【バイオ環境学部ニュース】「応用微生物学B」~特別講義「ビフィズス菌とヒトの共生の分子基盤」が開催されました

2019年12月18日トピックス

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「応用微生物学B」は,バイオ環境学部バイオサイエンス学科2年生に開講されている科目で、微生物機能を産業に活用するための技術を取り扱う「産業微生物学」を題材にしています。日本における微生物機能を活用した「ものづくり」は、先人達による実学分野での数多くの輝かしい独創的な研究成果から生まれたもので、世界からも大変評価されている分野です。本講義では、微生物を活用した「ものづくり」の技術を学び、その価値を認識するとともに、近年注目されている応用微生物学の新分野について学ぶことを目的としています。

 今回、応用微生物学分野の最前線である、「腸内細菌」について学ぶ機会を持ちたいと思い、特別講義を企画しました。本特別講義は、「腸内細菌」研究の第一線でご活躍中の京都大学大学院生命科学研究科 片山高嶺教授にお越しいただき、「ビフィズス菌とヒトの共生の分子基盤」と題してお話し頂きました。

まず、「腸内細菌の簡単な歴史と研究の紹介」をテーマに、腸内細菌研究の始まりから最新のトピックス「糞便移植」までを解説していただきました。特に、腸内細菌がマウスの脳神経の発達に影響を与えている研究について、ビデオを使って分かりやすくお話下さいました。

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次に、「ビフィズス菌と母乳オリゴ糖」をテーマに、片山先生ご自身の研究のお話をうかがいました。赤ちゃんが母乳を飲み始めると、ビフィズス菌が急激に増殖し、腸内細菌の約90%を占めるようになります(ビフィズスフローラ形成)。一方、母乳には、母乳オリゴ糖という複雑な構造をした糖鎖が豊富に含まれています。この母乳オリゴ糖は赤ちゃんの栄養にはなりません。先生のご研究ではじめて、母乳オリゴ糖がビフィズスフローラ形成の原因の一端であることが明らかになりました。この解明に至るプロセスについて、実験結果を踏まえながら、丁寧に解説して頂きました。

最後に、「実際の赤ちゃんの中でも、粉ミルクに含まれるオリゴ糖が選択圧となってビフィズス菌が増殖していること」について証明した、今後の母乳オリゴ糖の利用につながる最新の研究についてご説明頂き、講演が終わりました

先生の研究内容については、2019年8月29日に国際学術誌「Science Advances」にて発表されています。
詳細は、www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2019/190829_2.html 

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 本特別講義を受けて、学生からは、幼少期で形成された腸内細菌が宿主(今回はマウス)の行動を変えるほどの影響があることに驚きの声があがりました。また、お母さんが母乳オリゴ糖を作ってビフィズス菌を育てているという研究成果を聞いて、母乳の持つ力のすごさを感じるとともに、ヒトとビフィズス菌の共生にも興味を持ったようでした。また、母乳オリゴ糖を利用した粉ミルクの開発に期待する声も上がりました。

本特別講義は、研究だけにとどまらず、女性の社会進出で注目が集まっている母乳育児についても考えさせる内容でもあったと思います。

 

(バイオ環境学部 バイオサイエンス学科 講師 櫻間 晴子)

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