「人文学部国際キョートロジー・センター」開設記念公開講演会 開催

2022年11月24日トピックス

11月19日(土)午後1時に「人文学部国際キョートロジー・センター(センター長、佐藤嘉倫 人文学部学部長)」の設立を記念した公開講演会(主催/京都先端科学大学、京都先端科学大学人間文化学会)が、本学の京都太秦キャンパス北館3階「みらいホール」で開催されました。

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佐藤嘉倫教授(人文学部国際キョートロジー・センター センター長)

 

講演会は、データサイエンスの第一人者である金教授が「DX時代におけるスタイロメトリー」と題して始まり、データサイエンス手法による多様な研究事例から、この分野の可能性を確認することが出来ました。金教授はDX(デジタルトランスフォーメーション)の説明後に、源氏物語や浮世絵などのデータベース化の事例を交えながら人文学の分野でのデジタル化が、すでに30年ほど前から行われている経緯を紹介。さらにスタイロメトリーとは「計量的にスタイル(姿、様式、文体など)を分析する分野」で、例えばテキストの「特徴量」や「助詞の使用頻度」、「文節のパターン」などの例を挙げて解説いただきました。人文学の分野では文章のほかにも美術、絵画、音楽、舞踊などの計量分析にも用いられ、その手法は産業分野にも応用できることを示されました。

金教授の講演を受けて、本学人文学部の手塚教授による「大堰川・保津川の今と昔」では、大堰川・保津川の新旧の様子を比較しながら、京都の川の文化について紹介。紅葉の綺麗な現在の嵐山の写真をスクリーンに映した後、筏で材木を運搬する昔の写真をいくつか紹介されました。そして大堰川・保津川で運搬されてきた材木が京都の建築にとって、とても重要だったことを指摘。しかし現在では筏による運搬が廃れて川の環境が破壊されていることに警告を発せられました。最後には、人文学部民俗探究プログラムが長年取り組んでいる「筏復活プロジェクト」のお話をされ、子どもを筏にのせるワークショップやドローンで撮影した動画で学生たちによる筏組み立てと運搬のフィールドワークの模様を紹介されました。

続いて本学人文学部の山本教授による「『紫式部の見た藤原道長』 ―栄華と恐怖―」では、『紫式部日記』の記録から、権力者藤原道長の「幸ひ人(幸運な人)」というイメージを覆す議論を展開。自分の兄2人を初めとして関係者の多くが病気等で亡くなり、孫の後一条天皇が1017年に即位して道長が栄華を達成した過程を見事に描き出しました。しかし本人も病弱で後年はほぼ毎年病に罹ったこと、姪で一条天皇に嫁いだ定子が産褥死したその日に怨霊体験をしたこと、娘の彰子が後の後一条天皇を出産した時には安産を願って僧侶たちに読経させるだけでなく自ら念仏を唱えたことなど、「幸ひ人」とは程遠い実像を示されました。そして「道長の人生とは栄華と共に疲労困憊、苦痛、罪悪感、恐怖を背負った人生である」という印象的なフレーズで講演を終えられました。

最後のパネルディスカッションは、ファシリテーターの佐藤教授から4つの論点が提示され議論が展開しました。第1の論点は、手塚教授と山本教授が人文学的研究の視点からデジタル人文学ないしはスタイロメトリーに期待することは何か、また金教授がスタイロメトリーの専門家としてセンターに期待することは何か。第2の論点は、手塚教授と山本教授の講演を受けて、金教授はこのような人文学的研究をスタイロメトリーによってどのような高度化できるかお考えか。第3の論点は、人文学部のような文系学部の学生の教育におけるデジタル人文学やスタイロメトリーの効果的な教え方はいかなるものか。最後に第4の論点は、デジタル人文学やスタイロメトリーを取り入れた人文学(そして人文学者)の未来と不安はいかなるものか、というものです。どの論点も難しいものですが、パネリストの3人は丁々発止の議論を展開されました。その後にフロアからも重要な論点を含む質問が出され、熱気のある質疑応答がなされ、知的興奮の中で講演会は終了しました。

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パネルディスカッションの様子

なお、当日の講演会の様子は、来年1月初旬の京都新聞朝刊に採録記事として掲載予定です。

(広報センター 浦田剛)

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