心理学科 橋本尚子准教授が「日本箱庭療法学会 河合隼雄賞」を受賞しました!

2015年10月22日トピックス

20151022_naoko_photo.jpg
心理学科 橋本尚子准教授

人文学部心理学科 橋本尚子准教授がこのほど、2015年度「日本箱庭療法学会 河合隼雄賞」を受賞しました。これは、臨床心理学の中でも、箱庭療法やそれに関連する技法についての優れた研究・実践活動に授与されるもので、学会創設者である臨床心理学者・河合隼雄氏の名前を冠した名誉ある賞です。

受賞の対象となったのは、橋本准教授がここ数年とりくんできた3つの論文です。

1.「ある摂食障害の事例に見られる現代の意識と心理療法の課題」(2011年)

2.「自己の刻印としての傷」(2013年)

3.「身体への凝縮と空虚の創造」(2014年)

橋本准教授に喜びの声を伺い、3つの研究について説明していただきました。

 

——おめでとうございます。受賞された気持ちはいかがですか。

 橋本准教授:うれしかったです。臨床を学び始めてから20年になります。様々なことを自分なりに考えることができるようになってきました。学生時代から、暖かく私の成長を見守り、のびのびと育てて下さった先生方にも感謝したいです。また論文を書く過程で出会った先人たちの素敵な書物にも、若い頃にはわからなかった意味や、その奥深さが身に沁みることが何度もありました。書物との出会いにも、受け取るこちら側の成熟が必要なのだと思います。そして何よりも出会ってきた多くのクライエント(悩みの相談者)の方々にたくさんのことを教えていただいたと思います。それら全てを含めて、うれしく思いました。

 

——それぞれ、どんな研究なのでしょうか。まず、「ある摂食障害の事例に見られる現代の意識と心理療法の課題」について。

橋本准教授:「神経症は時代の病でもある」と言われるように、個人の心理的な問題と時代や文化は切り離せません。摂食障害もまた時代や文化と深く関わるものです。症状のみではなく、その背後にある時代性や、それに応じた心理療法の課題について考察しました。 

 

——「自己の刻印としての傷」はどのような内容でしょうか。

橋本准教授:現代を生きる若い人の中には、ネットやツイッターで自分の気持ちを拡散させて、心の傷をやり過ごしたり、リストカットで紛らわせたりということが増えているように感じます。あるいは、傷つきの体験をあっさり忘れてしまったり、単になかったかのように振舞ったりもあります。心の傷が本当に自分の体験となるには、どのような心のプロセスがあるのかについて考察しました。

 

——「身体への凝縮と空虚の創造」は?

橋本准教授:悩みを語ることが、従来の心理療法では非常に大切なものとされていました。しかし、時代の変化のためか、従来のように悩みが語られるというよりも、漠然とした不安はあるが、悩みにまで結晶化しにくいことも増えているように感じます。時代の変化に応じて、自我のあり方や、内面化のあり方にも大きな変化があることが考えられます。それらについて考察しました。

 

——このような研究がなぜ受賞の対象となったのでしょうか。

橋本准教授:心や意識のあり方は、時代とともに変化します。インターネットのある時代とない時代では一つの大きな転換があったと思います。心理療法においても、それらに応じた変化が必要なのかもしれません。3つの論文それぞれにおいて、心理療法から見えてくる「現代の意識」とも言えるものに焦点を当てて考えました。私が受賞の選考をしたわけではないのでわかりませんが、まだまだ検討中の考察ながら、言葉にしようとする努力が評価されたのでしょうか。

 

——臨床心理学を志す学生や高校生にメッセージをお願いします。

橋本准教授: 若い頃は、言葉にしたり、論文を書くのが本当に苦手でした。そんな私に先生方は、特に論文へのプレッシャーもかけず、のびのびと育てて下さいました。論文を書いたのは、本当に自発的な思いからでした。私も臨床を志す学生さんたちを長い目で見つめて育てていけたらと思います。また受賞に甘んじることなく、さらに学び、もっと自分の仕事をしていきたいと思います。

 

——どうもありがとうございました。

前の記事へ

次の記事へ

一覧へ戻る

このページの先頭へ