ダニの分泌機構から新たな酵素が関与する生合成経路を発見~生体触媒の開発などに期待~

2017年03月14日トピックス

本学バイオ環境学部の清水伸泰准教授らの研究グループが、ダニの分泌機構の研究から画期的な発見を行い、米国の主要な総合科学雑誌に論文が掲載されましたので、お知らせします。

研究成果のポイント

  • コナダニの脂肪族ギ酸エステルの生合成に、これまで生物では見つかっていないバイヤー・ビリガー酸化反応が関わっていることを実験的に証明
  • 反応に関わる酵素とメカニズムが解明できれば、新たな生体触媒の開発や環境負荷の少ない医薬品合成の実現などにつながる可能性がある

【研究成果の概要】

20170314_dani.png
コナダニの実物の拡大写真

京都学園大学バイオ環境学部の清水伸泰准教授らの研究グループは、ダニ目無気門亜目(コナダニ)の分泌物とその生合成の研究の中で、これまで生物では見つかっていなかった新たな酵素がダニの体内に存在する可能性を発見しました。

コナダニの代謝産物を追跡する目的で、安定同位体の標識前駆体を混合した餌をダニに食べさせる2種類の取り込み実験を行い、その標識パターンの解析から、コナダニが脂肪酸からアルデヒド(有機化合物の一種)を経てギ酸エステル(ギ酸とアルコールが結合した化合物)を合成していることが明らかになりました。さらに、この合成の過程にはバイヤー・ビリガー酸化と呼ばれる反応が関わっていることが推察され、これまで動物、植物、微生物のいずれにも見つかっていない、脂肪族アルデヒドからギ酸エステルへの変換反応を触媒する酵素をコナダニが持っている可能性が示唆されました。

この酵素は、これまで知られている微生物のものとは全く異なるアミノ酸配列を持つことが予想され、特定することができれば新たな生体触媒の開発が期待できます。その生体触媒を活用すれば、緩和な反応条件が必要な有用天然化合物の合成だけでなく、医薬品や農薬品などの生産時の環境負荷を低減したり、安全性を高めたりできる可能性があります。
この研究成果は、自然科学、社会科学、人文科学、医学など多様な分野の論文が掲載される米国の総合科学雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載されました。

【論文発表の概要】

論文タイトル:

Biosynthetic pathway of aliphatic formates via a Baeyer–Villiger oxidation in mechanism present in astigmatid mites

(日本語訳:無気門亜目ダニに存在するバイヤー・ビリガー酸化機構を経由する脂肪族ギ酸エステルの生合成経路)

著者名:

清水伸泰(京都学園大学バイオ環境学部准教授)、坂田大介(京都学園大学バイオ環境学部卒業生)、Eric A. Schmelz(カリフォルニア大学教授)、森直樹(京都大学大学院農学研究科教授)、桑原保正(元京都学園大学バイオ環境学部教授)

公表雑誌:

Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS、米国科学アカデミー紀要)

公表日:

米国東部時間2017年2月20日午後3時

DOI:

10.1073/pnas.1612611114

前の記事へ

次の記事へ

一覧へ戻る

このページの先頭へ