2025.10.10

【FD・SD研修会】「PROG結果の教育改善への活用」開催報告

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2025年9月17日(水)、「PROG結果の教育改善への活用」と題したFD・SD研修会を京都太秦キャンパスで開催しました。 

第一部では、学内データ解析室長・佐藤嘉倫教授より、今年度から全学年に導入したPROG(アセスメント・テスト)の結果の解説と、学生の力(リテラシー、コンピテンシー)を高めるための施策が提案されました。「経験させること」「言語化させること」の重要性が強調され、参加者からは「経験と言語化という2つのキーワードに共感した」「授業に活かしたい」などの感想が寄せられました。

第二部では、教育改革支援センター長・萩下大郎教授の進行により、各プログラム代表教員および学部FD委員ら計12名から報告が行われました。「授業でどのような力を伸ばしているか」「力を伸ばすために工夫していること」などをテーマに意見が交わされ、「授業改善の参考になった」「他学部の取り組み内容が分かった」といった声が多く聞かれました。 

教育改革支援センターでは、今回の研修会で得られた貴重な意見を今後の教育プログラムの検証・改善に活用し、引き続き教育改善の取り組みを推進します。

各プログラム代表教員による報告

キャリア教育科目

「キャリアデザインⅠ」は1年生の必修科目で、初年次教育的な要素が入っている。大学で学ぶ目的や、将来への方向付けを意識する必要があるが、まずは職業社会を取り巻く状況を自分で考えて理解することが科目の内容に反映されている。
「キャリアデザインⅠ」では、自分の現状を理解するためにPROGを活用している。授業の中では「自分ごと」として捉えられるように、アクティブ・ラーニング型の授業形式をとっているので、その中でコンピテンシーの伸びる要素があると考えている。

「キャリア形成実践演習」では、就職活動が開始される3年生の春学期にPROGを受験し、PROG結果をもとに自身の改善点や長所を明確にしていくことを授業内容と連携しながら進めている。授業では自己分析と自己PRを作る過程で自分の強みをまとめていくが、PROGでは客観的データに基づいた強みや弱みが示されるので、自分が思う強みをデータとして裏付けられるため、自分自身に対して自信を持つことができる。今後も授業内での活用を進めていきたい。

スポーツ・ライフスキル科目

「SLS」の授業は「経験」と「言語化」という2点にリンクするものがたくさんある。「SLS」は他大学でいう体育やスポーツ実技といった科目だが、体力づくりをするだけでなく、現状を把握する練習をしたり、目標を設定したり、計画を立ててそこまで到達するための練習を繰り返し経験させている。また一人で行うのではなく、ペア活動やグループ活動を取り入れているので、対人に関する能力も伸びていると考えている。
「言語化」に関しては授業内でワークブックを活用している。学期の目標だけでなく、毎回のテーマに対する目標、振り返りを書いて次に向けてどうしていくのかを授業の終わりに整理している。 自分が経験し、考えたことを言語化して、次に繋げるというところで「SLS」の授業内容が貢献できると感じている。

初年次ゼミ

「初年次ゼミ」では、課題解決型学習を取り入れることで社会人として不可欠な問題解決能力の修得を目指している。グループでまとめたものをプレゼンテーションにして、クラスの前で発表する過程で、仲間づくりとプレゼンテーションの技術を磨く実践を行っている。

英語プログラム

英語の授業では、コンピテンシーを非常に重要視している。本学では1年生から3年生まで英語の授業があるので、1年生からの学修を通して、最終学年である3年生では、社会、世界を見据えて、「将来自分がどうしたいのか。どうなりたいのか。そのためにはどうすればいいのか」を英語で言えるように積み重ね授業を行っている。学生は一定のところまでは英語力が伸びている。それが非常に頼もしく、今後を楽しみに感じている。
英語の授業ではコンピテンシースキルのうち、表現力、基礎力、コミュニケーション力を高めることを目標としている。読解の授業を中心に、そこから何を得るか、何を考えることができるか、そしてそれをどのように他者に伝え、意見交換していくことができるかということを目標に指導している。また英会話の授業では、人と関わる度胸を身につける、伝えるべきことは伝える、相手が伝えたいと思っていることを理解して反応することの大切さを理解してもらいたいと考えている。 今年度からの新たな取り組みとして、アクティビティの時間を設けている。ライティングに入る前に書くべきことのブレーンストーミングを小さなグループで行い、徐々にグループを大きくして最終的にはクラス内で発表する。スペルや文法が間違っていても、学生が力の限りを出すということを重要視しながら、授業を進めている。

