一般社団法人京都知恵産業創造の森では、大学・企業・公的機関が連携して取り組む研究開発を支援する「産学公連携共同研究開発事業補助金」を実施しています。本事業は、産学公それぞれの知恵を融合し、新たな社会的価値の創出を目指すもので、技術の実用化または事業化を目的とした取り組みに対して、毎年4~5件程度が採択されています。
令和6年度の補助金公募において、本学から提案した2件の研究課題が採択され、いずれも事業の実施が完了しました。採択された全4件のうち2件が本学からの提案であったことは、地域連携・研究開発の推進における本学の積極的な取り組みが一定の評価を受けたものと考えています。
採択された2件の研究課題についてご紹介します。
■不整地走行六輪ローバーの電動車椅子への架装
研究代表者:工学部機械電気システム工学科講師 佐藤 啓宏
共同研究先:ペンタリンク株式会社
実施期間:令和6年7月9日 ~ 令和7年1月31日
本研究では、京都市北区に拠点を置くスタートアップ企業・ペンタリンク株式会社との共同により、都市部の複雑な環境や不均一な地形でも安全に走行できる電動車椅子の開発に取り組んでいます。不整地走行が可能な六輪ローバーをベースに、椅子や肘置き、フットサポート、コントローラなどの部品を3D設計し、3Dプリンタによる試作を通じて検証を重ねました。国際的な電動車椅子の規格を参考に、操作性に優れたコントローラの設計や、軽量で姿勢保持に配慮した椅子の構造を検討し、既存製品のフレームを加工・軽量化して活用しています。現在、主要部品の試作は完了しており、ローバー本体の製作が進行中です。今後は全体の組み立てを終え、安全性や操作性の評価を行い、実用化に向けた検証を進めていく予定です。

■長期設置型水質計測器への搭載に向けた大腸菌検出技術の開発
研究代表者:バイオ環境学部応用生命科学科准教授 櫻間 晴子
共同研究先:株式会社 アナテック・ヤナコ
実施期間:令和6年7月9日 ~ 令和7年1月31日
本研究では、 京都市伏見区に本社を置く環境計測機器専業メーカー・株式会社アナテック・ヤナコとの共同研究により、将来的に長期設置型水質計測器への搭載を想定した大腸菌検出技術の開発に取り組んでいます。本事業補助金を受けて、大腸菌固有の酵素活性に着目した検出系の構築を目指し、反応温度や時間、組成など計318条件について検討を行いました。その結果、目標濃度(OD=2)において高感度で検出可能な条件を特定することができ、比較的感度の高い検出系の確立に向けた見通しが立ちました。今後は、実用化に向けたさらなる調整を進めていく予定です。





