学長挨拶

学長挨拶

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前田 正史 maeda masafumi

1976年東京大学工学部卒、1981年同大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。
東京大学生産技術研究所所長などを経て、2009年4月から東京大学・理事副学長を歴任。日本電産株式会社 生産技術研究所 所長(非常勤)。2018年4月本学副学長就任を経て、2019年4月より現職。

大学は、変わる。生まれ変わる

京都先端科学大学は総合大学として、極めて大きな分野で活動する新しい大学に生まれ変わります。
本学の各学部や大学院は、現代社会が直面する現未来、近未来の課題や社会にニーズに対応するため、それぞれに重要な役割を果たします。
ロボットや自動機械などのテクノロジーの進化は、工場や働く場だけでなく、町に、家庭に深く関わるようになるでしょう。そのときに求められるのは、人間の行動を深く理解した上で社会実装することであり、そのための多様な学術です。
本学では、専門性があり、実践的な英語力を持ち、国際社会人としての基礎能力を備える人材を育てます。世界が必要とする学術と人材を輩出する大学として、京都先端科学大学のブランドを学生、教員、職員がともに築き、そして学生の皆さんが描く夢、未来を実現できるよう、教員、職員は一丸となって支援いたします。


2019年10月の記念式典・祝賀会学長挨拶全文

生誕50周年を迎え、2019年4月に「京都先端科学大学」として新たな出発をした本学が、これからの50年、100年後に向けて大改革を推進していることのご報告と、これからのいっそうの発展をお約束するために、今回の式典・祝賀会の場を設けさせていただきました。

本学のあゆみ

本学は1969年に亀岡でスタートしました。その後、歴代理事長のご英断で、太秦キャンパスを開設し、経済経営学部、人文学部、健康医療学部が配置されました。当初建設された東館、北館に加え、本年4月には西館が完成しました。現在、南館つまり工学部棟を建築中で、来年早々には竣工予定です。これら4館合わせて、太秦でおよそ5万平米の施設面積を持つことになります。そして、4学部10学科4研究科が設置されていた本学は、2020年4月より工学部を設置し、5学部11学科5研究科となる予定です。1学年当たりの入学定員は、経済経営学部340名、人文学部170名、バイオ環境学部190名、健康医療学部200名、これに工学部200名が加わりますので、4400人の中規模総合大学です。

「京都先端科学大学と名前が変わって工学部が新設される。それでは理系の大学になったのか」と言う質問をよく受けます。それは違います。本学は総合大学です。コンパクトではありますが、非常にユニークな大学を目指しています。このことについて、少しお話ししたいと思います。

京都先端科学大学の目指す教育・研究

新設される工学部は、1学科構成です。機械電気システム工学科という名称で、アクチュエータとその応用についての教育と研究をします。アクチュエータというのはアクト、つまり動くことを実現するデバイスのことです。ネムノキの葉のように閉じたり開いたりする植物の器官や私たち人間の筋肉もアクチュエータといえますが、モータが一番わかりやすいでしょう。工学部では、アクチュエータを使った応用として、ロボットや自動運転デバイスなどの基礎研究とその教育も行います。

では、工学部だけでこの新しい分野の開拓や研究ができるのか。

答えはノーです。すでに各方面からも指摘されているように、例えば、人間の操作を介さない自動機械を社会で本当に使うためには、人間との共存を図る必要があります。様々な課題があり、それらを解決しないといけません。例えば、損害保険、交通法、自治体の条例など、自動機械と共存する社会システムを構成するためには社会科学的背景を整備しなければいけません。経済経営学部の出番です。

そもそも自動機械が、行動予測が非常に難しい人間と共存できるようにするためには、人間の行動様式を記述した経験則をプログラムの中にもっていなければなりません。人間の行動様式は、宗教、歴史観、地政学的な環境、気候などを変数として内包しています。つまり人間自体を理解し、大量の人間行動のサンプルデータがないかぎり、自動機械のプログラミングはできないということになります。人文学部の心理や人間行動学が必要です。

もう一つ、例をあげましょう。

一つの例は自動翻訳です。“AIによる翻訳"、と言いますが、いかに有効な辞書を持つかでAIの翻訳能力は決まります。ただし、この辞書は皆さんがイメージする逐語の意味を書いた、従来の固定化されている辞書ではありません。一つの言葉に対して、非常に多くの文例を言語ごとに用意する文例集のようなものです。これをいかにたくさん準備できるかによって翻訳の精度が決まります。これからさまざまな言語で必要になってくるでしょう。ここでも人文学部の活躍が期待されます。

