京町家「新柳居」連続セミナー・お茶を楽しみ科学する[第2回]宇治の茶園と製茶工場の見学 を開催しました。

2018年05月21日トピックス

京都学園大学京町家「新柳居」で行われている連続セミナー「お茶を楽しみ科学する」の第2回はフィールドツアーを開催。2018年5月12日(土)いつもの京町家から宇治へと足を伸ばして、茶園や製茶工場を見学しました。

晴天に恵まれた爽やかな空の下、集まった参加者の皆さんと近鉄小倉駅をスタート。本セミナーを企画する藤井孝夫先生(本学バイオ環境学部教授)の先導で、駅から歩いて向かった最初の目的地は、山政小山園の荒茶製造工場です。この工場では碾茶(抹茶の原料で、茶葉を揉まずに乾燥させたもの)が製造されていて、今回の見学ツアーを案内して下さる小山政吾社長が迎えてくださいました。
まず小山社長からお茶ができるまでの製造工程について説明を受けた皆さんは、スリッパにはきかえ、防塵帽子をかぶって工場内を見学します。ちょうど茶葉の収穫が始まったばかりの時期で、碾茶製造工場は繁忙期。ずらりと並ぶ生葉コンテナの中には冷風が循環し、摘んだばかりの茶葉が保管されていて、庫内は新芽の清々しい香りが充満していました。奥に進んで行くと、茶蒸・風冷・撒茶機から乾燥炉へ、さらに切断風送・仕上げ乾燥機へ茶葉が送られる様子を見学することができます。機械が稼働しているため蒸気や乾燥炉の熱さで工場内はすごい熱気でしたが皆さん、生葉が風で吹き上げられる様子を見上げたり、乾燥炉を通って出てきた茶葉を実際に触ってみたりと、それぞれの工程を興味深く見入っていました。

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碾茶製造工場を後にした一行は、小山社長の案内でお茶問屋が点在する小倉の旧道を進み、次の目的地となる茶園へ。訪れた丸利吉田銘茶園でも、たくさんの職人さんによって茶葉の選別などが行われていました。
ここでは玉露製造工場を見学させていただき、隣接する茶畑で茶摘みを体験しました。「新芽の部分だけを摘み取ってください」とレクチャーを受け、ひとつひとつ手で感触を確かめながら柔らかい新芽を選んで摘んでいきます。「露天園」と呼ばれる覆いのない茶畑では煎茶の原料が作られますが、こちらのように覆いがかけられた「覆下園」と呼ばれる茶園では渋みが少なく旨みを多く蓄えた玉露用の茶葉が栽培されています。覆いの下は直射日光が当たらないため涼しく快適。心地よい風にのって茶葉の爽やかな香りも楽しみました。摘み取った生葉をお土産にいただいた皆さんは「今晩、この新芽を天ぷらにして食べよう」「生のままお醤油で食べてもおいしい」と楽しみに持ち帰っていました。
茶摘みを体験した皆さんはさらに旧道を歩き、途中、この辺りの氏神様として親しまれている巨椋神社に立ち寄って休憩。境内の横には「玉露製茶発祥之碑」が建てられていて、毎年10月1日には茶業関係者が集まって「小倉茶祭」が開催されるそうです。

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いよいよツアーは終盤。訪れたのは、主に玉露・抹茶の製造が行われている山政小山園の精選・抹茶工場で、冒頭に見学した荒茶製造の次の工程となる、荒茶が抹茶になるまでを見学します。いったん教室に集まって、製茶の歴史や工程がまとめられたDVDを鑑賞しながらお抹茶とお菓子の接待を受けました。先ほど見学した茶園についておさらいし、これから見学する精選→再乾燥→合組(ブレンド)→抹茶になるまでの流れや、静電気を利用した技術で古い葉や藁くずが除去されていること、拝見場での品質チェック、また茶葉は粉末になると飛散・吸湿しやすいことからできるだけ抹茶になる前の葉っぱの状態で扱わなければならないことなども小山社長から詳しく説明いただきました。
おいしいお抹茶で一息つきながら勉強した皆さんは、再び防塵帽子をかぶって工場内へ。たくさんの巨大な機械が稼働する精選工場の中を進み、2階へ上がると精選された茶葉が大きなベルトコンベアで仕上げ乾燥の工程へと運ばれていました。こうしてできた碾茶を熟成させるための冷蔵庫も巨大で、冷蔵庫の出口付近にある穴は階下の合組機(ブレンドする機械)に落とされる仕組みになっていました。さまざまな技術が用いられ、工夫が凝らされた一連の工程をじっくり見学した後は、最後に別棟の抹茶工場へ移ります。
見学前のお話にもあったように、抹茶は飛散・吸湿が大敵なため、碾く工程はクリーン化工場で行われています。エアシャワーを浴びて入ったのは、何百台もの石臼が自動で回り続ける抹茶室。間近で見ると、機械に設置された上下の石臼の間から極めて細かい抹茶が摺られて少しずつ出てきているのが分かります。

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見学の後にも新茶の煎茶をいただいて一服。最後にフィールドツアーの締めくくりとなる質問タイムが設けられ、帰りにお土産の抹茶製品もいただきました。この日に見学したことを振り返りながら、小山社長から製茶に掛かるコストやスイーツに使われる加工用抹茶について、除去された茎の使い道など、さまざまな話を聞いた皆さんは、さらにお茶への興味を深めている様子でした。

次回、「お茶を楽しみ科学する」第3回は、5月26日(土)14時より京町家にて開催予定です。

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