ドローンを使った新しいアプローチの自然環境調査に本格的に取り組み始めたのは2014年秋。京都市北区上賀茂にある深泥池のような湿地は植生の季節変化が大きく、踏査によるアクセスが困難で、ドローンを使った研究に適していると考え、2015年の冬から継続的な撮影を始めました。当初からシカ害を評価することを想定していたわけではなく、冬季に撮影した画像ではシカの通った痕跡が顕著に表れるという発見から始めた研究です。シカの通った痕跡を画像解析技術により抽出し、2015年と2016年の変化を評価した研究はすでに論文としてまとめています(丹羽 2017)。その後も現在まで継続して撮影しています。5年間の撮影画像をみると、単純にシカの通った痕跡が増加するのではなく、空間的に複雑な時系列変化が見られます。ミツガシワなど植生への影響を含め、今後、新たな論文としてまとめていく予定です。ドローンによる定期的な撮影により有用な自然環境情報が得られることを実証した研究です。
丹羽英之. (2017). UAVを用いた深泥池湿原におけるニホンジカ生息痕の時系列変化の分析. 保全生態学研究, 22(1), 213–218.
本研究の内容は、京都新聞(2019年5月11日)で取り上げられました。京都新聞の記事では2015年と2019年のシカの生息痕画像が掲載されました。
→通常、2月~3月はおもに枯れた草本植物と水域が見られます。シカが侵入すると通った跡がぬかるみ、枯れた植物に黒い痕跡が残ります。2019年では住宅地や道路に近い、南西の水際にシカの足跡が顕著になっています。
バイオ環境学部バイオ環境デザイン学科 准教授 丹羽英之
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