バイオサイエンス学科では、1年生から実験科目がスタート。2年生で本格的な専門実験に取り組み始め、専門実験を修得後に配属先の研究室での実験の日々。実験三昧の4年間を送れるのがバイオサイエンス学科の特徴です。
3年生の専門実験は週4日。これを1年間続け、バイオサイエンス領域の基礎的な実験手法や機器操作などのスキル、データ処理方法を習得します。この専門実験は、応用微生物学、分子生物学、食品・栄養科学、有機化学、植物バイオの5つの分野から構成されています。今回は、有機化学実験の紹介をしましょう。
有機化学実験では、有機化学物質を実際に合成、分離精製することを通じて、基礎的な実験技術を習得しながら、化学反応や化学物質の特性を理解していきます。また化学物質の構造を確認するための機器分析も行い、学びを深めます。具体的には、サッカリンナトリウム (甘味料として利用される食品添加物の一つ)、2.4ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D) (除草剤などに利用)やE,Zスチルベン (蛍光増幅剤などに利用) の合成、メチルベンジルアミンの光学分割などを行いました。
今回はその中からE,Zスチルベンの合成実験について紹介します。一連の実験では、合成した物質を精製し、さらに分析することで、目的の化合物が合成されているかどうかを確認します。E,Zスチルベンの合成にはWittig反応を用いました。Wittig反応とはリンイリドとカルボニルを反応させてアルケンを合成する反応です (図1)。
まず、試験管中でリンイリドとカルボニル化合物を反応させました。Witting反応では、E体とZ体のスチルベンがランダムで合成されるので両方が混合した溶液になります。写真1は合成反応の結果を確認するため、薄層クロマトグラフィー (TLC) 法を行っている様子です。
次に、このE体とZ体のスチルベンを分離・精製するため、混合溶液をエバポレーター(減圧蒸留装置) を用いて濃縮し (写真2)、
カラムクロマトグラフィーで分離しました (写真3)。溶液の濃縮は、全体の溶液量を減らして、解析に十分な濃度を確保するために行います。カラムクロマトグラフィーは、化合物の性質の違いにより、カラムを通り抜ける時間が異なることを利用して、溶液中の化合物を分離することが出来るものです。
カラムを通過した溶液を、試験管に一定量ずつ分取し、それらをTLC(薄層クロマトグラフィー)で分析することによって、E体、Z体のスチルベンがどの試験管に含まれているのかを確認しました。次に、E体とZ体のスチルベンが含まれていると考えられる試験管内の溶液をエバポレーターで濃縮しました。この濃縮された溶液をガスクロマトグラフィー質量分析法 (GC/MS)、核磁気共鳴装置 (NMR装置)、赤外分光法 (FTIR) で分析し目的のE体のスチルベンとZ体のスチルベンが合成できているかを確認しました。
有機化学実験は、これまでに行ってきた実験の分野とは系統が異なる分野のため、学生達は、はじめは慣れない様子でしたが、一回一回丁寧に実験や課題に取り組むことを通して、またひとつ成長する姿が見られました。
(実験事務室 菊池佑一、村上ゆい、事務室 藤原幹)
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