京町家新柳居市民講座「もう1つの「京都」」の第3回目「映像の中の「京都」」を開催しました。

2019年01月10日トピックス

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「もう1つの「京都」〜 観光ガイドや教科書には載っていない「京都」巡り〜」と題して、3回にわたって各回違った視点から市民の皆様とともに考える、本学 人文学部の先生方による京町家新柳居市民講座の第3回目が、2018年12月21日(金)、京町家新柳居で開講されました。

第3回目のテーマは、本学 人文学部歴史文化学科 関口久雄准教授による「映像の中の「京都」」です。

京都は、これまで映画やドラマ、ドキュメンタリーなど、数々の映像作品を通して様々なカタチで描かれてきました。それらは、ほとんどがここ京都に住む人たちの「内なる眼」ではなく「外からの眼」であったかもしれません。
ただそれだからこそ、京都の人たちが、ふだん気づくことのない、京都の本当の姿、また今こそ見つめ直す必要のある大切な課題がそこに映し出されているとも言えます。
1993年のCM「そうだ、京都行こう。」から、現在まで30篇の映像をたどりながら見つめ考える、「もう1つの「京都」」。まさに見るだけでも興味深く、楽しい講座が始まりました。

まずは、25年前の「そうだ、京都行こう。」のCMから映像がスタートしました。そして映画「舞妓Haaaan!!!」「日本沈没」や「ゴジラvsメカゴジラ」、また「ブラタモリ」などが紹介されました。ドラマの中の修学旅行のシーンも登場しました。日本のシンボルとしての京都です。確かに、様々な日本文化の象徴的な物や事が、ここに集約されているかのように映像ではとらえられています。

次に映し出されたのは、京都の今という現実です。例えば、海外からの観光客に聞いた「京都の魅力ランキング」では、1位が嵐山と竹林、2位が伏見稲荷大社ですが、3位にラーメンが入っていました。日本文化の象徴とは、かけ離れています。また、ギョウザの消費量の調査では、宇都宮市や浜松市などの有名地に並んで京都市が第3位になっているのです。意外なのは、パンの消費量で全国一となっています。
続いて、「秘密のケンミンSHOW」で幾分強調されて紹介された京都人の”ホンネ”が映し出されました。世間でよく言われている、どちらかと言えば、皮肉めいて語られる京都のもう1つの姿が、他府県の人たちによって語られています。映像は、ユーモアいっぱい。講座に参加された皆さんからも、笑い声が頻発していました。

一方で、もう1つの現実として祗園で舞妓の修業生活をとらえたドキュメント映像が映し出されました。それは、厳しいしきたりや慣習に支えられた伝統文化の継承という現実です。
また、フィクションとして1953年の映画作品「衹園囃子」のいくつかの場面も紹介されました。これこそまさに、内から見る京都と外から見る京都の違いなのかもしれません。

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続いて、少し趣を変えて京都をとらえた作品として実相寺昭雄監督のテレビドラマ「怪奇大作戦」シリーズの中の一篇「京都買います」が上映されました。怪奇SF仕立ての奇妙な話ですが、あるトリックを使って“京都をわが物にしたい”と目論む女性が登場します。ここで描かれているのは、失われていく京都の文化をどう守るかというテーマであったようにも見ることができます。唐突に見えて、ある意味で現在に通じる切実な投げかけとも言えるのです。

最後は、現在京都に暮らす学生たちに焦点を当てたドキュメント映像です。たとえば、様々な理由から排除や撤去が求められている学生寮やタテカンなどの問題です。京都は、学生の町とも形容されます。彼らが今、守ろうとしているものとは何か。また失われつつあるものとは何かを考えさせられます。

さて、30篇の映像が次々に映し出されて、そこにどんな「もう1つの「京都」」が浮き上がってきたでしょうか。講座に参加された皆さんにとってその思いは、それぞれでしょう。ただ、何かそこには“かけがえのない大事なもの”という核心があり、それを何とかして未来へ残していきたいという切実な願いが湧きあがってきました。

この思いは、きっと映像を通じて心の中に、より直接的に入ってきたある種の力であったようにも感じられました。

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