女性企業家講座野崎 治子 氏:「仕事を“辞めないでいる” 理由」

2022年02月18日

2021年12月16日(木)の「女性企業家講座」(京都太秦キャンパス)では、野崎治子のざき はるこ氏(堀場製作所 理事/本学 国際学術研究院 特任教授)にご講演いただきました。

2022nozaki01.jpg

主な経歴等

1978年(株)ホリバコミュニティに入社。1980年 株式会社堀場製作所に転籍。
2001年人事教育部部長、2008年より管理本部人事担当副本部長。
社是「おもしろ おかしく」を実現するため、ユニークな企業風土のもと“オープン&フェア”な人事・キャリア形成支援システム構築にむけて奮闘中。
2014年 同社初の女性執行役員に就任。
2021年6月京都先端科学大学 国際学術研究院 特任教授 就任。

1 仕事のことについて

堀場製作所は、1945年に京都で創業した分析・計測機器の総合メーカーで学生ベンチャーの草分け的存在。はやぶさ2がリュウグウから持ち帰ったサンプルの分析も受託して話題になった。社員数8000人のうち外国人が6割、海外売上比率7割とグローバルに展開している。 人財戦略は「ステンドグラス」。ステンドグラスのように色も形も大きさも違う人材が集まることによって、1枚の綺麗な絵になっている。目指すのは「スーパードリームチーム」。スーパーマンはいなくても、それぞれが得意分野をもつことで、より強いチームが生まれる。 私自身の仕事の軸は「支える人を支える」こと。エッセンシャルワーカーといわれる医師や看護師、教員、交通機関など社会を支える人を支えたい、そして次世代に恩送りをしたい。

2 キャリア形成についての受講生へのアドバイス

就職活動を始めるときに、「やってみたいこと」(WILL)がはっきりしている人は少ない。会社に入って「すべきこと」(MUST)を知り、仕事が「できる」(CAN)ようになって、「やりたいこと」(WILL)が明確になり、「すべきこと」(MUST)とは、社会や顧客ニーズが求めていることだったと気付く。すべきこと(MUST)、できること(CAN)、やりたいこと(WILL)を積み重ねていくことがキャリア形成だと思う。

(1)やりたいことの見つけ方

  • キャリアには2つの型がある。目標に向かって邁進する「山登り型のキャリア」。やりたいことが見つからないときは「川下り型のキャリア」。座礁しないように一生懸命に川を下り、大海に出てから周りを見渡しても遅くない。今のこの時間を大事にして、目の前のことに夢中になることが大切。
  • 一人のロールモデルよりも、色々な人のよいところを集めて、パッチワークのように自分なりのロールモデル(パッチワークモデル)を作っていけばよい。そして、何かあったときに相談にいけるスポンサーを見つけよう。スポンサーとは、広い見地からアドバイスしたり、叱咤激励したりしてくれる人。
  • 例えば右に行こうとしても、さまざまな壁があって行けないことがある。左に行って、左に行って、もう一度左に行けば右に行ける。一見回り道にみえるが、視野が広がり安定感が増す。決して無駄なことではない。 

(2)壁や岐路で悩んだときに

  • 仕事を始めたら得意技をもとう。得意技ができればそれに執着せず、新しいことにチャレンジするとよい。
  • 本当にしんどいときは、少しハードルを下げる。ゆっくりとお風呂に入ったり、歩いてみたりするなど、自分なりのストレス解消方法を今のうちに見つけておくとよい。
  • 最大の壁は、無意識の壁。「どうせ」自分ではできない、「こうあるべきだ」という思い込みが、自分の行動を制約する可能性が高い。うまく行かないときは、ちょっとやり方を変えてみることも大事。
  • 皆さんには 努力して欲しい。努力しても報われるとは限らないが、努力しないと始まらない。努力すれば、仮に報われなくても必ず成長するし、新しい選択肢や可能性が生まれてくる。

(3)自分らしく生きる

  • 自分らしく生きるとは、自分のもっている能力や可能性を信じて使い切ること。
  • 「短所は長所の過剰使用」。例えば消極的だというのは、思慮深さや奥ゆかしさの過剰使用。少し抑えるとよい。
  • 理想に近づくために、理想と現実の間に手近な目標をつくってみる。例えば、腹筋1000回やろうと思えば、まず10回することから初めて、それを少しずつ積み重ねてクリアしていくことが大切。

(4)就職活動について

  • 就職活動は、世界と自分自身に向き合うチャンス。世の中で起こっていることに対して、自分はどういう風に活躍していきたいのか、自分はどんな人間で何がしたいのかを考えるよい時間になる。
  • 社会人生活のシミュレーションになる。Research(企業・業界研究)、Plan(セミナーや面接を受ける計画を立てる)、Do(実際に採用面接などに行く)、Check(行動を振り返る)、Action(軌道修正して、新たな行動につなげる)して、自分のやりたいことに近づいていく。このR-PDCAは、会社に入って仕事を始めるときにも、起業でも活かせる。
  • 一番自分らしさを発揮できる職場を見つけてほしい。

(5)ウェルビーイングのために

  • ウェルビーイングとは、心身が良好な状態。慶応大学の前野教授は4つのキーワード、「やってみよう」「何とかなるさ」「自分らしく」「(支えてくれた人達に対して)ありがとう」をあげている。創業者の堀場雅夫いわく、人生の最大のミッションは幸せになること。皆さんの人生が、すばらしいものになりますように!

3 質疑応答

学生(経営学科2年、男):自分の強みをどうやって見つければよいですか?

野崎先生:自分の強みは周りの人が見つけてくれるかもしれない。友達に自分の強みは何かを聞いてみるのは一つの方法。それと、自分が強みと決めれば、強み。一旦自分の武器として決めたら、使ってみることによって研ぎ澄まされるし、もっと強みになる。
よく、リーダーシップが強みという話があるが、状況によってリーダーとフォローワーは入れ替わる。いろいろな立場を繰り返し経験してほしい。
また、経済経営学部専攻なら、この科目が「好きです」「得意です」と言える科目を一つつくろう。

学生(経営学科2年、男):山(目標)が見つからないときに、どうやって山を見つければよいですか?

野崎先生:山は高いとは限らない。授業を受けて理解しようとする、卒論を出そうとすることも一つの山であって課題。それを克服することを繰り返すことで、だんだん高い山が見つかってくる。
また、小さなステップを積み重ねることが成功体験になって、自己効力感となる。慎重に色んなことを考えることも大事だが、一歩踏み出してやってみないとわからないことがある。
人生の目標やターゲットをもっている人はいないのではないか。私は本当にやりたいことが見つかったのは50代半ばくらい。

学生(経営学科2年、女):無意識の壁から出る方法は何ですか?

野崎先生:自分が壁と思っていたものが、周りはそう思っておらず、壁で無いことがある。女だから理系ではないから「どうせ無理だ」と自分で制約をかけることが一番怖い。

人生の選択肢が様々あるなかで、多くの大学生は「やりたいことが見つからない」などの不安を抱えていると思います。そんなときに一歩踏み出す勇気や、自分らしく生きる知恵について、ご自身の体験談をふまえて学ばせていただき、学生にとって有意義な時間となりました。

2022nozaki02.jpg

(経済経営学部経営学科 教授 安達房子)

bn.jpg

前の記事へ

次の記事へ

一覧へ戻る

このページの先頭へ