先生に聞いてみた

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京都先端科学大学先生に聞いてみた

藤井 康代 教授

今回の「先生に聞いてみた」では、幼い頃から「木」が好きだったという藤井先生に、その「木」を中心とした植物の有効活用についていろいろ聞いてみました。

竹や竹炭の有効活用で地域の発展や地球環境の保全に貢献します。

Q:先生は、幼い頃から理系への道をめざしていたのでしょうか。

どうでしょうか。いつ理系に進もうと決めたかはあまりはっきりとはおぼえていません。元々、算数や理科は好きな教科に入っていました。でも、小学校時代は、様々な分野を含む学研の『学習』という雑誌を毎号楽しみにして読んでいました。『ニュートン』を読みだしたのが、理系への関心が高くなるきっかけかもしれません。とはいえ、歴史にも興味を強くもっていました。これは今も変わっていません。歴史を知るということは、あらゆる研究の基礎にもなります。歴史は、いつの時代も人間が動かしています。時代が変わっても、そこには普遍性があると、つねづね思っています。自分の生き方、考え方にも大きな影響を与えているように思います。

あと、子どもの頃から、「物をつくる」ということに関心がありました。色々と細かなものを切ったり貼ったりしてつくっていました。とくに木工芸品が好きでした。伝統的な櫛や箸など、見事ですね。今でも大切にしています。ほとんど意識はしていませんでしたが、その頃から「木」のもつ何かに魅かれていたのかもしれません。

Q:現在の研究活動に至るまで、どんな研究をされてきたのでしょうか。

大学での専攻は、林産工学科でした。英語では「ウッド・サイエンス・テクノロジー」と言いますが、木(あるいは材)を幅広く研究する分野です。植物としての性質や材料としての活用までを研究テーマにしています。卒業論文では竹を取り上げました。竹は、実は厳密には樹木ではなくてイネ科の植物です。タネもめったにできません。また一日で1メートルも伸びるほど驚異的に成長します。まだまだわからないことがたくさんある植物です。当時は、竹の成分が成長とともに同様に変化するかを調べていました。それが、現在の研究活動にもつながっています。学位取得後エネルギー系の研究室にいたこともあります。その頃は世界的にも脚光をあびたバイオエタノールが研究の中心になっていました。木をエネルギー資源として活用する研究です。
振り返ってみますと、ずっと木、植物にかかわる研究に携わってきました。こうした様々な経験が現在の私の研究テーマに結びついているのかもしれません。

Q:植物など生き物をどのように活用するかという研究なのですね。

「バイオマス」という言葉を聞かれたことがあると思うのですが、再生可能な生物由来の資源のことを指します。植物のほか、その食物連鎖に関係するあらゆる生き物にまで対象は広がります。広く言いますと、そのバイオマスの有効活用を研究しています。バイオマスは、地球温暖化対策として期待される、CO2 (二酸化炭素)排出量削減に有効であることから、世界的にも注目されています。
空気中のCO2と太陽光、そして水によって光合成される植物に含まれる炭素は、すべてCO2由来なんです。だから、その燃焼や分解によって発生するCO2は、植物が大気中からとりこんだものです。バイオマス資源の有効活用という方法は、こうした意味で、大気中のCO2を増やさない、「カーボン・ニュートラル」を志向しているということなのです。

Q:地域社会の発展、そして地球環境の保全にも活かされるのですね。

ただ、化石燃料などの地下資源を使い続けてきた私たちの地球では、CO2は増え続けていますね。温暖化や異常気象などの要因になっています。すでに増えてしまったCO2を減らさなければなりません。
そこで、私たちが他の大学や地元の亀岡市とともに協力して進めているのが「亀岡カーボン・マイナス・プロジェクト」です。多くの日本の里山には、竹林がたくさんあります。放置された竹林も少なくありません。亀岡市も例外ではありません。これを活用しようという活動です。
竹を炭にして、炭素をそこに閉じこめます。生じた竹炭を農地で保管されます。そうすることで、CO2排出が抑制できます。また、竹炭は、土壌改良剤として同時に有効活用することができます。

つまり、CO2の発生を抑え、地球の温暖化を抑制しながら、放置竹林対策や周辺の環境整備、さらには地域の特産でもある「ブランド野菜づくり」にも貢献するというプロジェクトを本学の学生たちとともに推進しています。

Q:本学で学ぶことのメリットについて、先生のご意見を。

本学で学ぶメリットはたくさんあります。たとえば、自然環境。この亀岡市周辺は、都市近郊でありながらまだまだ豊かな「里山」があります。「京野菜」の生産も行われていますし、本学で育種した亀岡特有の農産物も多く育てられています。自然を対象に研究活動を進めていくには、好条件が揃っています。まず、この地に立って、自分の眼で、里山の木を見る、森を見る、また土にふれ、生き物を見るといったことを体験して欲しいですね。そこから、あらゆるものに興味の幅を広げていってください。

このほか、特筆するとすれば、本学の規模がちょうどいいことかもしれませんね。学生たちと教員の距離が近いということも研究環境としてはいいことです。好奇心をたくさん育て、疑問もいだく。その疑問を私たち教員に投げかければいいのです。対話をする。議論する。それが研究の、生きた推進力になってくるのですから。

Q:最後に、ご趣味についておうかがいします。

幼い頃からなぜか「おまっちゃ」が大好きで、大学時代から茶道を習い始めました。最近は友人と時々楽しんでいます。実験室ではいつも白衣を着ていますが、お茶席では着物です。白衣と着物、どちらもユニホームでしょうか。気持ちが切り替えられます。
茶道の何が好きかといわれると、上手く答えられません。でもお茶室に座っていることが好きです。特にお点前をしている時が一番楽しいかな?静寂の中で、釜の中の湯がいこる音、ほんとうに心が落ち着いてきます。空間、作法、季節を五感で感じるその時のすべてが好きです。
そう考えると、本当の自然の中に入るわけではないけれど、自然の恵みをうまく取り入れる生活が好きなのかもしれません。やはり、木や植物への関心がずっと持続しているのでしょう。自然の恵みを感謝しつつ、これからも学生たちとともに研究を続けていきます。

藤井 康代 教授ふじい やすよ

バイオ環境学部 バイオ環境デザイン学科

兵庫県出身。宝塚市在住。京都大学大学院農学研究科博士後期課程林産工学専攻。専門分野は「林産学」「バイオマス利用学」。担当科目は、「化学」「化学実験」「環境化学実験」「食農概論」等。主な研究内容は「竹の生長機構の解明と竹の利用に関する技術開発」「バイオマスを活用した循環型社会の構築」等。

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