湯と抹茶が配られると、会場に準備されていた茶筅を使って参加者それぞれ実際に自分たちで点てたお抹茶を味わいました。

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おいしいお茶の一服をはさみ、講義はその後の江戸時代へと続きます。抹茶の品質向上に寄与した人物として、高瀬川開削により宇治・枚方方面に水運を拓いた角倉了以が挙げられ、この水運で肥料となるし尿が運ばれていたこと、抹茶の旨味と窒素施与量についての研究、江戸時代に刊行された『本朝食鑑』などが紹介されました。
さらに宇治田原で蒸製煎茶製法を発明した永谷宗円、玉露の創製として旨みの強い“淹れ茶(いれちゃ)”を登場させた山本嘉兵衛ら(諸説あり)も登場。昭和25年には元京都府茶業研究所の酒戸弥二郎により茶の旨味成分「テアニン」が発見されていますが、現代ではこのテアニンの作用でリラクゼーション・学習効果が上がるという研究結果もあるそうです。

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宇治茶イノベーションの長い歴史の中から高瀬川開削による物流促進に触れ、宇治抹茶のブラッシュアップには「肥料革命」があったというお話しでこの日の講義が締めくくられると、最後は参加者の皆さんから藤井先生への質問タイム。テアニンや窒素肥料の話、本学のお茶づくりに関わる活動まで、さまざまな質問が寄せられました。

本セミナーは以降も各分野の講師を迎え、お茶の味わいや人気の抹茶スイーツ、茶葉の栄養にまつわるお話も聞くことができる多彩な内容となっています。

次回、5月12日(土)は、宇治市へ足を伸ばして茶園や製茶工場を見学するフィールドツアーを開催予定です。

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