【メディア】バイオ環境学部の遠藤講師の論文が PNAS Nexus 誌に

2024年02月21日メディア

バイオ環境学部の遠藤暁詩講師が筆頭かつ責任著者の論文、”A cell-wall modifying gene-dependent CLE26 peptide signaling confers drought resistance in Arabidopsisが PNAS Nexus 誌に掲載されました。本論文では、モデル植物であるシロイヌナズナが乾燥耐性を強化する仕組みを、細胞壁キシラン修飾酵素をコードする XYN1 遺伝子と、ペプチド性シグナル分子をコードする CLE26 遺伝子の働きで述べています (表1、図1)。

Title

A cell-wall-modifying gene-dependent CLE26 peptide signaling confers drought resistance in Arabidopsis

Authors

Satoshi Endo and Hiroo Fukuda

Published

PNAS Nexus, Volume 3, Issue 2, February 2024, pgae049
doi: 10.1093/pnasnexus/pgae049

論文概要

植物は、光合成による炭素固定で得た糖を、エネルギー源としてだけでなく細胞壁構築の素材としても用いています。植物はまた、細胞壁の構造を環境変動に応じて作り替えます。細胞壁は、細胞の形を決めるだけでなく、細胞と細胞の間での物質分配にも関与することが予想されますが、その詳細はよくわかっていませんでした (図2)。本研究では、植物が短期間の乾燥に応答して細胞壁を作り替え (いわばストレス経験を細胞壁に記憶して)、シグナル分子の輸送パターンを変えることで、長期間続く乾燥に対して乾燥耐性を強化する仕組みを明らかにしました。今後、細胞壁の新規機能が続々と発見されることで、有用植物の分子育種戦略に有望な選択肢が加わることが期待されます。

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表1 シロイヌナズナのCLE (CLV3/EMBRYO-SURROUNDING REGIONRELATED)
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図1 CLE26ペプチドの輸送

蛍光色素でラベルした合成CLE26ペプチドを根の切断面に与えると、木部を介した全身へのすみやかな輸送が観察される。そのパターンは、XYN1遺伝子発現に依存して木部から表皮へと変化する。スケールバーは5 mm。

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図2 植物細胞壁

植物細胞は細胞壁で隔てられているが、木部細胞などは分厚い細胞壁を有し (A)、主成分のセルロースの他、リグニン (B)、キシラン (C) を含む。これらが複雑に組み合わさって構築された細胞壁構造は一律ではなく、環境変化に応じて変化する。その変化が細胞間の物質輸送に影響すると予想される (D)。

(バイオ環境学部 教授 寳関淳)

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