【バイオ環境学部ニュース】好きなこと、トコトン! 里山学実習

2019年10月04日トピックス

里山学実習は、バイオ環境デザイン学科の3年生以上を対象に、京都府立林業大学校の上萩寛先生を講師にお招きし、京都亀岡キャンパスの地元、寺生産森林組合の協力を得て行なわれている専門科目です。

里山学実習を履修した学生の中には、将来、林業関係を目指したいと一念発起する学生もおり、バイオ環境デザイン学科の特徴あるカリキュラムの一つになっています。

ここでは、2019年4月から8月の春学期に行われた講義「里山学実習」をレポートします。

半世紀前まで日本において里山は、農山村の生活や生業が依存する重要な場所でした。ここでは人と自然が共存することで、豊かな環境の維持に貢献してきました。

しかし近年、燃料が薪から化石燃料に転換したなど、木々を利用する機会が激減したことによってその存在価値が失われ、林業の低迷、病害虫の被害拡大を引き起こし、里山の荒廃が急速に進みつつあります。

本学バイオ環境学部バイオ環境デザイン学科では、里山の持つ価値を見直し、その価値を現代に生かすきっかけとするため、亀岡市の寺生産森林組合の協力のもと、マツタケ山再生を10年余にわたって実施してきました。

さらに近年では、針葉樹の間伐や竹林整備にも着手し、里山の整備を行っています。

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2019年の実習は、里山を、高級食材とされているマツタケが生える環境にするため、アカマツ以外の木の伐採や、地掻きといった作業を行うことから始まりました。

昨年の台風により山内では倒木の被害も出ており、今年度は倒木した木の対処に関しても学べる年となりました。巨大な木々が見事に倒されており、自然への畏怖感を覚えた学生もいたようです。

マツタケ山再生を開始した頃にはほとんど消えてしまっていたアカマツでしたが、苗から育てることにより、現在では5~6年生のアカマツ林として繁茂してきました。

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針葉樹林帯では20 mを超える高さのヒノキの間伐方法を学びます。安全面に配慮しながら間伐作業はすべてノコギリを使って手作業で行いました。

思いのほか切れないことに驚く学生や、疲れ切ってしまう学生もいましたが、一人ずつ交代しながら作業を進めました。

苦労して切ったヒノキは、倒す方角がほんの少しずれただけで隣の木に引っかかってしまいます。

引っかかってしまった木に、ロープをかけて大人数で引っ張り、倒しきるという作業も経験しました。学生達は作業による疲労感とともに、倒し切った達成感を感じている様子でした。

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達成感を感じたのも束の間、まだまだ作業は終わりません。

ヒノキを実際に使用しやすいようにするため、枝を落とし、玉切りといわれる切り分け作業と集積を行ってようやく間伐作業を完了しました。

人力だけではなかなか切り倒せないことを体験した後、実際の里山の管理手法の一つとして、担当教員によるチェーンソーを用いた切り倒し方のデモンストレーションを見学しました。

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京都亀岡キャンパス内の竹林では、竹林の整備と竹炭作りなどを行いました。

枯死した竹を優先的に伐採し、1 m程度の長さに切り分け、無煙炭化器という装置を用いて炭焼きを行いました。

できた竹炭は食農学科藤井康代教授が携わっているカーボンマイナスプロジェクト※1で活用されています。

こうした作業により、竹林はすっきりと歩きやすく、タケノコ堀のしやすい竹林になってきました。

実際に学生たちはタケノコ堀を体験しておいしく山の恵みをいただきました。

山の中で巨大な木を倒したり、自分で切った竹で炭を作ってみたり…普段、通学の電車から山を見たり、竹林を見ることはあっても、その中に一歩入りこむ、ましてや作業を行うことなど、ほとんど経験が無いのではないでしょうか。

今年度の里山学実習では、里山という、長い時間をかけて人が守ってきた自然と接することで、生物多様性や自分たちが享受している自然の恵みについて、その価値を改めて実感し、里山を管理する実質的な技術だけでなく、環境リテラシーも育むことができたように思います。

※1カーボンマイナスプロジェクトとは… 亀岡市・立命館大学・龍谷大学との共同プロジェクトの一つ。本プロジェクトでは、農業に炭を使用することで、二酸化炭素の削減を図るとともに、そこに付加価値をつけて農山村振興を目指しています。

(バイオ環境学部 実験事務室 宇野洋平、教務センター 藤原 幹)

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