
本学 大学院人間文化研究科 臨床心理学コースでは、心理学や臨床心理学などの専門科目を履修し、修士論文の執筆に取り組むとともに、併設する相談機関「心理教育相談室」での実習により、カウンセリングの実践的なスキルを身につけます。
このほど、公認心理士試験に合格した臨床心理学コース修士課程修了の奈良むらさ希さんが、公認心大学院での研究や資格試験への取り組みについて語ってくれました。
なお、公認心理師は,公認心理師法に基づき公認心理師登録簿への登録を受ける国家資格です。
本学での資格取得の詳細はこちらをご覧ください。
Q. 大学院ではどのような指導を受け、どんな研究を行っていましたか?
奈良:
臨床心理学コースでは「過剰適応と自我境界の関連」(注1)について研究していました。もともと卒業論文で「過剰適応」をテーマにしていたので、それを軸に修士論文のテーマを考えていたのですが、テーマ探しが非常に難しく、半年以上かかりました。それにもかかわらず、ゼミを担当してくださっている先生が根気強く、あくまで「私が何をしたいのか」を尊重しながらテーマの探求を手助けしてくださいました。また、ゼミに限らずほとんどの先生は、学生の意見をまず聞き、尊重してくださる方が多いです。どんなに拙い意見でもしっかり聞き、それを踏まえたうえで答えや先生の見解を述べてくださるので、非常に意見が言いやすかったです。
Q. 印象に残っている授業や実習はありますか?
奈良:
秋学期の臨床心理査定演習で「ロールシャッハ・テスト」(注2)を勉強したのですが、それが非常に印象に残っています。実際のデータをもとに文字通り丁寧に教えていただきました。具体的には、相手が語った内容を一言一句逃さず見て、データのスコアと一つ一つ照らし合わせながら、それぞれがどういう意味を表しているのか、色々な可能性を示しながら教えて下さいました。そのため規定の授業時間数では終わりきらなかったのですが、最後までやりたいという私達の意見に先生が応えてくださり、春の補講授業などを使いながら半年以上も教えて下さいました。そのおかげで、最初は右も左もわからなかった検査データがだんだんわかるようになりました。
Q. 本学大学院のよい点はどんなところでしょうか?
奈良:
先生方に気軽に相談できる点がよいと思います。授業に関係あることや関係ないことなど、様々なことを色々な先生に相談していたと思います。しかも、先生方も快く応じてくださるため、すごく相談しやすかったです。
また、カウンセリングの授業や、描画法、投影法、特にロールシャッハなどさまざまな検査手法を一から丁寧に教えてもらえることもよい点の一つだと思います。
Q. 公認心理師の資格を取得するためにどんな準備をしたらよいでしょうか?
奈良:
この国家試験は、過去問に見られるとおり、心理療法に関する問題ばかりではありません。ですから、心理療法だけ勉強するのではなく、周辺分野の知識に関しても時間をかけて勉強したらよいのではないかと思います。それから、一人で勉強すると長続きしないので、同じ目標を持つ仲間といっしょに勉強するとよいのではないでしょうか。
授業でたまたまちらっと聞いた内容、単語のおかげで解答できることがあります。実際、国家試験中に「これ授業で聞いたことだ!」となった問題がいくつかありました。それは心理の分野に限りません。ですので、なるべくいろいろな授業を取って、しっかり聞いておくとよいと思います。
最後に奈良さんは、今後の進路について「大学院で学んだことを活かし、人の成長を支援できるような職につきたいと考えています」と語ってくれました。
(注2)過剰適応とは,自分の欲求を抑え過剰に他人のために尽くすことをいう。この修士論文では、過剰適応と、自他の意識的・無意識的な区別の強さとの関連があるかどうかを調査した。
(注2)ロールシャッハ・テストとは、広く用いられている代表的な心理検査の1つ。
(人文学部 特任教授 君塚 洋一)