2020年8月7日(金)10:30より、本学京都太秦キャンパス西館にて、本年度修了予定の経済学研究科大学院生5名による修士論文の中間(テーマ)報告会が行われました。この報告会は、今年度修了予定者が作成中の論文のテーマとその構成内容を報告し、大学院担当教員からアドバイスおよびコメントを受け、論文内容およびそのレベルを高めることを目的として開催されているものです。
第一報告は、今村さんによる「金融債権の貸倒損失とDESの課税関係」と題した報告で、部分貸倒れ損失の損金算入の是非についての論文のサーベイおよび判例研究を行っている現状が発表されました。コメントとしては、参考文献の幅を広げる必要性および論文の後半の判例・事例研究の意味づけを明確化する必要性が指摘されました。
第二報告は、子谷沙代さんによる「働き方の多様化による課税問題の考察」と題した報告で、働き方改革が進む現状において、事業所得と給与所得の区分を昭和56年最高裁判決が指摘した非独立性と従属性という二つの判断基準に基づくことの問題点を明確化し、所得区分の在り方を検討するという内容が発表されました。コメントとしては、論文のサーベイはかなり出来上がっているが、このままでは長大な論文となるので、3・4章に傾注すべきという指摘がありました。
第三報告は、村田春樹さんによる「取引相場のない株式評価における評価通達6項の適用について」と題した報告で、租税法定主義と通達行政との矛盾および「特別の事情」適用の基準の不明確さなどの問題を議論していく由が発表されました。コメントしては、判例研究をもう少し深めることと4章の議論の位置づけの明確化との必要性が指摘されました。
第四報告は、山田大輝さんによる「法人税法における公益法人等の収益事業課税についての一考察」と題した報告で、非営利活動を行う法人の公益性に基づいて収益事業該当性の判断が行われていることに着目し、判例上の民間事業との競合性基準との整合性を検討する由が発表されました。コメントとしては、判例の引用等を明確化することと公益説をとる根拠をより明確化することの必要性が指摘されました。
第五報告は、浅田博孝さんによる「同族会社の行為計算否認についての一考察」と題した報告で、否認規定の適用による二重課税問題と対応調整の必要性についての議論を整理し、平成18年改正の概要が解説されました。コメントしては、近年の裁判事例および判例研究を踏まえ、3章中心に論文を再構成する必要があるとの指摘がありました。
各発表に対して、大学院担当教員から、論文作成に必要な追加的な作業、あるいは論理構成も含む修正必要箇所の指摘もなされました。報告者にとっては、論文作成に向けて、多くのアイデアが得られた貴重な時間となった中間(テーマ)報告会でした。
(経済経営学部 経済学科 特任教授 跡田 直澄)