公開講演会「日本の政策課題への視座」(北神圭朗氏)【経済経営学部】

2023年01月06日トピックス

2022年12月24日(土)、衆議院議員兼本学特別招聘客員教授の北神圭朗氏を講師としてお招きし、京都太秦キャンパスみらいホールにて、公開講演会「日本の政策課題への視座」を開催しました。

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講演に立つ北神氏

第1部 基調講演「日本の政策課題への視座-「新しい資本主義」とその問題点について-」講師:北神圭朗氏(衆議院議員・本学特別招聘客員教授)

日本経済が抱える諸課題に対応するための経済政策として岸田政権が掲げる「新しい資本主義」を概観し、それが基礎を置く思想・考え方を丁寧に説明しつつ、特に経済成長と賃金引上げに焦点を当てた政策について北神氏の解説が行われました。

まず、過去10年間の「アベノミクス」と呼ばれる経済政策を振り返り、市場や民間部門を活かす新自由主義的な政策よりも、むしろ金融緩和や財政出動など政府の積極的な介入によって総需要を喚起し経済成長を達成しようとする経済政策に軸足を置いてきたこと、そしてその限界を指摘されました。そのうえで、政府が全知全能ではないという前提に立ち戻り、政府が「やるべきこと」と「できること」を見極める必要性を指摘し、民間が実現できることは民間に任せる必要があることを強調されました。

そして、経済成長のための政府の財政出動(公共事業、減税、補助金等)や日銀による金融緩和や株価引上げは、いずれも一時的な効果しかなく、むしろ供給サイドから見た経済成長の3要素である「労働投入量」「資本投入量」「技術革新」に注目し、長期的な視点から日本経済の基盤強化に結び付く「人への投資」と「技術革新の促進」が重要であることを説明されました。特に、老子の教え「魚を与えるのでなく、釣り方を教えよ」を引用し、「技術革新」こそが長期的にその効果が及ぶ生産性上昇と賃金上昇を実現するために最も重視すべき要素であることを強調されました。

第2部 ディスカッション 「北神議員と考える日本の政策課題」

まず、司会者から「白書で学ぶ現代日本」の受講生に対し事前に行ったアンケート調査の結果が紹介されました。一つは、「最も重視すべき政策課題」についてのアンケートであり、12の政策領域の選択肢について、第1位「経済成長・賃金上昇」、第2位「家族・子育て」、第3位「平和・安全保障」、第4位「教育・文化」、第5位「医療・介護」という結果となったことが説明されました。そして、それら上位にある政策領域それぞれに関して北神氏が重視すべきと考える視点について説明して頂きました。また、休憩時間中にフロアから多数の質問票が提出され、「経済成長・賃金上昇」以外にも「財政再建」や「消費税」あるいは「安全保障」などに関する多くの質問に対し、限られた時間の中でポイントを絞り込んだ回答をして頂きました。特に、安全保障については、安全保障3文書の閣議決定や防衛費の積増しと財源に関するニュースが続いたことでフロアの関心も高く、北神氏への質問も集中しました。北神氏は、財源問題に対しては「安全保障という全国民にその恩恵が及ぶ重要な公共サービスを、一部の人の負担や未来の人々の負担となる借金で賄うことは道理にかなわない」と説明する一方で、「国民の理解と合意の形成には十分な時間と手間を割くべきであり、拙速に増税に走ることは政治の信頼を失う」ことを指摘されました。

次に、受講生に対する2つ目のアンケートである「理想の政治家に求める条件」の回答集計が紹介された後に、逆に「国会議員の立場から国民に何を求めるか」との問に対し、北神氏からは「民主主義は、より大きく広い範囲での社会的合意の形成を可能にするという優れた面を備えるが、そのためには多くの時間と手間を要するシステムであることも受け入れて欲しい」とし、さらには「この国の主権者として、自分のことだけでなく、現在の日本社会で共に生きる他の人々を思いやることはもちろん、この国の先人たちの想いや行いを知り、また未来の子どもたちにまで思いを馳せた上で、投票の権利を行使して欲しい」と述べられました。その他、フロアからの質問で、北神氏が政治家を志した理由や無所属の立場での政治活動の在り方についても回答して頂き、名残惜しい中、参加者からの大きな拍手をもって閉会となりました。

北神氏が経済政策を自分の言葉で丁寧に解説されたことに対し、受講生からは「経済政策の背景にある考え方が分かった」「経済成長論がスッキリ理解できた」といった感想が寄せられました。また、一般の参加者からは、「有意義な時間であった」など多くの肯定的評価と合わせて、明瞭で説得力ある北神氏の講演について再度の開催を求める声を多数頂きました。

(経済経営学部教授 久下沼仁笥)

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