1月10日(土)、衆議院議員兼本学特別招聘客員教授である北神圭朗氏を講師としてお招きし、本学京都太秦キャンパス・さがのホールにて、公開講演会「日本の政策課題への視座」を開催しました。
第Ⅰ部 基調講演「日本の政策課題への視座」
講師:北神圭朗氏(衆議院議員・本学特別招聘客員教授)
現在の日本社会が直面する諸課題の中から、特に以下の3つ課題とそれに関連する政策に焦点を当てた解説が行われました。
1.高市政権の経済政策について
2.我が国の安全保障政策について
3.外国資本による土地取得規制について
まず、高市政権の経済対策を象徴するフレーズ「責任ある積極財政」の解説から始められました。高市政権は、令和7年度補正予算で21兆円、令和8年度予算概算要求額は過去最大の122兆円を組んでおり、「戦略的な財政発動」により強い経済の実現を目指していることに対し、北神氏は、インフレ時における積極財政は物価上昇に拍車をかけるだけであり、実質賃金上昇による消費マインドの改善から生じる消費と所得の好循環に結び付くことは期待できないことを説明し、高市政権の経済政策の効果の限界を指摘されました。
また、円安・物価高の影響として、①消費の減退、②企業倒産件数の増加、③エンゲル係数の上昇、④高齢者世帯の貯蓄の取り崩しの加速、⑤非正規雇用の労働条件の悪化、などを統計データに基づいて説明されました。その上で、円安・物価高への対策として日銀による金利引き上げの有効性を説かれました。特に、物価上昇率を抑え込むことが消費の回復を促し、それが名目賃金および実質賃金の上昇に反映されることが理想的な経済回復のシナリオであることを強調されました。
実質賃金の決定要因として労働生産性、労働分配率、交易条件の3つに焦点を当て、それぞれの本質的な意味を説明された。特に、日本の労働生産性の上昇に対して、労働分配率の低下傾向が明確であり、特に大企業の労働分配率の低さこそが日本の実質賃金が低迷してきた最大の問題であることを指摘されました。
次に、日本の安全保障環境に関する説明では、海に囲まれた日本の恵まれた地政学的環境は技術進歩によって悪化しており、「独立自存」を保つためにも「同盟」関係の多元化と緊密化が必要であることを指摘されました。特に、中国の脅威については、習近平政権の軍民融合政に焦点を当てた説明を展開されました。「新しい冷戦」の時代にすでに入った現在において、同盟国である米国の自国優先主義が強まる中、「盾」の役割から「矛」の役割を担うため、日本が自らの国防力を強化する必要性と各国との連携強化の有効性を説明されました。
そして、最後に、北神氏が長年に渡り国会等で指摘し続けてきた政策課題である、中国をはじめとする外国の資本による日本の土地取得、特に安全保障上の問題となる日本の防衛施設など公共機関の周辺の土地取得について、同様の問題に直面する他国の対応事例を説明しつつ、日本の対応の遅れと高市政権による対応の前進への期待を説明され、第一部の基調講演を締めくくられました。
第Ⅱ部 パネル・ディスカッション「北神議員と共に考える日本の政策課題」
最初に、司会者から「白書で学ぶ現代日本」の受講生に対し事前に行ったアンケート調査で出された質問項目の一覧表が示され、そこから以下に示す順番で北神氏に回答を求めるかたちで進められました。
1.農業・食料の分野:「日本の食料自給率引き上げのための農業政策のあり方」「日本の米価上昇に対する政策対応」
2.情報・通信の分野:「AIの技術的発展に伴う政府におけるAI活用とその影響」
3.医療・福祉・労働の分野:「今後の社会保障制度改革における負担の在り方」「移民および外国人労働力の受入れの問題」
4.資源・エネルギーの分野:「日本のエネルギー政策および安全保障政策から見た原子力発電の位置づけ」
5.外交・安全保障の分野:「日本の安全保障のための対中、対米政策のあり方」
6.観光・京都の分野:「オーバーツリズムに伴う京都市民の生活への対策と観光政策のあり方」
7.その他の分野:「国会議員として経歴と現在の立ち位置」「日本の選挙制度の望ましいあり方」
上記の質問に対して、北神氏からは率直かつ明快な回答が繰り返され、参加者のアンケートの回答では「第2部では日本の具体的な課題に対する北神先生の直接の声が聞くことができて本当に良かった」「学生さんの時勢を捉えた質問のおかげで講演会が盛り上がった」などの評価を得ることができました。
そして、最後に設けられたフロアとの質疑応答の時間では、上記の質疑応答を踏まえた上で、多くの参加者から日本の安全保障や高市政権の経済政策などに関する掘り下げた質問が出され、北神氏との間で深いディスカッションが展開されました。
北神氏からは、単に日本の政策課題へのご自身の考えを表明するだけでなく、衆議院議員として国会での仕事の進め方や各政党との調整などについてもオープンな説明を聞くことができました。特に、ご自身の自民党への転籍の可能性や衆議院の解散に関する情報は、参加者が驚きをもって傾聴する場面となりました。
講演会当日の午前には地元で複数の年始行事に参加され、特に「餅つき」の疲労を抱えながら直前に会場入りされ、午後の3時間の講演会にご協力頂きました北神氏のタフさと献身に深く感謝申し上げると同時に、民主主義が有効に機能するための情報共有の機会を提供するかたちで、今後も本講演会を地域社会に対する本学の貢献の一環として開催していきたい旨が司会者から説明され、盛況のうちに閉会となりました。閉会後も北神氏との懇談に長蛇の列ができ、本講演会が北神氏と地元有権者の方々との間で有意義な交流の機会となったことを確信した次第です。


(経済経営学部教授 久下沼仁笥)




