9月26日開催した今年度2回目の講義には、地方独立行政法人 大阪産業技術研究所の生物・生活材料研究部長で脂質工学について研究されている永尾寿浩先生に「身の回りの脂質製品とリパーゼを用いた脂質加工」と題してご講演をいただきました。
企業技術の支援を目的に設立された大阪産業技術研究所は、大阪市の研究所が元になっており、生物・生活材料研究部の他に、有機材料、電子材料等の研究部門があり、いろいろな企業と共同研究を行っています。今回、永尾先生には、油脂一般についての紹介と産業とのつながりについてお話ししていただきました。

まずは、共同研究の結果、美白作用のある成分を発見し、それを化学合成して商品化したものや、皮膚に付着している悪玉菌だけに殺菌効果のある成分を見いだして商品化したものなどについて説明がありました。
続いて、先生のご専門である脂質について、油との違いや、これに含まれる脂肪酸の種類など詳細にご説明いただきました。魚由来の機能性脂質であるEPAやDHAについては、中性脂肪低下作用に加えて、視覚機能や記憶力向上にも効果があるとのことでした。

また、脂肪分解酵素であるリパーゼは、身近なところでは家庭用洗濯洗剤など幅広く使用されているとのことでしたが、食品加工にもチョコレートの原料になるココアバターの代替油脂の製造や、製パン時の加工助剤としても使われているとのことでした。カカオ豆から原料のカカオマスやココアバターを作る時にはカカオ豆を木箱やバナナの皮を使って発酵するとのことで、実はチョコレートが発酵食品であると言う興味深いお話も聴くことができました。
今回は、実際にカカオ豆の実物を持参して紹介いただき、学生らは、リパーゼという酵素を大変身近に感じ、理解を深めることができた様子でした。

次回は、10月3日(金)13:00から、月桂冠(株) 常務取締役 総合研究所長の石田博樹先生を講師にお招きして行います。
(バイオ環境学部 応用生命科学科 藤田裕之)