井口順太教授らの研究が「Journal of Strength and Conditioning Research」に 【健康スポーツ学科】

2023年09月01日トピックス

本学健康スポーツ学科が認定校であるNSCAジャパンの本部米国National Strength and Conditioning Associationが発行する公式ジャーナルJournal of Strength and Conditioning Researchに本学の井口順太教授が筆頭著者である論文が受理され、今年9月に発行されることになりました。内容は下記をご覧ください。

Synergistic Dominance Induced by Hip Extension Exercise Alters Biomechanics and Muscular Activity During Sprinting and Suggests a Potential Link to Hamstring Strain

論文のURLはこちらから。

主な内容

本研究の目的はハムストリング肉離れ(以後、『ハム肉離れ』)の発生メカニズムに明らかにするために実施された。先行研究によりハム肉離れは走行時の遊脚期後半(着地までの130ms間)、もしくは立脚期前半に発生することが明らかになっている。本研究は主に遊脚期後半における下肢の運動学的、動力学的分析、さらに筋電図を用いた分析を行った。またハムストリングが二関節筋肉(主動筋:膝屈曲、協同筋:股関節伸展)であること、さらに主動筋が何らかの理由で機能不全に陥った際に協同筋が主動筋の役割を果たすSynergestic Dominanceという現象に着目した。

被験者は運動を定期的に実施している男子大学生・大学院生計15名(age 23.1±1.28 years)を対象とし、1日目にベースライン測定(走動作)、DOMS誘発トレーニング、2日目にDOMSの程度をチェック、3日目に再度DOMSの程度をチェックと走動作の測定を実施し、1日目と3日目の値を比較・検討した。その結果、3日目の股関節屈曲角度は1日目と比較して、有意に低下した(p<0.05)。その一方、膝関節屈曲角度は1日目と比較して3日目の値が有意に増加した(p<0.05)。EMGに関しては、3日目の内側広筋(VMO)、大腿二頭筋長頭(BF)、さらに大殿筋(GM)の筋活動が1日目と比較して有意に増加した(p<0.05)。また着地時の床反力進行方向成分の最大値は3日目の方が1日目より有意に高い値を示した(p<0.05)。

今回結果として見られた運動学的データ(股関節屈曲角度減少・膝関節屈曲角度増加)は、下肢の疲労とハム肉離れとの関連を調査した先行研究と一致するものであり、この運動学的変化はハムストリングをより収縮状態にするため肉離れのリスクが増加することを報告されている。特に股関節屈曲角度の減少は、前向き研究によってもその危険性が指摘されており、他の先行研究によれば、股関節屈曲角度が1度減少するごとに、ハム肉離れのリスクが15%増加することを報告している。また3日目に見られたGMとBFの筋活動の増加は、疲労による代償作用と考えられ、特にBFの筋活動増加はハム肉離れ発生リスクの高い遊脚期の負担増に繋がる可能性が示唆された。

(健康スポーツ学科 准教授 満石寿)

前の記事へ

次の記事へ

一覧へ戻る

このページの先頭へ