京町家新柳居市民講座「農業と環境」の第1回目「環境問題もエネルギー問題も農地で解決」を開催しました。

2018年11月14日トピックス

「環境問題もエネルギー問題も農地で解決」

バイオ環境学部食農学科 藤井康代 教授

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「農業と環境」について、物質循環・環境保全・品質改良の三つの切り口で、市民の皆様とともに考える、本学 バイオ環境学部による京町家新柳居市民講座が、2018年11月2日(金)、京都太秦キャンパスで開講されました。

第1回目のテーマは、本学 バイオ環境学部食農学科 藤井康代教授による「環境問題もエネルギー問題も農地で解決」です。

はじめに、私たちが今生活している地球全体の環境とエネルギーに関わる様々な問題について、その関連と背景について述べていきました。中でも世界的にその影響が広く語られているのが、気候変動つまり地球温暖化です。この問題を考えるには、その背景となっている環境・エネルギー問題のみならず、食糧問題や人口問題なども視野にとらえていく必要があります。

この気候変動や地球温暖化の問題は、すでに国際的な専門家が中心になった政府間機構であるICPP(気候変動に関する政府間パネル)の報告(2007年)でその緩和策が示されていました。そこでは、2030年までの取り組み目標として

  • 二酸化炭素の削減(回収と貯蓄)
  • カーボンニュートラルなバイオマス(森林)の活用
  • 二酸化炭素の発生抑制(運輸・工業部門での効率化、農業部門での土壌への炭素固定促進)

といった具体的な達成課題が掲げられています。そして2013年には、「温暖化は明らかであり、その要因は人間活動が主である可能性が高く、抑制のためには温室効果ガス排出量の抜本的・持続的な削減が必要」ということが提示されました。

 

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さて、ここからが、今回の「環境問題もエネルギー問題も農地で解決」という本題の話です。このような複合的に関連しあう、様々な問題を解決するために実際に実践されている活動が紹介されました。本学と他大学と官が一体となって、亀岡市で推進している「亀岡カーボンマイナスプロジェクト」です。
このプロジェクトは、二酸化炭素削減を行いながら、地域を活性化することを目指しています。
プロジェクトには、4つの柱があります。

  • 環境保全 :竹や間伐材など未利用のバイオマス資源を活用。豊かな里山環境、森林の保水機能の維持。
  • 気候変動緩和 :植物が持つ炭素の閉じ込め。
  • 地域振興 :炭素固定農地での付加価値のある農作物栽培。
  • 環境教育・食育 :次世代の人材育成。
バイオマスとして着目したのは、放置されている竹林です。伐採した竹を炭にして炭素をとじこめます。竹炭は農地で保管されることで、土壌改良剤として活用されつつ炭素を閉じ込め、そのうちで作物を栽培します。

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つづいて、実際に竹炭をつくる様子や農地の様子や、栽培実験から得た様々なデータ、収穫され市場に出されたオリジナルブランド『クルベジ』などが紹介されました。

また、こうした炭素貯蓄、栽培の実証データに基づいた科学的根拠の検証についても示され、栽培条件や作物の種類によっては効果は一定でないことも述べられました。さらには、この炭素貯蓄の方策に加えて、そこに太陽光発電のパネルを併設する「ソーラーシェアリング」といった新たな実証活動も紹介されました。

講義を通して、環境問題やエネルギー問題が、農地での実践活動によって改善されていく方策への期待がますます高まっていくことを実感することができました。
とても中身の濃い充実した講座内容。参加された市民の皆さんは終始熱心に先生の話に聞き入り、講座修了時間ぎりぎりまで、活発な質疑応答が続きました。

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