他にも工学系のデータサイエンス分野はバイオ環境学部の多くの分野に共通しますし、今注目を集めているドローンによる農場管理、自動農業機械などはそもそも工学との複合分野です。健康医療学部が目指す健康寿命の延伸は、看護、言語聴覚などの分野に加え、スポーツを通じてその目的を達成しようとしています。

工学部は、社会のこの分野におけるニーズを共に解釈し、バイタルセンサ、行動予測など要素技術を提供するでしょう。医療、看護の経済合理性を評価することも大きな仕事ですが、社会保障制度と、看護医療現場の実態の評価はデータサイエンスを担う工学部が接着剤となり、健康医療学部、経済経営学部、人文学部の共同活動となるでしょう。

このように、工学部が参加することにより、各学部がさらに大きな一歩を踏み出し、複雑な社会の課題解決の場を提供することができるようになるでしょう。

工学部の教育について

工学部についてもう少し紹介したいと思います。

先に述べたように機械電気システム工学科1学科です。これまでの日本における150年にわたる工学教育をゼロから見直し、教える側が教えたいことを教えるのではなく、数学と物理を骨格に論理を学び、まずは実践的な課題を一年生から経験し、その中で学習の成果を体験できるように工夫したいと思っています。例えば、ロボットを実習でつくって動かしてみる、そこから始めます。

基礎となる数学と物理に相当の重きを置き、従来の工学部のカリキュラムの1.5倍の時間をかけます。世界標準の教科書を用い、専門分野にとらわれず複数の教員が科目を担当します。特定の研究室に配属される卒業研究の代わりに複数教員と複数の学生からなるチームによるキャップストーンプログラムで課題解決プロジェクトを実践してもらいます。この課題は産業界から提案していただき、結果の評価も産業界のメンバーに参加していただきます。すでに日本電産をはじめ50社以上のご協力のお申し出をいただいており、非常に感謝しています。今後ともこちらのご支援もお願いいたします。

さて、工学部では学生定員200名、留学生を入学定員の半分の100名を予定しています。授業は基本的に英語で行われます。ただし、日本人学生の英語は徹底的に最初のセメスターで鍛え上げます。一週間に10コマの英語を学ぶ授業がありますし、その後も同じ程度の英語を学ぶ環境がありますので、英語による専門科目が開始されるまでには一定の英語力を身につける事ができるでしょう。もちろん、英語で十分理解できない学生には、日本語による演習等でフォローをいたしますのでご心配は要りません。

工学部の教員の1/3は外国人です。本日ほとんどの工学部教員がこの会場にきておりますので、後ほど懇談していただければと思います。

入試について

昨年度の入学希望者は、その前年の1.6倍でした。倍率は上昇しておりますが、私どもとしては、教育内容の充実、キャンパス整備、研究施設の充実など、なおいっそうの努力が必要であると思っております。本日、各学部、学科の教育内容、卒業後の進路等について祝賀会会場のホワイエにおいてパネル展示しておりますので、ご確認いただければと思います。

御臨席の高等学校関係者の皆様には、今後とも優秀受験生のご紹介をお願いしたいと思っております。高大接続についても実質的な接続を心がけていくつもりですし、より積極的に高等学校、必要に応じて中学校、場合によっては小学校との連携を進めていきたいと考えております。

なお、工学部に関しては、英語能力が一定以上の生徒は9月入学が可能なカリキュラムを設計しました。海外で国際バカロレア資格を取得した高校生諸君にはぜひ入学していただきたいと思っています。

国際的な、交流協定の締結も進めてまいります。すでに、ヨーロッパ、北米、アジア、中東の多くの大学と学生交換、単位互換、研究交流の協定を結ぶ準備をしており、年度内に具体的に発効いたします。

様々な連携について

教育における産(医)官学連携の第一は、教員の交流です。すでに、多くの学部で産業界、官界、政界から客員教授として多数の先生にお出でいただいております。工学部ではクロスアポイントメント制度を利用し、産業界のエンジニアを教授としてお迎えしております。

第二に課題の共有です。先に申しましたとおり、工学部では、キャップストーンプログラムを卒業研究に代えて行いますし、この過程で、産業界が抱える課題をリアルに理解し、産業界の方々も大学の自由な動きを理解できるのではないかと思っております。

インターンシップも非常に有効なツールです。すでに3ヶ月単位のインターンシップを国内で実行してきましたが、今年から日本電産グループの海外拠点のご協力により海外インターンシップも実現できました。この効果はきわめて大きく、学生のモチベーションの向上は信じられないほど大きなものがありました。一部マスコミでも取り上げられております。私としては1年単位のインターンシップ、海外提携校との共同指導による「ジョイントデグリー」、2つの大学から学位を取得する「ダブルデグリー」もなるべく早く実現したいと思っております。

