女性企業家講座円城 新子 氏:「京都を基盤に雑誌を作るということ」

2021年11月15日

2021年11月4日(木)4限の「女性企業家講座」(京都太秦キャンパス)では、 円城新子 えんじょうしんこ 氏(株式会社ユニオン・エー 代表取締役)にご講演いただきました。

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主な経歴等

  • 立命館大学産業社会学部卒業。
  • 広告企画制作会社に勤務し、ディレクター職を経験後、小売店協同組合の広報部長から事務局長へ。地域コミュニティを活かしたイベント・ミニコミ誌の企画編集執筆後、 地元出版社の企画営業部チーフ就任。
  • その後独立し、今までの経験を活かし、フリーマガジン『ハンケイ500m』を企画発行。
    その他、2013年学生向け就職情報誌「おっちゃんとおばちゃん」発行。
  • 2018年よりKBS京都ラジオ「サウンド版ハンケイ500m」パーソナリティを務める。
  • 2020年より京都新聞社とコラボWEB媒体「ハンケイ京都新聞」、手を伸ばせばすぐ触れられる世界を知るマガジン「ハンケイ5m」など発行し、いずれも編集長を務める。

1  起業したきっかけ

株式会社ユニオン・エーは、本を作っている会社。売っている本と、無料のフリーマガジンを作っている。

出版社に勤めているときは、観光客向けの京都本を作っていた。みんな本を買わなくなってきており、その京都本も売れなかった。その売れない理由を編集部で話し合ったが、ネットに大概の情報は載っているからだという考えだった。それは言い訳だと思った。

そこで、自分の足でまわって話しを聞いて、吟味した情報を載せる本を作りたいと思った。それで11年前に出版社から独立して最初の仕事が、『ハンケイ500m』。京都市内のバス停から半径500mを歩く。そこの面白い人物を見つけて、その人物の考えを載せている。その人物は、靴屋さん、ケーキ屋さん、コーヒー屋さんなど様々。

売っている本はみんな買わないから、『ハンケイ500m』はフリーマガジンにした。0円でも余らず、お金を出しても欲しいものを作っている。フリーマガジンなので、広告で成り立っている。

自分の足でまわって色々な人に会う中で、おっちゃんとおばちゃんの年齢になっても仕事が面白くてたまらないと言って、ちゃんと稼げている人々に出会った。その人たちは、喫茶店の店長や芸能人、銀行員など色々いた。その人たちを雑誌に載せようと思い、『おっちゃんとおばちゃん』(フリーマガジン&ウェブサイト)を作った。ターゲットを大学生の世代にしているので、スマホでも同じものが閲覧できる。

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2 雑誌やフリーマガジンを作るときに重要なこと

本を作るときに大事なのは、ターゲットがどんな人たちで、何を望んでいて、どんなものに興味をもっていて、その人たちにどういう風になって欲しいかを考えること。

● ターゲットを決める。
『おっちゃんとおばちゃん』は学生、『ハンケイ500m』は京都に住んでいる30代以上の人たちがターゲット。

● 本はそれを取って欲しい、読んで欲しい人の近くに置くのが鉄則。
『おっちゃんとおばちゃん』は学生をターゲットにしているので、大学のキャリアセンターに置いている。京都先端科学大学のキャリアサポートセンターにもある。
『ハンケイ500m』は地下鉄全駅に置いて、地下鉄で出勤している年齢の人に手に取ってもらえるようにしている。東急ハンズやカフェなどにも置いている。
『ハンケイ500m』は観光客を対象にしていない。しかし、京都の観光客はリピーターが多いので、そういう人たちにも手に取っていただいている。東京のTBSのテレビ局の中にも置いている。東京のテレビ局やNHKからはネタ本として使わせて欲しいというオファーがある。

● ターゲットの属性(年齢や住んでいるところ等)に合わせた広告を掲載している。
『ハンケイ500m』は30代以上のターゲットに合わせた、こだわりの強い人に来て欲しいと思っているお店が広告を掲載している。例えば、高級肉や工芸品のような広告も載せている。
『おっちゃんとおばちゃん』の広告は、おっちゃんとおばちゃんの年齢になっても仕事が面白いと思ってくれる人に来て欲しいと思っている企業が、求人広告を出している。

● 本を作るときには、その人たちにどういう風になって欲しいかを考えることも大切。
『おっちゃんとおばちゃん』については、大学生に職業の選択肢がいっぱいあることを知って欲しい。おっちゃんとおばちゃんという年齢になっても仕事が面白くて、そこそこ稼げている人がたくさんいる。そういう仕事も色々ある。

3 質疑応答

学生(経営学科2年、男)インターネットが普及するなかで紙媒体はどうなりますか?他の雑誌とどのように差別化されていますか。

円城社長:紙媒体にしているのは、読者ニーズに合わせているから。

会社としては紙媒体にしなければならない理由はない。紙媒体の印刷費用はかなり高く、ネットだけでもよければ明日からでもしたい。

内容がよければ、紙媒体でもネットでもどちらで出してもヒットする。面白くなければ、紙でもネットでも読まれない。差別化も内容のみ。

学生(経営学科2年、男)置く場所以外に、雑誌を手に取ってもらうためのこだわりはありますか?

円城社長:『ハンケイ500m』と同じ年齢を対象にした雑誌は、一般的に写真の表紙にする。他とは違う工夫をするために、『ハンケイ500m』の表紙は、イラストレーターに頼んでイラストを描いてもらっている。

また見開きに、インタビューした方の話された言葉をキャッチコピーにして掲載している。

学生(経済学科2年、男)人から話を引き出すコツはありますか。

円城社長:私たちがインタビューする方はこだわりがあるので、全然答えてくれないことが多い。一問一答みたいになる。そこで、生い立ちから聞く。生まれたところはどこで、何人兄弟で、この道に進んだのはいくつからでといった話を聞く。こちらが尋ねて話された言葉によって、こだわりなどの予想をつけていく。

一人一人個性が違うように、自分のやりたい仕事の数も違う。最低限食べられるだけの収入は必要だが、自分の好きな仕事をすればよい、というアドバイスを最後にいただいた。出版業界の現状や就職活動に役立つお話をいただき、受講生にとって有意義な時間となりました。

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(経済経営学部経営学科 教授 安達房子)

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