2025.11.21

バイオテクノロジー産業の最前線「新価値創造を目指した企業での研究開発」

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「バイオテクノロジー産業の最前線」は、バイオ環境学部の2年生以上が対象の科目です。社会に出てからのキャリアアップを目的に、15回にわたってオムニバス形式で開講しています。産業界(食品、化粧品、医薬品、等)あるいは研究機関の第一線でご活躍されている方を講師にお招きし、講演いただいています。

第8回目は、11月14日にホップの機能性に関する研究・開発でご活躍のキリンホールディングス株式会社基盤技術研究所の谷口慈将研究員をお招きし「新価値創造を目指した企業での研究開発」と題してご講演いただきました。

まず、キリンホールディングスについて、研究部門であるR&D本部の中でもビールをはじめとしたお茶や乳酸菌飲料の商品開発をしている飲料未来研究所、谷口先生が所属している中央研究所での研究内容も合わせてご紹介いただきました。研究所における、PETボトルなどの容器の再利用についての研究開発により、まったく違う物への加工が可能になるなど、SDG’s関連の研究にも取り組んでおられるとのことでした。また、免疫機能を高める乳酸菌や、カフェインレスのお茶の開発など、幅広く研究を行われており、学生も大変興味を持ったようでした。

谷口先生のご専門は、ビールなどに含まれる、複雑な成分の分析とのことで、特にビールを保管中に増えてくる多くの酸化物質の化学構造を「結晶スポンジ法」と言う新しい技術を使って解析しているとのことでした。この技術を使って、50年も前に化学構造が報告されていた物が、実は異なっていたという新発見もされたとのことで、学生もその技術の素晴らしさの一端を感じ取れたのではないかと思います。

さらに、この手法を用いてホップの酸化工程を解析した結果、ビールの苦みを感じさせる物質から機能性を示す物質に効率よく変換できる手法を見いだしたとのことで、これらの物質には脂肪低減効果を示し、実際にそれがヒトによる試験でも確認できたとのことで、最終的に、製品化までの技術を確立できたとのことでした。参加した学生もビールが単なる志向性飲料ではなく、機能性飲料でもあることを知り、驚いた様子でした。

次回は、2025年11月21日(金)13:00から、理研ビタミン(株)京都工場食品改良剤開発部イノベーションセンター 第4グループリーダーの藤原和広先生を講師にお招きして開催します。