アカデミック・リテラシー科目

「情報リテラシーⅠ」は入学直後に①小さな成功体験を毎回少しずつ積み重ねる、②本学のことを後輩にどう伝えられるか、③コミュニケーションを取る場を作ることを考えて構成している。

「日本語リテラシー」では基本的に作文の授業をおこなっている。知識がないと書けないので、知識を一定の水準まで高めること、加えて敬語などの用語、メールの書き方を教えている。PROGでいうと課題発見力や構想力が授業に関係してくる。

学部FD委員による報告

経済経営学部

経済経営学部では「専門ゼミ」「実践プロジェクト」「キャリア科目」を、特にコンピテンシーに関わりそうな科目として考えている。リテラシーに関しては、「ビジネスデータの見方」「データサイエンス」などの科目を重点的に見ていく。ゼミにおいては担当者によって活用の仕方も変わってくるので、意見交換会を通して、PROGとの関わりを検討したいと思っている。

人文学部

心理学科と歴史文化学科で共通して、リテラシーを伸ばす科目というのは、その学科の学びの中で必要な知識と方法を学んでいくということだと思う。コンピテンシーに関しては、リテラシーで得た知識と方法に肉付けすることだと考えている。 歴史文化学科では、「歴史文化学概論」「日本史概説」「古文書学」で必要な知識や方法を身につけ、「探究演習」や「専門ゼミ」はグループワークやフィールドワークが豊富にあるので、その中でコンピテンシーを伸ばすという形をとっている。

バイオ環境学部

バイオ環境学部では学部の特徴である実験実習科目に重きを置いている。実験実習科目では、専門知を授けて、実際に実行するという意味で、リテラシー全般が上がることが期待できる。また、グループワークもあるため、みんなで課題を解決する中で自ずとコンピテンシーも上がると考えている。

健康医療学部

言語聴覚学科は基礎的な知識をもって、演習で技術的な職業訓練をして、有資格者となって社会に出るという流れになっている。言語聴覚士はコミュニケーション関係の仕事なので、なるべくコンピテンシーを伸ばしたいと思っている。そのため臨床実習では患者役の方を相手に検査を行い、それをルーブリックで評価するという形をとっている。それがコンピテンシーの伸びにつながるのではないかと考えている。

工学部

佐藤先生の「経験」と「言語化」という提言は、工学部の授業構成を支持いただいているようで、心強く感じた。

参加者の感想(抜粋)

・学生の能力を伸ばすために、経験することと言語化させることの重要性がよく分かった。授業に活かしたい。

・今後どのように活かしていけばいいのかを具体的に聞けたので参考になったし、PROGを行う意味付けにも繋がった。

・授業見学の中でも、振り返りやフィードバックにしっかりと時間を取る授業が多くあり、学生に経験やPROGの結果をじっくりと振り返ら
せ、学生の中で経験や理解を言語化・概念化させることが重要であると実感した。

・学生に授業内容に興味を持ってもらうためにも、授業で勉強したことを何に活かせるか、どのように使うことができるのかまで、具体的に授業で示したいと思った。

・「経験と言語化」というキーワードが、分かりやすく応用しやすくてよかった。

・特に自分の経験について言語化させることについては重点的に実施していこうと思います。

・現場の担当者ごとの報告を聴きながら、学部ごとの特色の相違を理解できる良い機会であった。

・現在リベラルアーツ科目、各学科の専門科目の教育特徴を簡潔に知ることができた。

・現代リベラルアーツ科目と本学の教育目的、PROGとの関係がとても鮮明になった。

・各授業で具体的にどのような指導を行っているのかを知る機会がなかなかないため、とても参考になりました。

・コンピテンシーの向上に直接的には結びつかなさそうに見える授業科目においても、教育方法の工夫によって学生に様々な体験をさせることができるはずなので、今後も試行錯誤しながら教育方法を工夫していきたいと思った。

・具体的にさまざまな授業の中で、PROGテストの内容(リテラシー・コンピテンシー)を取り入れて、工夫されていることがよく分かった。

(教育改革支援センター)