京町家「新柳居」連続セミナー・お茶を楽しみ科学する [第3回]最先端のお茶:新しい機能を付与したお茶 を開催しました。

2018年06月01日トピックス

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京都学園大学京町家「新柳居」で開催している人気の連続セミナー・お茶を楽しみ科学するは、2018年5月26日に行われた[第3回]も事前予約で満員となりました。この日の講師は、農研機構 食農ビジネス推進センター長で日本茶インストラクターの山本万里先生。機能性食品農産物を専門に研究されてきた山本先生ご自身が実用化に携わられた「べにふうき」茶をはじめとする数種類のお茶を飲み比べながら、お茶の歴史や機能食品について、また最新の研究についてもお話いただきました。

まずは、お茶の歴史について。古く中国で記された『神農本草経』にお茶で解毒したことが取り上げられていたり、陸羽著『茶経』にお茶の色々な効能が書かれたりしていることが紹介され、「朝・昼・晩の食後にこまめに飲むのがおすすめです」と山本先生。
続いて、緑茶の成分や機能性について説明がありました。緑茶には注目の成分である食物繊維、カテキン、カフェイン、テアニンなどが含まれていて、その作用もさまざま。あまり知られていませんが亜鉛などのミネラル類も多く、また緑黄色野菜と併せて摂取するのもおすすめということです。セミナーの合間には、山本先生から参加者全員に持参していただいた品種茶(5種類)セットの中で、テアニンがたっぷり摂れる緑茶が話題になっていました。

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そして講義は茶の機能性研究へと続きます。ヒト介入試験による機能性実証の疫学的検証では、緑茶を1日5杯以上飲む人で、とくに女性は心疾患死亡率リスクが減少することが分かっていて、他にも脂質代謝やインフルエンザ、循環器疾患の検証が行われているそうです。 
お茶のさまざまな機能性研究が行われる中、山本先生は茶葉中ポリフェノールの機能性において、とくにメチル化カテキンに注目したアレルギー予防の研究をされたそうです。ここでは、メチル化カテキン含有量の高い「べにふうき」緑茶を参加者の皆さんで試飲して、苦めの味を確かめました。べにふうき緑茶の臨床試験では通年性鼻炎に効くことが分かっていて、スギ花粉症では早め(飛散の1.5ヵ月前)の飲用タイミングがおすすめであること、ショウガとの組み合わせが効果を増強させることなどが紹介され、ミルクとショウガを加えたラテにすれば苦みを感じにくいといったおいしい飲み方のアドバイスもありました。

現在、鹿児島の農家で栽培されているという「べにふうき」。新芽よりも親葉の方がメチル化カテキンを多く含むことや、べにふうき緑茶の製造過程(醗酵・火入れ条件・効率的抽出法・加熱殺菌)における抗アレルギー殺菌の検証結果、製品化について説明がありました。ここで皆さんは「サンルージュ」という品種のお茶も試飲。このお茶はレモンを1〜2滴たらすときれいなピンク色に発色します。

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セミナー後半は食品表示について学びました。機能性食品表示の機能性例としては内蔵脂肪・血圧・血糖・睡眠に関するものに消費者の関心が集まっているそうです。お茶に関しても、べにふうき茶エキスの摂取によるコレステロールの変化や、ビタミンA食品(緑黄色野菜)と茶カテキンを組み合わせた食事を摂ることによる抗がん作用・抗アレルギー作用などの研究が進められていて、内蔵脂肪や血統指数を調べる「機能性弁当ヒト介入試験」ではべにふうき粉末緑茶を付けた機能性弁当が紹介されました。機能性農産物にこだわったお弁当の高価さに会場からは驚きの声も上がりましたが、この試験で内蔵脂肪の低下などが認められたということです。

続いては、先ほど参加者の皆さんで試飲した「サンルージュ」についても説明。特殊な技術で栽培されているサンルージュの成分・アントシアニンは、抗酸化作用や抗眼精疲労作用が期待できる植物由来天然成分として期待されていて、これらのサンルージュの効果については今年の6月に新たな論文が発表され、さらなる研究も続けられているそうです。

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さらに茶葉中成分について学び、食茶に関しては「1日6gの茶葉を食べよう」「茶殻には栄養がいっぱい」とアドバイスも。参加者の皆さんに家庭でおいしく健康的にお茶を楽しんでもらおうと、風邪やインフルエンザ対策にカテキンを多く浸出する淹れ方、また妊婦さんや乳幼児用にカフェインを多く出さない淹れ方(受験生など眠ってはいけない人用にはカフェインを多く摂る淹れ方)、抹茶のように茶葉を食べる食茶の利点などが紹介された他、「機能性成分を効率的に抽出できる給茶機も開発されています」と山本先生。今後もさまざまな機能性研究によるヘルスケア産業の創出に期待が寄せられています。

終始、先生の話に聞き入り、お茶のさまざまな機能性を学んだ皆さん。最後もおいしいお茶をいただきながらの質問タイムで、お茶の未来は対局にある「おいしさ」「機能性」が二極化していくことや海外でもお茶をセットにした機能性弁当を展開していくことなど新たな展望も聞いて、ますますお茶への興味を深めていました。

次回、お茶と健康[第4回]は6月9日(土)14時より開催予定です。

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