「応用微生物学B」~特別講義「ビフィズス菌とヒトの共生の分子基盤」京都大学大学院生命科学研究科 片山高嶺 教授

2018年11月23日トピックス

「応用微生物学B」~特別講義「ビフィズス菌とヒトの共生の分子基盤」

京都大学大学院生命科学研究科 片山高嶺 教授

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「応用微生物学B」は、バイオ環境学部バイオサイエンス学科3年生に開講されている科目で、微生物機能を産業に活用した技術を取り扱う「産業微生物学」を題材に講義を行っています。微生物機能を活用する「ものづくり」は、先人達による実学分野での数多くの輝かしい独創的な研究成果から生まれた技術であり、世界からも評価されている分野です。本講義では、日本の伝統的な微生物を活用した「ものづくり」の技術を学び、その価値を認識するとともに、近年注目されている応用微生物学の新分野の現状を学ぶことを目的としています。

今回、応用微生物学分野の最前線として、「腸内細菌」について学ぶ機会を持ちたいと思い、特別講義を企画しました。本特別講義は、「腸内細菌」研究の第一線でご活躍中の京都大学大学院生命科学研究科、片山高嶺教授に「ビフィズス菌とヒトの共生の分子基盤」と題してご講演して頂きました。

まず、片山先生のご研究のお話をされる前に、「腸内細菌の簡単な歴史と研究の紹介」として、腸内細菌研究を発展させた転機になった技術、「無菌動物」作成技術や、その技術を使って分かった「腸内細菌と宿主に関する研究」について解説して下さいました。特に、腸内細菌がマウスの脳神経の発達に影響を与えている研究について、ビデオを使って分かりやすくお話して下さいました。 

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次に、「ビフィズス菌と母乳オリゴ糖」をテーマに、片山先生ご自身の研究のお話をして下さいました。赤ちゃんは、母乳を飲み始めると、ビフィズス菌が急激に増殖し、腸内細菌の約90%を占めるようになります(ビフィズスフローラ形成)。母乳オリゴ糖とは、母乳中に含まれる複雑な構造をした糖鎖のことで、赤ちゃんの栄養にはならないのにも関わらず、豊富に含まれています。先生のご研究ではじめて、母乳オリゴ糖がビフィズスフローラ形成の原因の一端であることが明らかになりました。この解明に至るプロセスについて、実験結果を踏まえながら、丁寧に解説して頂きました。また、母乳オリゴ糖の産業利用として粉ミルクに関する最近の動向についてお話して下さいました。

最後に、「ビフィズスフローラ形成の生理的意義」について、片山先生ご自身の見解を現在の研究結果を踏まえてお話して下さって講演が終わりました。

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本特別講義を受けて、学生さんからは、腸内細菌が宿主(今回はマウス)の行動を変えるほどの影響があることに驚きがあがりました。また、お母さんが母乳オリゴ糖を作ってビフィズス菌を育てているという研究成果を聞いて、母乳の持つ力にすごさを感じるとともに、ヒトとビフィズス菌の共生にも興味を持ってもらえたみたいです。また、母乳オリゴ糖を利用した粉ミルクの開発に期待する声も上がりました。同時に、研究成果を産業に結びつけるには、特許など国際的な視点が重要であることにも気付いたみたいです。

本特別講義は、研究だけにとどまらず、女性の社会進出で注目が集まっている母乳育児についても考えさせる内容でもあったと思います。

(バイオ環境学部 バイオサイエンス学科 櫻間 晴子)

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