「モーサテ永守塾」1限目(2022年4月22日放送)

夢実現のカギは「有言実行」〜売上1兆円を現実に

20220510_nagamorijuku01.jpg

本学理事長を務める日本電産の永守重信CEO。1973年、自宅の納屋で3人の従業員と共に日本電産を創業し、1代で日本電産を連結売上高1兆9000億円の大企業に成長させました。
 

永守理事長:忘れもしない1973年7月23日。従業員3人を納屋に呼び、僕はミカン箱の上に立って、我が社がどうなるか説明した。27歳、26歳、24歳の3人に向かって「目標は売上1兆円や」と言った。
一人が「1兆円?1億円の間違いじゃないですか」と聞いてきた。
「違う、1兆円だ」と言った。1兆円の道を歩んでいくっていう話をしたわけだ。

日本電産が大きく成長した背景には、永守理事長独自の「勝利の哲学」がありました。

永守理事長:最初は大ボラやね。これ、根拠はほとんどありません。それが、中ボラ、小ボラ、そして夢になる。夢になったら100%実現します。まず有言実行。黙って無言実行ではうまくいかない。人に言っていないから。
僕は最初、車載用のモーターをやろうと思ってね。トヨタの技術の責任者に会いに行って、「一番難しいモーターはどれですか」と聞いた。
そうしたら「パワステ」やと言う。これは簡単じゃない。

20220510_nagamorijuku02.jpg

パワステ=電動パワーステアリングは、モーターで車のハンドルを軽くし、運転をしやすくする重要な部品です。日本電産は1995年、そのパワステのモーターを開発するプロジェクトを立ち上げました。

永守理事長:一番難しいというパワステを、「なるほど、それなら私やりましょう」と言った。「あんたバカじゃないか」「そんなものはね、まずワイパーぐらいから出発すべきだ」と言われた。それが常識的な考え方だ。
(当時の日本電産は)何もない、専門性もないけれど、パワステのモーターを「やる」と言って、必死に実行した。有言実行。それで今、世界一になったでしょ。

理想の大学を追求

20220510_nagamorijuku03.jpg

永守理事長:この大学も、将来はハーバードもMITもケンブリッジも全部抜くと言っている。

有言実行で、大学運営でも夢を実現しようとしている永守理事長。これまでに200億円もの私財を投じ、理想の大学像を追求しています。
2020年4月に新設した工学部。その中の「機械工房」には実際にメーカーで使われている様々な加工設備があります。これらの設備を学生が実際に使いながら学ぶことで、製造の現場に出た時に求められるノウハウを身につけることが狙いです。
工学部の授業は英語。海外の工場で活躍できる人材を育てようとしています。そのために世界の各地から、講師として優秀な技術者を招きました。
さらに「プロジェクト」という課外授業では学生が自主的に技術開発に取り組みます。
こうしたカリキュラムにより世界を舞台に活躍する技術者を育てようというのです。

経営の基本は「足元悲観、将来楽観」。先行き不透明は当たり前

決算説明会などで「不透明という言葉は使わない」と言う永守さん。その理由は。

永守理事長:不透明なんて言い出したら毎日不透明。不透明でなければ会社の経営者なんて要りません。
会社に社長がいたり専務がいたりするのは、問題解決のため。
CEOが出てきて「不透明である」と言い出したら、「あんた何の仕事しとるねん」ということになる。
 会社の経営の基本は「足元悲観、将来楽観」。
 将来の姿はいっぱい見える。ロボットの世界、車の世界、モーターを使う場所はどんどん広がっていく。素晴らしい会社を経営していると思う。
でも足元をみると、例えばロシアとウクライナの問題。当初はあまり関係ないかと思ったが、結局ロシアも世界のサプライチェーンに入っていて、やはり影響がある。
だからリーダーが、バーっと決める。決めるリーダーが、一番株を持っている。企業に何かあった時に最大のリスクを負うのは筆頭株主(注・永守CEOは日本電産の筆頭株主)。
だから24時間モノを考え続ける。
それをエンジョイしている。「苦しい」と思っていたらできない。

投資のための、「キャッシュ イズ キング」

20220510_nagamorijuku04.jpg

「大ボラ」とも言われるような夢を掲げて会社を成長させた永守さんですが、生き残るための現実的な考えの持ち主でもありました。

永守理事長:「キャッシュイズキング」です。会社が潰れるときというのはね、キャッシュが無くなるときなんです。今こうやってロシアの問題も起きた、コロナも起きた、中国で工場がロックダウン、キャッシュがなかったら潰れる。だからキャッシュイズキング。
キャッシュは貯金をするためじゃなくて、再投資をするため。新しい工場を作ったり、新しい事業をやったり、従業員の給料を上げたり、再投資をすることでその会社はさらにもっと大きくなっていく。だからキャッシュを持ってなきゃいけない。

人の助けを得る

大きな夢と、現実的な感覚。永守さんの経営哲学を聞いた学生からはこんな質問が…

工学部2年  西山さん:得たお金(キャッシュ)で再投資するというお話があったが、投資先を選ぶ上で、コストをかける所とかけない所をどうやって見極めますか?

永守理事長:それはリターン。リターンが大きければコストをかけてもいい。儲からんものに投資はできない。
日本の若者が起業して失敗するのは、リターンの計算ができないから。どれだけ儲かって、借りたお金が返せるのか、その計算ができない。
一人の人間の能力というのは、あれもこれもできないですよ。日本では、エンジニアが社長をやって、全部やろうとする。だから失敗するんです。
僕は28歳で会社を作ったでしょ。そのとき50代の経理の専門家を呼んできて、CFOにした。
松下電器も、松下幸之助と高橋荒太郎、CFOがちゃんといる。そういう人と一緒にやる。自分の能力をあんまり過信したらあかん。弱いところは人の助けを得る。そういう起業家は成功する。

企業の価値を高めるために重要なことを、あえて一つ挙げるとしたら何ですか?

永守理事長:それはもう、従業員。目標を同じくして、成長するために一生懸命働いて、頑張っていく。それは1人ではできない。
同じベクトル、考え方を持っている人が集まらないと、大成功はできないですよ。

学生の感想

大学で技術開発のプロジェクトに取り組んできた学生たちに、永守さんの言葉が響いていました。

工学部2年  西山さん

工学部2年  西山さん:僕たちがたとえ起業しなくても、将来に非常に役に立つというか、僕たちの成長の糧になるような話がいっぱい聞けて、本当に人生の中で一番価値がある3時間だったって今思っています。

工学部2年  池原さん

工学部2年  池原さん:今やっているプロジェクトで携帯電話を作ろうとしていて、人に頼ることが苦手で、うまく頼れなくて…人には見栄を張っちゃう癖があったので、「人に委託してもいいんやっ」て思えたし、夢を実現するための方法がわかりました。

このページの先頭へ