【バイオ環境学部ニュース】第12回バイオ環境学部‐京都府農林水産技術センター研究交流会を開催

2020年12月03日トピックス

2020年11月14日(土)、京都府農林水産技術センター農林センターの宮林ホールで第12回本学バイオ環境学部‐京都府農林水産技術センター研究交流会を開催しました。

本学バイオ環境学部と京都府農林水産技術センターは、研究及び人的シーズの積極的な交流と融合を目的に研究交流会を2007年3月から毎年度定期的に開催してきました。京都府農林水産技術センターがホスト役を務める今回は、開催時期に関する要望を踏まえ、11月開催へと変更し、約30名が参加しました。また個々の研究室が行っている研究課題をパネルに展示することで、従来とは異なる分野同士の新たな出会いを生み、研究をさらに深化させる効果をもたらしてくれました。

従来ならば、それぞれ分野毎の専門教員たちによる研究課題のみの発表でしたが、今回は学生(バイオ環境デザイン学科環境情報研究室4年 今村孝介さん)の研究課題までも紹介されるなど、新たな可能性が示される交流会となりました。

生命・環境・食農という幅広い分野を網羅する本研究交流会が、異分野の研究の最前線に触れる刺激的な場となると共に、異分野の研究者が出会う場となり、暮らしや環境に関わる諸問題の解決に向け、地域と一体となって取り組み、持続可能な社会の構築に貢献できるよう更なる発展を期待しています。

今回の研究交流会で紹介したバイオ環境学部の10の研究課題は、以下の通りです(敬称略)。

亜臨界流体技術による水産資源の高付加価値化-イサダをエビ風味調味料へ- (食農学科・特任教授・安達 修二)

三陸沿岸で大量に漁獲されるイサダ(アミエビ)は、食用としての利用が限定的で、多くは釣りの撒き餌として利用されている。このイサダから機能性脂質を抽出した残渣を亜臨界流体処理することにより、エビ風味調味液および調味粉末を調製した。

京都水尾のユズはどこから来たのか?-日本のユズの起源と伝播に関する研究-(食農学科・特任教授・北島 宣)

京都の水尾は古くからのユズの産地であり、日本全国でも古くからユズが栽培されていた。このユズの起源と伝播を明らかにするため、クローンであるユズのDNA多型マーカーを開発し、全国のユズの類縁関係を調査する。

茶園景観の技術的背景(食農学科・教授・藤井 孝夫)

茶園景観形成過程に内在する技術的背景を探索するため、一番茶摘採日と茶園の自然環境との関係性を解析した。その結果、茶園の標高差や植栽品種、製造茶種の組合せによる作業分散が、高品質生産の条件となる適期摘採を可能としていることが検証された。

竹炭による炭素貯留(食農学科・教授・藤井 康代)

亀岡カーボンマイナスプロジェクトとして行ってきた研究の三本柱

  1. 炭化物における炭素固定量の定量法
  2. 炭化物添加が堆肥化に与える影響
  3. 炭化物の施用と様々な作物の生育

について総括した。

胆汁酸の腸肝循環阻害メカニズムによる、コレステロール低下/抗肥満活性のある食品の開発(バイオサイエンス学科・教授・藤田 裕之)

胆汁酸は、食餌性の脂肪やコレステロールの吸収を助けるが、逆にこれを阻害すればこれらの吸収を抑制し、コレステロール低下/抗肥満作用を示すことが期待される。今回、強力な阻害活性を示す食品素材を見出したので報告する。

高等植物におけるグルタチオンの代謝と生理的役割(バイオサイエンス学科・准教授・プリエト ラファエル)

シロイヌナズナにおけるγ-グルタミルトランスフェラーゼ遺伝子ファミリー及びγ-グルタミルシクロトランスフェラーゼ遺伝子ファミリーの機能解析を行い、高等植物のグルタチオン代謝、グルタチオンやフィトケラチンを通じて生体異物解毒、重金属防御、さらに環境ストレスへの応答・適応機構を研究することにより環境ストレス耐性が向上した作物とファイトレメディエーションに適する植物の開発を目指します。

乳酸菌ライブラリの構築とその利用(バイオサイエンス学科・講師・櫻間 晴子)

近年、乳酸菌は、感染防御や血圧降下、中性脂肪抑制など様々な生理機能が報告されており、その需要がますます高まっている。そこで、お茶や日本ミツバチ、スズメバチなど珍しい単離源から、独自の機能性乳酸菌素材を開発することを目指している。

ダイズがもつハスモンヨトウ抵抗性の分子基盤(バイオサイエンス学科・講師・中田 隆)

ハスモンヨトウはダイズの重要害虫の一つである。本研究では、ハスモンヨトウ幼虫の生理・行動の解析およびダイズの代謝物・ゲノム情報を用いた解析により、ダイズが持つハスモンヨトウ抵抗性機構の分子基盤の一端を明らかにした。

マツタケの人工栽培を目指して -生物間ネットワークを活用した植物工学-(バイオサイエンス学科・教授・髙瀨 尚文)

マツタケは、2020年7月、国際自然保護連合によりレッドリストの絶滅危惧種(危急)に指定され、マツタケ山の保全・再生・創出は国内外の課題となっている。今回、マツタケ菌糸体シートの人工接種によるマツタケの林床栽培に向けた取り組みの現状を報告する。

温暖化に伴うマツ枯れ地域拡大の予兆 比叡山の事例(バイオ環境デザイン学科・教授・田中 和博、バイオ環境デザイン学科・環境情報研究室4年生・今村 孝介)

農研機構の1kmメッシュ農業気象データを用いて、比叡山周辺地域の過去40年間の「暖かさの指数」と「MB指数」を解析した結果、1998年頃から冷温帯から暖温帯へ移行し、マツ枯れ危険区域も拡大していた。

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交流会の様子1

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交流会の様子2

(バイオ環境学部バイオサイエンス学科 高瀬尚文)

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