修士論文テーマの報告会 開催【大学院経済学研究科】

2023年06月20日トピックス

2023年6月17日(土)、本学京都太秦キャンパスW302教室にて、現在、大学院経済学研究科修士課程の2年目に在籍する以下の3名の大学院生より、修士論文テーマの報告が行われました。この報告会は、修士論文の完成に向けた最初の報告会であり、論文の論点と構成が最も重要な報告事項となります。

報告番号 氏名 修士論文テーマ

第1報告

松本 祥延

現代社会における親族間取引に所得税法 56 条がもたらす影響について

第2報告

山口 文弥

源泉徴収による課税の問題について-支払者の源泉徴収義務の負担等を中心に-

第3報告

中里 大輔

財産評価基本通達第1章総則 6 項についての考察-不動産評価を中心に-

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報告に立つ松本さん

第1報告の松本祥延氏は、「現代社会における親族間取引に所得税法 56 条がもたらす影響について」というタイトルで、個人単位課税を基本とする現行の所得税法において、例外的に世帯を課税単位とすることを認める規定である第56条の適用に関する問題点に焦点を当てることの意義を説明しました。特に、文理解釈上の主たる論点となる「生計を一にする」と「事業に従事したことその他の事由」それぞれが争点となった判例を研究・整理することで、第56条適用の問題点を明確にする研究計画である旨が説明されました。さらには、56条の適用による贈与税回避を念頭に、その所得の発生(移転)が「労務の対価」として認められる適正な範囲を算定するための法的根拠の重要性を指摘しました。

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登壇する山口さん

第2報告の山口文弥氏は、「源泉徴収による課税の問題について-支払者の源泉徴収義務の負担等を中心に-」というタイトルで、現行の源泉徴収制度が徴税・納税の効率性という点で非常に優れた制度である一方で、支払者の負担が非常に大きい点を問題点として指摘しました。そして、源泉徴収制度に関して「国」「支払者」「受給者」の3者の法律上関係を判例および先行研究に基づいて整理した上で、今後の税務行政におけるDXの進展等を前提とし、租税実体法や租税手続法の原則と整合的な源泉徴収制度の見直しの必要性について検討する必要性が強調されました。

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修士論文テーマを発表する中里さん

第3報告の中里大輔氏は、「財産評価基本通達第1章総則 6 項についての考察-不動産評価を中心に-」というタイトルで、財産評価として取得時の時価評価を採用する相続税には「時価」の規定が無く、専ら国税庁が定める「財産評価基本通達」に基づいて行われている現状とその問題点を説明しました。特に、当該通達に基づく相続税評価額と市場価格の乖離が大きく「著しく不適当」と判断される場合に通達に依らない評価を例外的に認める「総則6項」について、その適用の是非が争われた裁判例に焦点を当てることの意義を強調されました。その上で、租税公平主義の観点からも総則6項の適用の限界を指摘し、評価方法の見直しの必要性が強調されました。

各報告者は、論文のテーマとその意義、論文の章立て、先行研究との関係、主たる研究貢献となる論点などについて資料に基づいた報告を行い、その後はそれら報告に対して経済学研究科の教員からコメントおよびアドバイスを受け取りました。特に、論文の完成に向けて必要不可欠な追加的な作業、あるいは論理構成も含めた論文構成の修正必要箇所の指摘が出され、報告者にとっては今後の修士論文完成に向けた取り組みとして多くのアイデアが得られた貴重な機会となりました。

(大学院経済学研究科委員 教授 久下沼仁笥)

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