【メディア】福田裕穂バイオ環境学部長、遠藤暁詩講師らの共著論文がPlant Molecular Biology誌に掲載されました。

2022年01月28日メディア

遠藤暁詩講師、福田裕穂バイオ環境学部長らの共著論文、”Root-specific CLE3 expression is required for WRKY33 activation in Arabidopsis shoots”がPlant Molecular Biology誌に掲載されました。本論文では、モデル植物であるシロイヌナズナが根において病原体を感知した場合、ペプチド性シグナル分子をコードするCLE3遺伝子を用い、地上部で防御応答を強化する仕組みについて述べられています。

本研究は、東京大学および龍谷大学との共同で実施されました。

Title

Root-specific CLE3 expression is required for WRKY33 activation in Arabidopsis shoots

Authors

Dichao Ma, Satoshi Endo, Eriko Betsuyaku, Toru Fujiwara, Shigeyuki Betsuyaku, and Hiroo Fukuda

Published

17 Jan 2022, Plant Molecular Biology, doi: 10.1007/s11103-021-01234-9.

論文概要

植物は文字通り土に根ざし、移動することはできませんが、巧妙な環境応答機構を持つと考えられています。特に、地上部と地下部は異なる環境に面しており、両者の間でのスムーズな情報伝達が個体としての生存には欠かせません。例えば、植物が根を張る土壌は様々な微生物の住処でもあり、もちろん病原体も含まれます。この場合、根は病原体検知の重要な組織とも言えます。ところが、ある葉が感染すると全身的な抵抗性を誘導して二次的な感染に備える機構の存在は知られていますが、根から地上部へ病原体感染の危険性を伝える仕組み、特にシグナル分子についてはほとんど解明されていません。本研究によって、CLE3遺伝子がコードするCLE3ペプチドがそのシグナル分子の役割を担う可能性が見いだされました (図1、図2)。またCLE3遺伝子を含むCLEペプチドファミリーに関して、これまでの研究からCLEペプチドの1または2アミノ酸の違い、あるいは遺伝子発現の部位特異性によって、病害抵抗性に止まらない様々な異なる情報を伝達できることがわかってきました(表1)。すなわち、CLEペプチドを用いた植物の緻密な環境応答機構の存在が予想されます。そのような仕組みの解明と、有用植物育種への応用利用は、かつてない環境変動がもたらしつつある様々な課題の解決に資するものと考えられます。

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図1CLE3ペプチドの輸送

緑色の蛍光色素でラベルした合成CLE3ペプチドを根の切断面に与えると、維管束を介した全身へのすみやかな輸送が観察される。 

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図2 CLE3を介したシグナル経路

根で病原体の蠢動を感知すると、CLE3が地上部での防御応答増幅に働く。
詳しい解説は次のサイトを御覧ください。

https://ryukokuagr.blogspot.com/2022/01/blog-post_24.html

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表1 シロイヌナズナのCLV3/EMBRYO-SURROUNDING REGION-RELATED (CLE)

(総合研究所 講師 遠藤暁詩)

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