1月16日に、本学 京都企業研究センター主催の第4回「京都企業における経営者間のネットワークについての研究会」を本学 太秦キャンパスで開催しました。
第1部:研究発表とディスカッション
「エコシステムアーキテクト(EEA)の役割」(稲田昂弘先生)
最初の発表では、資源が乏しい非都市部においてベンチャー誕生を促進する「エコシステムアーキテクト(EEA)」の存在について考察が行われました。
発表のポイント
・ EEAの機能:外部の情報を掴める一方で、ローカル文化に馴染ませる難しさがある。”よそ者”として扱われるリスクも存在する
・ 京都の文化的特性:「お手並み拝見」「新しいもの好き」という文化があり、EEAを受け入れやすい土壌があった
・ 地域における役割:非都市部での起業家育成において、EEAが重要な触媒として機能する
「京都企業の歴史と特性」(小林章一先生 代理:山内康敬先生)
続いての発表では、京都企業が持つ「伝統と革新」という二面性について、歴史的背景を踏まえた報告がありました。
発表のポイント
・ 京都企業の歴史的背景:公家・朝廷相手の商売から始まり、品質と信用が生命線となった
・ 京都の文化:「来るもの拒まず」だが「すぐには受け入れない」という独特の姿勢
・ 外部人材の活躍:京都で成功した起業家には外から来た人が多く、地縁よりも人的ネットワークが重視される
「京都経済と企業コミュニティ」(山内康敬先生)
山内先生からは、京都経済の特徴と企業間の人的交流について報告がありました。
発表のポイント
・ 京都経済の特徴:伝統工芸、高付加価値、品質志向、独立気質といった要素が特徴的
・ 人的交流コミュニティ:格式の高い場から私的な集まりまで、多層的なネットワークが存在
・ 旧来の経営思想:「無理をしない」「いいものを追求」という姿勢が基本
・ 経営イノベーションの必要性:不安定な情勢と国際競争力の確保のため、研究開発と財務安定性の両立が課題

続いてのパネルディスカッションでは、研究発表を受けて、京都という地域特性についての議論が展開されました。
主な論点
・ 京都の地域特性について:稲田先生は「環境というより歴史やタイミングが生み出した」との見解を示し、山内先生は「偶然にしては京都で大手企業が誕生し過ぎている」と指摘しました
・ 論文で書ききれなかったこと:稲田先生は「ユニークな事例を抽象化し、他地域でも応用可能なモデル化を目指したい」と述べ、山内先生は「これまでの京都企業のデータが十分に残っておらず、過去のインタビュー内容が活用できない」という課題を共有しました
質疑応答
・ 明治維新や戦後における政府の資金援助について、ネットワーク形成に関しては政府は関与しておらず、それが逆に良い結果につながったとの見解が示されました。京都企業家には「そもそも公的な資金を期待していない」という独立性の高さがあることが指摘されました。
・ 起業家の出身に関しては、京都出身の起業家は大学発ベンチャーが多く地縁が強い一方、外部出身の起業家は血縁による地縁がありそうだとの分析がありました。また、京都の競合性の低さ、土壌として緩いことが特徴であり、外部出身者は京都で容赦ない商売ができるという興味深い指摘がありました。
・ 伝統の街ながら近代的かつ国際的な土壌があったのではという問いに対し、起業家たちが大学の教授に自ら技術を吸収していたこと、都として優秀な人材がおり研究開発に投資するマインドが存在したことが挙げられました。
また、第2部では登壇者の方を囲んで、質疑や意見交換を行いました。
まとめ
本研究会では、京都という地域における起業家エコシステムの形成プロセスと、その独自性について多角的な議論が行われました。政府の支援に頼らない独立性、外部人材を受け入れる柔軟性、そして研究開発への投資マインドなど、京都企業の成功要因が浮き彫りになりました。
今後も京都企業研究センターは、データベース構築や現在の交流ネットワークの分析を通じて、京都のビジネスエコシステムの解明を進めていきます。




