2026.03.24

有賀裕二特任教授が第7回進化経済学会学会賞を受賞しました。

Xでシェア Facebookでシェア Lineでシェア

本学経済経営学部の有賀裕二特任教授の著書『Evolutionary Economics』(Springer Textbook Series, 2024)が、第7回進化経済学会学会賞を受賞しました。この賞は、毎年3年以内に公表された進化経済学領域の研究から最も優れた成果に対して贈られるものです。

今回の受賞対象となった著書『Evolutionary Economics』は、有賀教授の長年に渡る進化経済学領域における学術研究を、テキストレベルに落とし込んで系統立てて整理・集約された、経済学の先端的教科書です。より具体的には、数学的計算手法とデジタルツールに基づく進化論的分析を導入することで、経済システムの設計価値を理論と実証の両面から検証することを可能にする、新しいタイプの経済学の科学的手法を提示しています。特に、主流派経済学の思想的限界について「理想状態を追い求めるプラトン的なもの」とし、それを乗り越える理論的枠組みとして「アリストテレス的アーキテクチャ」の構築を提唱している点が最大の特徴として注目・評価されています。アリストテレス的アーキテクチャを実現するにあたっては、古典的な著作だけでなく、複雑系経済学やネットワーク科学といった近年発展が著しい諸科学の手法を統合し、古典的問題に新しい光を当てる、というユニークかつ大胆な挑戦を展開しています。

2026年3月14日・15日に、山口県下関市にあるDREAM SHIPで開催された第30回進化経済学会全国大会では、学会賞の授賞式、および有賀裕二教授による受賞記念講演が行われました。

受賞記念講演の概要

有賀裕二 特任教授(経済経営学部)
「『見えない配線』の時代 ― 21世紀新経済秩序とマクロ経済学の再構築」

今世紀の四半世紀で経済システムは劇的に変化したため、従来の国民経済中心の粗いマクロ分析(伝統的マクロ経済学)は限界を迎えている。IT投資の巨大化、非銀行金融の台頭、AI開発・宇宙計画のような超大規模プロジェクトの進行、インフラの「配線」レベルの更新、地政学的複雑化により、市場の不可視性・スケーラビリティ、政府の裁量縮小、新しい金融経路の支配などが進行している。結果、財政・金融政策の効果が薄れ、国民経済計算自体が変わりつつある。米国では国債利払いが国防費を超過し、日本では長年の円キャリートレードがイールドカーブ上昇で終焉に向かうなど、先進国型過剰債務の深刻化が進み、それに地政学的なストレスが重なり、経済援助や貿易などの様々な局面で、実験的な連携と離散をくり返さざるをえなくなっている。その結果、政府の役割(福祉含む)が制約され、民衆の期待が十分に満たされることがない「新しい経済秩序」が定着しつつある時代を迎えている。