京町家新柳居市民講座「もう1つの「京都」」の第1回目「外国人に「京都」を伝える」を開催しました。

2018年12月26日トピックス

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「もう1つの「京都」~観光ガイドや教科書には載っていない「京都」巡り~」と題して、3回にわたって各回違った視点から市民の皆様とともに考える、本学 人文学部の先生方による京町家新柳居市民講座が、2018年12月8日(土)、京町家新柳居で開講されました。

第1回目のテーマは、本学 人文学部心理学科 スティーブン・リッチモンド准教授による「外国人に「京都」を伝える」です。年々、ますます増え続けている外国人観光客に、フリーペーパーや実践型講義を通じて「京都」を発信してきた経験について話されました。

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まず前提となる、京都へ訪れた海外からの観光客の現況ですが、外国人宿泊数は、3年続けて300万人を突破、前年比10.8%増の過去最高の353万人が訪れています。また、京都に在住している外国籍の方が約43,000人(京都の人口の4%)であることが示されました。
今回は、そうした外国人に何を伝えたらよいのかというのが、主なテーマです。

その前に、これまで京都の魅力を世界に伝えられてきた方々を紹介しました。古都の尊さを訴えて歴史を変えたと言われるヘンリー・スティムソン、戦後京都に滞在し映画によってその美しさを広めたマーロン・ブランド、貴重な文化の保存を訴えたアートや建築の研究者アレックス・カーなど幾人かの先人たちの業績について画像を交えて語りました。

さて、ここからは、リッチモンド先生の実際の経験(日本在住18年)に基づいた興味深い話です。京都の魅力を英語で外国人を対象に伝えることを想定した「英語フィールドワーク京都」の実習では、学生たちにただ言葉だけではなく、五感で感じる京都を掘り下げてセレクトしていくことを提案しました。
例えば、「視覚」で捉え直した京都の風景、祭りの音などを捉えた「聴覚」、八つ橋を実際に作ることの体験を通した「味覚」、お香体験をレポートする「臭覚」、友禅を染める「触覚」と、これまでの既存の情報に頼る方法ではない、新たな発見がそこで得られたようです。

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次に、リッチモンド先生が編集に関わっている、京都を訪れる人に向けて英語で京都の情報を紹介する情報誌『ENJOY KYOTO』の話です。2013年の創刊後、現在32号まで隔月発行され、京都の各所で3万部が無料配布されています。一冊あたり約2か月にわたる編集作業を経て、これまで「辛い京都」「京の一生もの」「考古学」「祇園祭」「京都乙女ウオーク」などといったテーマが特集され取り上げられています。一般書店に並んでいる日本人向けの旅行ガイドブックとひと味違った切り口です。
編集コンセプトは「京都の魅力を新たな形で伝える」「京都を第二の故郷と思ってもらう」など、ここでしか得られない情報発信に心がけていると言います。

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リッチモンド先生は、こうした経験を通して、どのようなことを学んだかを語りました。まず大きな要素となるのが、言葉の違いです。ただ、文法や文脈など翻訳することの難しさというだけでなく、その背景にある生活文化や慣習の違いなどが関わっています。例えば、日本の厳しい年功序列、弟子入り制度などは、あらかじめ説明が必要な概要です。また、文章の書き方においては「起承転結」なども、英語に訳しづらいこともあると言います。ただ、こうした「差や違い」に敏感に対応していくのは当然のこととして、先生は、むしろ「共通点」を積極的に見出していくことも肝心であると述べました。

こうした様々な経験に根差した話を経て、今回のテーマである「京都をどのように伝えればよいのでしょうか」と、提言しました。ただありのままに、素直に、ストレートに京都の魅力を語ればいい。確かにそうかもしれませんが、そこにはいくつもの課題や方法があることが、よくわかってきました。
最後に、その一例として、京都観光で特に気をつけたいマナーをどのように海外から訪れた観光客に伝えるかといったことが語られました。

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京都がこれからもさらに魅力的な観光都市になっていくために、海外から訪れる方々に私たちがどう接し、どう語りかけていけばよいかを深く考える大切なきっかけになりました。

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