また、亀岡キャンパスでは、30haのキャンパス空間を活用し、産官学の共同プロジェクトを受け入れる施設を整備しております。すでに日本電産との共同研究は始まっており、自動車駆動用モータの開発研究を共同で開始する準備をしております。その他、小型パーソナルモビリティーの共同研究も近々開始いたしますし、ドローンを使った様々なデータ採取とそのデータサイエンスの研究活動も亀岡を中心に始めております。これらの活動は、いずれも亀岡市、京都府との協働が非常に大切です。例えば、小型の移動デバイスを開発し、運動性能、センサ性能、安全性能をキャンパス内で実証できたとしても、実社会空間つまり公道と社会活動の現場で実証することは地域との協働がない限り実現できません。また、研究の結果としてスタートアップ企業が立ち上がったとき、会社を亀岡市内あるいは京都市内に立地するためには、行政の支援は不可欠です。

最後に

これまで申し上げましたように、京都先端科学大学は新しい大学として生まれ変わりました。大学の移転整備にかかる資金は、皆様からいただいた多額の浄財と歴代理事長の大学運営努力の賜物であり、そして現在進行中の大改革と工学部の建物は、現理事長個人による多額のご寄付により実現できました。深く感謝いたします。

本学は、大きく前進します。皆様のご支援により、この歩みを少しでも早く進め、課題解決に貢献できる人材を輩出し、イノベーションを起こす教育・研究活動を京都から産官学の皆様と共に進めていきたいと思っております。


Message from the President

Professor Masafumi Maeda

Kyoto University of Advanced Science is evolving into a comprehensive university, which is engaged in the wide range of academic activities.
Each faculty and graduate school of the University will play important roles in addressing various problems that confront modern society in the immediate and near future, as well as the needs of society as a whole.
The evolution of robots and automated machines will bring about interactions with human beings not only in factories and workplaces but also in urban environments and households. Consequently, we are required to focus on real-world implementation, based on a full understanding of human behavior. The diverse academic disciplines we offer will help achieve that goal.
We will develop human resources who have the expertise, practical English ability, and fundamental skills required to become global citizens. As a university devoted to creating knowledge and developing human beings in response to global needs, we, the academic and administrative staff, along with students, will combine our collective strengths to establish the brand of Kyoto University of Advanced Science, while supporting you to achieve your dreams, hopes, and future.

Profile

Professor Masafumi Maeda, a prominent expert and an accomplished academic leader in Materials Engineering, is President of Kyoto University of Advanced Science.
In the area of sustainable energy, Professor Maeda’s research focuses on resource recovery and waste treatment. He has played a leadership role in the field since he became founding Head of the International Research Center for Sustainable Materials at the Institute of Industrial Science (IIS) of the University of Tokyo in 2004, where he served until 2009. With its team of internationally renowned researchers, the Center has become an international hub for research on recycling and processing critical materials. During this period, he served as Director General of the IIS of the University of Tokyo, where he initiated a wide range of administrative reforms aimed at energizing research activities that explore new research fields, as well as optimally managing external funding.
Between 2008 and 2010, Professor Maeda chaired the 69th Committee on Materials Processing and Applications under the University-Industry Cooperative Research Program of the Japan Society for the Promotion of Science, developing a forum for collaborations between academic researchers and industry leaders. He was a member of the Science Council of Japan between 2008 and 2014, during which he chaired its Materials Engineering Committee between 2011 and 2014.
Between 2009 and 2015, Professor Maeda was Executive Vice President of the University of Tokyo. His primary responsibilities were to oversee the operation and management of the university’s finances, estates, administration, teaching hospital, and libraries, and so seek out synergies. Externally, as chair of the Mining and Materials Processing Institute of Japan, in 2016 he co-hosted the world’s largest international conference on Copper Industry and Sustainability, which was held for the first time in Japan.
Professor Maeda holds a number of key industrial advisory roles. Between 2012 and 2018, he was a Non-executive Director of JFE Holding, one of the world’s largest steel manufacturers and, since 2016, has been Non-executive Director General of Nidec Center for Industrial Science, which is a R&D center of Nidec Corporation―a leading manufacturer of electric equipment including precision motors, for which it has the largest market share in the world―promoting advanced research and cutting-edge technologies.
He was awarded BSc., MSc., and PhD. from the University of Tokyo, where he read Materials Engineering. He joined the university as a faculty member and was awarded a professorship in 1996. He was a visiting postdoctoral fellow at the University of Toronto between 1982 and 1984. He has authored numerous books and academic papers, including “Advanced Physical Chemistry for Process Metallurgy” published in 1997.

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