「モーサテ永守塾」3限目(2022年5月27日放送)

電気自動車でクルマの価格は5分の1になる

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モーサテ永守塾3限目のテーマは「EV」、電気自動車です。永守理事長がCEOをつとめる日本電産が今後の成長をかけるEV戦略とは、一体どのようなものでしょうか。

永守理事長:中国、南米、アフリカ、世界のどこの工場に行っても、その工場で働く若い人たちが何が欲しいかといえば、車が欲しい、車が欲しいと言います。ところが所得が少ないから、100万円、200万円という車は高いんです。電気自動車(EV)になれば、車の価格は5分の1になりますよ。EVはモーターとバッテリーですからね。ガソリン車では無理です。

日本電産の2022年3月期の連結売上高は1兆9,181億円。永守さんは、2030年に売上高10兆円、現在の約5倍に伸ばすという目標を掲げています。成長の柱として期待しているのが電気自動車です。

永守理事長:中国で最近45万円という車が出た。若い人がたくさん買っています。クルマ業界の中での競争は、基本的に航続距離は600km必要とか1000km必要とか言われている。でも、車を持っている人は1日100kmも走らないんですよ。
電気自動車で小さなミニカーをつくれば、バッテリーもものすごく小さく済むし、安くできる。40万円、50万円になったら、誰でも車を買えるようになります。東京でも、京都でも、雨が降って寒いときに子供を幼稚園に送っていかなきゃいけないでしょ。自転車の前に乗せてね。ああいう姿を消さなあかんわね。
ニーズはそこにある。今の車では(世界販売は)8000万台と言われているけど、実際は5億台から6億台、車が欲しい人が世界にいるんです。だから僕らは、非常に小さなモーターで、馬力が出て、電気をあまり消費しないというような車を開発している。それで、世界中の車が欲しい人たちに車を供給したい。こういうソリューションの方へ会社の経営を持っていくんです。

全てのEVに「ニデック・インサイド」を目指す

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経済経営学部4年  北田さん:日経新聞で、EVの「イーアクスル」の話があったと思うのですが。

永守理事長:よう知っとるやん、「イーアクスル」

経済経営学部  4年北田さん:それで勝つための信念、考えは?

永守理事長:エンジンをのけて、そこに、モーターやギアなどのシステム「イーアクスル」というのを載せるわけや。

「イーアクスル」とは、日本電産が開発に力を注ぐ、モーターや減速機などを組み合わせた駆動装置です。
永守さんは今から3年後にはEVの普及が一気に加速すると考えていました。

永守理事長:電気自動車の時代が来る。僕は2025年には分水嶺が来る、ぐーっとEVが伸びるぞと言っている。だから先に巨大な工場を中国や欧州に造って待ち伏せをしている。 パソコンを開けたら必ず「インテル・インサイド」、小さく「インテル・インサイド」ってシールが貼ってありますよね。将来、日本電産のモーターを使う車には「ニデック・インサイド」を貼ろうと思っている。世界で走っとる車全部、フロントガラスに「ニデック・インサイド」って貼るんです。
投資家の前でそういう未来を語るわけや。だから高い株価がついている。

学生はキーコンポーネントを作れ!

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工学部2年  田中さん:私はずっと災害救助ロボットを作りたいと考えていて、これからプロジェクトを始めようとしています。目標を目標たらしめるような「核」、見極める基準があったら教えてください。

永守理事長:まず何事も下積みなんです、下積み。それができていないと、いくら大きな目標を作っても成功しない。
ロボットを作るのは、部品さえ買ってくれば誰でもできる。一番大事なのは部品です。部品がカギなんです。電気自動車だって、キーコンポーネント(製品のカギとなる基幹部品)はバッテリーとモーターです。他はどんな工場でも板金バーンってやれば造れる。だから、キーコンポーネントを作れないとダメです。部品をアセンブリする、組み立てるのは誰でもできる。
これからのエンジニアは、下積みというか、キーになるものを学ばないといけません。若いときから部品の技術開発をまずやって、それから完成品に近づいていくといい。完成品はあまり儲からないんです。完成車はトヨタが世界一と言ってもシェア10%程度だからね。キーコンポーネントは世界シェアを8割、9割とるから、儲かるんです。

技術革新は怖いが夢がある

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永守理事長:固定電話を作った会社は携帯電話では一番になっていない。もう潰れた。携帯電話を作った会社も、全部スマホにやられた。せやろ。ブラウン管テレビはソニーと松下が一番やったやろ。それがLEDになったらもう韓国メーカー中国メーカーが全部取ったわけや。それぐらい技術革新は怖いですよ。
今のクルマ、ガソリンエンジンではトヨタがダントツに強い。だけどEVになったら、もう分からへん。日本電産は2030年過ぎにはトヨタを抜くと言うてる。分かるか? 誰も信用しいひんけど、今まで全部抜いとる。やりまっせ、そりゃ。
そういう遠大なる夢を持たないかんわな。来週はいいレストランに行ってご飯食べたいなんていう小さい夢ではあかんわ。「自分で会社を作って起業家になんのや!」というぐらいの気持ちで勉強しないとあかん。

日本電産を大企業に育て上げてなお遠大な夢を語る永守理事長、77歳。学生たちはその姿勢に何を感じたのでしょうか。

学生の感想

経済経営学部 4年北田さん

経済経営学部 4年北田さん:やはり自分の夢を語れということを一貫して言われていた。私自身、国際的に活躍したいと思っているので、そこは同じように、同じ志を持って、頑張っていきたいと思いました。

工学部 2年小島さん

工学部 2年田中さん:大きな夢を持って、その夢を実現するためにちゃんと下積みをして、基礎を固めて一歩踏み出していこうと思っています。

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