地域共生研究室

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都市の人と自然の痕跡をさぐる

都市には、私たちの暮らしや自然、生き物の痕跡がたくさん残っています。そこに暮らす人々には、周辺の風景は変わってもかつての記憶が完全に消去されたわけではありません。これらの記憶や痕跡を探ることで、街の発展の歴史、文化、自然を知ることが可能となります。これらの記憶・痕跡は互いに関連しあっており、そこから多くの課題についても推察することができます。地域共生研究室では、各地を実際に歩くフィールドワークの計画と実行を繰り返すことで、地域に埋もれた資源に光をあて、地域再生の道筋を描くための方法論に結びつけて行きます。

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教員紹介

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原 雄一

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都市と地方の関係を築くことで理想的な環境を実現する

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最近は、東京や大阪などの都市でビルの屋上や壁面に植物を植える「都市緑化」の試みが盛んです。そのイメージで、地域共生研究室でも街を緑にする研究をしていると思われるかもしれません。
しかし、都市は単独で成り立っているわけではなく、必ず周辺の地域との関わりをもっています。両者が補完関係にあり、人やものがスムーズに循環することが理想ですが、都市部に人口が偏っているというのが現状。そのせいで地方は活力度が低下、都市は都市問題が深刻化し、環境全体が疲弊しています。
地域共生研究室では、そうした現状を持続可能な環境へと変えていくために、都市と地方とのつながりを強めていきたいと考えています。そのためには、フィールドワークなどを通じて地方の魅力を発信していくことも不可欠です。

緑に見えるのは表面だけ。フィールドワークで目の当たりにする現実とは?

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研究の第一歩は、フィールドに出て行くこと。現代では自然のなかでリアルな体験をする機会が失われてきているため、とくに現場での実践的な学びを重視しています。 たとえば、スギとヒノキを思い浮かべてみてください。そういう名前の樹木があることは大勢が知っていますし、林業の課題についての知識をもっている人もいるでしょう。しかし、スギとヒノキの実物を見分けることができるでしょうか?おそらく、わからない人が大半だと思います。 実際にスギの植林地へ足を運んでみると、木の特徴や生育地の地形条件を掴めるのはもちろんのこと、それ以上の発見があります。遠くから見ると一面緑に覆われているようでも、中に入ってみると真っ暗で地面はむき出し。長年手入れされていないために木が密生し、地面に光が届かず新しい植物が育たなくなっているという状況の山がたくさんあるのです。こうした課題には、現場に行かないと気づくことができません。 もちろん、研究をするうえでは知識も必要です。しかし、教室で先生の話を聞くだけでは表面的な理解に留まりがち。知識を持って現場へ行き、そこで仕事や暮らしをしている人の肉声を聞く。知識・現場・肉声の3つが重なり合うことによって、理解が非常に深まるのです。学生ひとりひとりの研究テーマは、こうしたフィールドワークを繰り返すなかで絞り込まれていきます。

ドローンの撮影技術を生かしたオリジナルビデオで、地域振興に貢献!

フィールドの調査にドローンを取り入れていることも、地域共生研究室の特色のひとつ。植生や切り立った崖の地層、不法投棄の状況など、行きにくい場所を調べたいときには非常に有効な手段です。 また、ドローンで撮影した動画は非常に鮮明なので、それを編集すれば低予算で地域のPRビデオをつくることもできます。定期的に訪れる綾部市古屋では多くのボランティアの方々と一緒に集落内の施設や活動のPR動画を制作しました。都市と地方の関係性をテーマにする研究室として、地域の活性化にも積極的に貢献したいと考えています。

奈良公園の糞虫調査のフィールドワークへ

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シカの糞が多い奈良公園には、50種類以上の糞虫(コガネムシの仲間)が生息すると言わ れています。千数百頭のシカが生活し、1日に約1トンの糞をしているにもかかわらず、 奈良公園では動物園のような臭いがほとんどしません。なぜでしょうか? それは、分解者である糞虫たちが活躍しているからです。ハエの発生も抑制され快適な公園環境を維持しています。糞虫たちはまた、糞に含まれる芝の種子をさまざまな場所に拡散させ、発芽した芝がシカの食事になります。こうした糞虫、シカ、芝の3者の生態系の循環を知れば、ピンセットでの糞虫採集にも熱が入ります。 「えっ、そうなんだ!」という知的驚きを体験できるフィールドワークです。

