本学バイオ環境学部の清水伸泰准教授と大学院生(2016年度修了生)の渡邊綺咲さんが、世界で初めてグンバイムシの性フェロモンを特定するという画期的な研究を行い、英ネイチャー関連の総合科学雑誌「Scientific Reports」に論文が掲載されましたので、お知らせします。
研究成果のポイント
- アワダチソウグンバイと呼ばれる昆虫の性フェロモンがボルネオールと呼ばれる物質であることを特定し、またこの昆虫自身がボルネオールを生合成していることを実験的に示した
- 今後はボルネオール合成酵素を明らかにすることで、昆虫由来の新たな酵素遺伝子資源として生かしたり、性フェロモン自体を利用して害虫防除に役立てたりできる可能性がある
【研究成果の概要】
清水准教授らの研究グループは、アワダチソウグンバイの化学生態学研究の中で、世界で初めてグンバイムシの性フェロモンを特定しました。
グンバイムシはカメムシの仲間で、国内では数十種、世界では二千種以上が発見されています。アワダチソウグンバイは、国内に生息するグンバイムシのうち3種類の外来種の1つで、菊やヒマワリなどの園芸作物、サツマイモやナスなどの農作物の害虫として知られています。
今回の研究では、アワダチソウグンバイの特徴的な配偶行動に注目して飼育実験を行い、雄のマウント行動を誘発する性フェロモンがボルネオールであることを特定しました。また、キラル分析でこのボルネオールの分子構造を解析したところ、アワダチソウグンバイは植物由来の酢酸ボルニル(ボルネオールの酢酸エステル)を分解して利用しているのではなく、ボルネオールを植物とは異なる経路で生合成していることが分かりました。ボルネオールはテルペンと呼ばれる物質の1つで、テルペン類には食品や医薬品の清涼剤として使われるメントールなど、産業用途で活用されるものが多くあります。昆虫を含む動物からはこれまでボルネオールの合成酵素は見つかっておらず、グンバイムシの持つ酵素は未開拓の酵素遺伝子資源となる可能性が期待できます。
この研究成果は、自然科学(生物学、化学、地球科学、物理学など)の多様な分野の論文が掲載される総合科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。
【論文発表の概要】
- 論文タイトル:
-
Identification of a sex pheromone of the chrysanthemum lace bug Corythucha marmorata (Hemiptera: Tingidae)
(日本語訳:アワダチソウグンバイの性フェロモンの同定)
- 著者名:
-
清水伸泰(京都学園大学バイオ環境学部准教授)、渡邊綺咲(2016年度本学修了生)
- 公表雑誌:
-
Scientific Reports
- 公表日:
-
2017年8月4日
- 対象者
- 学部・学科
- 内容