 

1000年続く福知山市毛原の棚田を訪れる

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福知山市毛原集落は人口20数名の小さな過疎の村ですが、日本の棚田百選にも選ばれている風光明媚なところです。数年前から村おこしをスタートさせ、地域通貨制度、棚田オーナー制度、稲刈り体験会、京都モデルフォレスト運動、京都モデルファーム運動など、さまざまなアイデアや工夫を通じて、地域の活性化に取り組んでいる集落です。毛原住民憲章には、むやみな成長は求めず、適正規模を維持していく中で、これから1000年は続けていく村づくりをしていこうという、まさに限界集落への挑戦を続けています。集落のあっちこっちに分散している、気づかなった地域資源と暮らしとのつながりを現場で理解し、これからの地域再生へのヒントにつなげていきます。

卒業後の進路

地域共生研究室では、規定のカリキュラムを受講することによって環境再生医初級 、樹木医補、自然再生士補、地域調査士という4つの資格を取得すること、さらに、毎年2回実施される生物分類技能検定試験を受験することを推奨しています。進路として、これらの資格を生かせる環境系の調査機関などへの就職が考えられます。

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研究内容

道迷いによる山岳遭難の未然防止

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近年、山岳遭難が急増しています。令和3年には2635件の山岳遭難が発生しました。遭難原因の40%を占めるといわれる「道迷い」を対象とし、各地の山中での道迷いの原因を解析します。次にGIS(地理情報システム)とスマートフォン地図アプリなどの最新のIT機器を使うことでどのように「未然」に防止できるか、オリジナルルートを対象として誰もが簡単に事前準備できる仕組づくりを進めています。

街の記憶の痕跡(大阪、京都、亀岡)

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大阪は第二次世界大戦で焼け野原となるも、高度成長期を経て再度活気を取り戻してきました。一方で河川や堀は埋め立てられ、高速道路が縦横に整備され、古くからの地名も含めて、かつての面影は失われつつあります。この「大阪24区街の記憶の痕跡」は、大阪の記憶の痕跡をスマートフォンに表示させ、個人あるいはグループでその痕跡の箇所を訪ね、大阪の歴史や出来事など町の発展を街を歩きながら学習・継承していくことを目的としています。

ブラタモリから探る地域再発見への道

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ブラタモリとは、ちょっとした街角の高低差や地形・地質から街や地域の成り立ちを紐解いていくNHKの人気TV番組です。毎回、えー、そうだったんだ、という初めて知ることが多く、知的好奇心をくすぐる番組です。単に見て面白かっただけでなく、全ての放送のコンテンツを場所の情報を含めて、スマートフォンに表示させ、実際に訪問できるシステムを開発しています。番組のストックを活かして地域再発見への道につなげていきます。

卒業研究の一例

  • 京都市・街の記憶と痕跡を探る ~街角に潜む地域資源から地域再発見の街歩きへ~
  • オーラル・ヒストリーによる古座街道での暮らしの記憶 ~和歌山県白浜町城集落の和田家での事例~
  • 野生鳥獣が地方の資源となるために~亀岡市における獣害対策としてのジビエ流通の提案~
  • 亀岡市の河川水生生物マップの作成  ~かめおか里道トレイル通過河川を対象として~
  • 亀岡におけるツバメの営巣と人の意識に関する研究

研究設備・研究フィールド

  • ドローン
  • 地理情報システム(GIS)
  • 京都府綾部市古屋
  • 大阪市24区
  • 京都府亀岡市
  • 京都市11区
  • 全国の廃線跡
  • NHK番組ブラタモリ訪問先
  • 全国の歩く道(ロングトレイル、フットパス、オルレ、街道、古道、歴史の道など)

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